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違法スパイ装置と見なされたIoT人形「ケイラ」とは?(前編)

2/28(火) 12:22配信

THE ZERO/ONE

ドイツの連邦ネットワーク規制庁Bundesnetzagenturは2月17日、インターネット接続の人形「マイ・フレンド・ケイラ(My Friend Cayla、以下ケイラ)」を違法な監視デバイスであると判断し、すでに国内市場から排除していることを発表した。

ドイツ政府による禁止令

ドイツの電気通信法第90条は、「監視以外の目的で利用されるアイテムを装っているが、国が『監視デバイスだ』と分類したもの」を製造・販売・所有することを認めていない。つまり今回の発表は、国内の企業や小売店にケイラの製造・販売を禁止するだけの措置ではなく、「小売店が倉庫にケイラの在庫をストックすること」も、また原則として「市民がケイラを所有しつづけること」も禁じるものだ。

The ZERO/ONEでは以前にもHello Barbieに関する話題の中で、IoTの人形の問題を詳しく取り上げた(参考:「おしゃべりバービー」が盗聴に悪用される? 米国で発売されたWi-Fi搭載モデルの人形の脆弱性と、大人たちの懸念)。また子供向けの玩具だけではなく、自動車やヘルスケア機器などの多種多様なIoT製品の危険性が山ほど指摘され続けていることも、これまで何度となくお伝えしてきたとおりだ。

しかし国の省庁が一つの人形を名指しで「監視デバイス」と分類し、その所有が法によって禁じられたというケースは珍しい。なぜ、そのようなことが起きたのか? この連載では、ケイラの詳しい機能、特にHello Barbieとの相違点や、特に問題視された点について説明したい。

なんでも教えてくれる女の子

ケイラはドイツの企業によって開発された製品ではなく、米カリフォルニアを拠点とするGenesis Toys(創業は香港)が製造している人形で、その人形に音声認識の技術を提供しているNuance Communicationsも米国企業である。ただし欧州市場での流通は、英国のVivid Imaginationsによって行われている(※1)。

「おそらくは史上初のインタラクティブなIoTドール」「これまでで最も賢い人形」などの触れ込みで2014年に誕生したケイラは、Hello Barbieと同じ「子供とおしゃべりできるインターネット接続の人形」で、子供の声を理解し、それに応答することができる玩具だ。iOSかAndroidのタブレット(またはスマートフォン)に専用アプリをインストールし、デバイスと人形がBluetooth接続で繋がるという点もバービーと同じである。さらに北米圏では、この2体の販売が開始された時期も近かった(※2)。そのためHello Barbieとケイラは同列のオモチャとして語られる機会が多い。

しかし、この2つの人形は大きく性質が異なっている。子供に質問を繰り返して次の会話を誘いだすバービーと比較すると、ケイラは大人しい優等生のような人形だ。Hello Barbieを「会話上手でお洒落な明るいお姉さん」に喩えるなら、ケイラは「どんな疑問にも答えてくれる物知りな女の子」だろう。
具体的には何が違うのか? たとえばケイラは、彼女自身のこと(家族やペット、好きな映画など)について質問されると、それに答えることができる。しかし「好きな果物は?」と尋ねても、ケイラは「リンゴ」と答え、自分がどのようにリンゴを好きなのかを語るだけだ。これがHello Barbieなら、「私はリンゴが好き。あなたはどんな果物が好き? イチゴ? オレンジ? それとも他のフルーツ?」といったキャッチボール型の会話で持ち主の回答を聞き出し、情報を次々と集積するだろう。

ケイラで利用されるアプリでも、ユーザーの基本的なデータを手動で登録できるようになっており、その内容を会話の中に少しは生かすことができる。しかし、そのおしゃべり機能は「会話でユーザー個人の嗜好を学び、今後の会話に生かす機能」を売りにするバービーには及びそうにない。

そのかわりケイラは、子供の一般的な知識欲に幅広く対応している。たとえばケイラに、「地上でいちばん背の高い動物って何?」と尋ねれば、ケイラは本体のスピーカーから「キリンだよ」と音声で答える。「ケーキってどうやって作るの?」と尋ねれば「卵とバターと小麦粉と砂糖を混ぜ合わせて作るんだよ」と回答する。

この機能は「エジソンって何をした人?」「エッフェル塔ってどこにあるの?」といった可愛らしい質問から、「クロコダイルとアリゲーターの違いは何?」「ここから月までの距離ってどれぐらい?」「どうして虹はできるの?」など、多くの保護者にとっては即答しづらい厄介な疑問にも柔軟に対応できる。
 
※1 子供向け玩具やゲームの製造・流通・卸売企業Vivid Imaginationsは、英国最大手の玩具メーカーで、ディズニー作品をはじめとした数多くの有名タイトルのキャラクタ(たとえばシンプソンズやシュレックなど)の製品も製造している。現在ドイツのAmazonで購入できる同社の製品はここで確認できる。もちろんケイラはリストアップされない。
 
※2 ケイラが発売されたのは2014年なので、2015年3月発売のバービーよりも先輩である。しかしケイラは英国で初めて紹介されたのちに欧州圏での販売がはじまり、2015年の夏以降に北米でも購入できるようになったため、北米の消費者にとってはケイラのほうが少し後発となる。

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最終更新:2/28(火) 12:22
THE ZERO/ONE