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Suchmosのヒットから考察する、“次世代シティ・ポップ”シーンの形成

オリコン 2/28(火) 12:00配信

 アルバム『THE KIDS』(1月25日発売)のヒットで注目のSuchmos。90年代半ばの渋谷系ブームを図らずもけん引することとなった雑誌『バァフアウト!』を92年に立ち上げ、今なお第一線で若き才能と接する機会も多い山崎二郎氏(ブラウンズブックス 代表取締役 『バァフアウト!』編集長)には、Suchmosはどのような存在として見えているのだろうか。

Suchmos、15年発売の前作『THE BAY』の売上推移 ※下段に掲載

■「本当に推したい」現場の熱量が繋げたヒット

 ホンダ「VEZEL」のCMで一気に注目を集め、アルバム『THE KIDS』がヒットを記録しているSuchmos。彼らの洗練された堅牢なサウンドは、ロックやジャズなど安易なカテゴライズには収まりきらない重層的なものであり、かなりの通好みともいえる。このヒットの背景には、まずリスナーの層の厚さがあると山崎二郎氏は指摘する。

 「ここまでの彼らの地道なライブ活動や作品発表などの蓄積があったことは確かです。知る人ぞ知る注目バンドとしての素地がありつつ、CMの大量投下によって一気に認知が広がりました。非常にキャッチーで高品質な楽曲と映像のタイアップによって、幅広い層に全国区でリーチできたと思います。年齢の高い層にとっては、おしゃれでどこか懐かしい耳触りをもった完璧なドライヴィング・ミュージック。でも歌詞をよく聴くと、そこには現代を生きる新しい世代ならではの等身大の視点やメッセージ性が込められていて、若いリスナーにとっては、そこも大きな魅力になっているのでしょう」(山崎氏/以下同)

 自分たちと地続きのリアルな価値観を持った、憧れの対象としての存在感ということだろうか。

 「簡単にいえば、かっこいいんですよ。特にボーカルのYONCEさんは、ファッションアイコンとしての佇まいがありますし、バンド全体も、自分たちのスタイルで好きなことをひたすら実践して楽しむという姿勢が支持されているのではないでしょうか。生まれ育った土地で気の合う仲間と集まって好きなことを楽しむのが今の若者のリアルだとして、その感覚を共有できることが信用に繋がっていたら素晴らしいですね」

■SNSですぐに繋がり合える、2010年代ならではのシーン

 一方、Suchmosは同世代の他バンドらとともに「次世代シティ・ポップ」などと一括りで話題とされる傾向もある。かつて「渋谷系」と呼ばれたブームのように、彼らを中心にしたある種のシーンが形成されようとしているのだろうか。

 「1つのシーンが成長していくには、わかりやすいアイコンが重要ですよね。90年代のオリジナル・ラヴの田島貴男さんや小沢健二さん、小山田圭吾さんがそうだったように、一般的な認知でもセールスでも、頭1つ抜けた存在。そういう意味では、Suchmosがその役割を果たす可能性、期待があります。音楽でもファッションでも20年周期で繰り返すといわれますが、70年代のシティ・ポップから20年経って、90年代に渋谷系が来て、また20年経った今、新しい世代の感覚による新しい東京発の“街の音楽”が鳴り響いたら、これ以上ない素晴らしいことだと思います。90年代はネットやSNSがなかったので、実際に渋谷という街に集まって想いを分かち合いましたが、SNSですぐに共通の感覚が繋がり合える2010年代ならではのシーン。ついそんなことを夢想します」

 渋谷系の時代とは異なり、CDショップやライブハウスといった特定の場を経由せず、SNSなどで情報が拡散・共有されることもある現代。自然発生的な口コミが改めて底力を発揮している。

 「とはいえ、リアルな場の重要度も決して低くなったわけではありません。WEB上のインフルエンサーや、影響力のあるメディアも大事ですが、CDショップのバイヤーが本当に熱量をもって推したいアーティストが現れた、というのは現場に行くとわかります。これこそ推したい、という原点、基本に気付かされます。同時に、奇をてらわずに良い音楽を作れば、小手先のマーケティングやギミックなどなくても、きちんと届くという光景を見せてくれました。これは、宇多田ヒカルさんの最新作のヒットにも共通する1つの証明でもあり、希望だと感じています」

(文/及川望)

(コンフィデンス 17年2月20日号掲載)

最終更新:4/20(木) 15:23

オリコン