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高島オイシックス社長、「健康状態に合わせて、食生活を提供したい」

2/26(日) 18:00配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 高島宏平オイシックス社長(1)

 インターネットで注文を受けて、野菜などの食材を宅配するオイシックスは17年前に生まれた。創業者の高島宏平社長(43)は仲間たちと試行錯誤を重ねながら、「豊かな食生活」を届けるとの理念を掲げ、消費者と生産者を結ぶ独自の事業モデルを確立した。その食への思いと進化し続ける経営について聞いた。

――最近、食品の宅配サービスは多様化して、農家による産地直送、自然食品の宅配、ネットスーパーと様々です。オイシックスはどのように他と差別化しているのですか。

 他社さんのことはよく存じ上げないので、差別化するとの認識ではやっていないんです。自分たちがどういう業態かと言いますと、食材を定期的にお届けするサービスをやっています。今まで安全な自然食品とか無農薬の野菜などを消費者が手に入れるのは大変だったと思います。

 何が入っているのかわからないセットを決められた曜日の時間に受け取らなければならないというのが一般的でした。オイシックスは利便性と両立させて、安全な食品を自分の都合に合わせて簡単に得られるようにしています。

 最近のヒットは「キットオイシックス」で、食材と調味料、レシピ一式がセットですから20分で2人前の料理を作れます。女性のお客様は年々忙しくなっていますが、食に求めるレベルは上がっています。これなら美味しい料理を簡単に作れるので、冷凍食品などで済ました場合の「ごめんね」といった後ろめたい思いをせずに、時短ができます。

――中心となる客層は若い女性のようですね。

 20代から、30代、40代の女性で、DINKs(子供を持たない共働き夫婦)の方から妊娠中の方、お子様が小学校に上がる前という方が多いと思います。

――競合が増えていませんか。

 競合を意識したことはありません。オイシックスのサービスは併用される方が多いのです。例えば生協やネットスーパーとの併用とか、これからアマゾンとの併用もあると思います。私たちが扱うのはプレミアム系の食材なので、コモディティー的な物を届けるサービスとは補完関係にあって競合しないのです。

 野菜やキットオイシックスを当社から買って、ナショナルブランドのビールや水などは他から買うという具合です。

――そうすると一般のスーパーが売る物より、価格は少し高いが安全でおいしいということですか。

 食材に関しては良い物を良い物なりの値段でお届けしています。キットオイシックスのような物はオリジナルの商品ですから、お客様に初めて使っていただくまでが大変です。その代わりリピートの注文は多いですね。

 献立を考えるのが苦痛だという方が結構いるんです。これはレシピがついていますから考えなくていいし、かつ、食材も余らない。残った材料を使うために、いつもと違うレシピを考えるのも大変なんですね。

――いろいろな食品を売っていますね。

 最初20品目でしたが、今は約4000品目になっています。しかし健康食品、サプリメントはほとんど扱っていません。まだそこまで行っていないのです。

 安全に関しては、安全基準を農作物にも加工食品にも細かく設けてチェックしています。基本的には、作った人が自分で食べない物は売りません。この仕事を始めて気づいたのは、作っている人が自分の家族に食べさせないようにしている物がいっぱいあるなということなんです。

そういう物はうちでは扱わない方針で、それを細かな基準にして商品ごとに判断しているわけです。

――農家が市場に出す物とは別に、自分たちのために農薬の使用が少ない作物を作ったり、形の悪い物をはじく規格があったり、食品流通には矛盾がありますね。オイシックスはそれを合理化しているのでしょうか。

 結果的にそうなっていて、それがしたかったわけでないんです。あまりに無知だったので、既成の常識にとらわれずに独自にやってきただけです。

 僕らが純粋にやりたかったのは、お客様が安心して美味しく食べられる物をお届けするということです。それを無知な僕たちがあがきながらやってきたら、従来の流通とは違うものになったと後から気づいたのです。

――移動スーパーや小売店もやり、秋には有機農産物の宅配をする大地を守る会(本社千葉県千葉市)と経営統合と、多角化も進めていますね。

 多角化といえば、そうですけど、良い食生活を多くの人たちに送っていただきたいということから外れていません。小さなお子さんのいるお母さんにとって大事なのは、安全安心であり時短ができることなんです。

 一方、子会社のとくし丸(本社徳島県徳島市)が車でやっている移動スーパーの80代、90代のお客様にとっては、自分が今日食べる物を自分で選べることが大事な食生活なのです。

――高齢者になると、糖尿病や高血圧などの持病のある人や、半健康状態の人が増えます。そういう人向けの食品は考えていますか。

 ものすごく考えています。食と医療はどんどん近づいているなと思います。様々な検査によって、多くの人が自分の健康状態に詳しくなっているのに、(病気でないが不安のある)未病の状態でやれるのは食事と運動と睡眠に注意することくらいしかないんです。

 そこにチャンスがあるとみて、それぞれの人の健康状態に合わせて、どのような食生活がいいのか提供したいと思って研究を始めています。

 未病だけでなく、病気になった後の方も美味しい物を食べなくていいわけではない。むしろ、これから増えるのは病気を抱えながら元気な人で、そちらも視野に入れて考えたいと思っています。

(次号に続く)

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:2/26(日) 18:00
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