ここから本文です

特捜、東北復興利権捜査でまたも挫折

2/28(火) 11:30配信

ニュースソクラ

キーマンの元暴力団幹部が焼身自殺

 改革の過渡期が続いているのか、それとも弱体化して捜査能力を失ったのか――。

 東京地検特捜部が、昨年の秋から続けている東北復興利権を解明する捜査は、キーマンの自殺に続いて捜査対象となっている豊田建設(本社・埼玉県三郷市)が2月16日までに事業を停止して自己破産の準備に入っており、頓挫する可能性が高くなった。

 2010年に発覚した大阪地検特捜部の証拠改ざん事件以降、「特捜改革」に着手した検察は、自白を迫るような無理な捜査を脱却し、証拠の積み重ねと綿密な裏取りと確かな証言を集めることで、「新生特捜」を目指そうとしている。そこには法案が通過した「司法取引」を取り入れた新しい捜査への思惑もある。

 だが、小渕優子、渡辺喜美、猪瀬直樹、甘利明など、これまでに手がけた政界案件は、官邸の意向を気にした中途半端なものばかりで、なかでも被疑者なのに大物政治家であることに配慮、家宅捜索すら行わずに不起訴処分とした甘利事件に国民は落胆、「無駄飯喰らいの腰抜け特捜」と某月刊誌にヤユされた。

 そんな東京地検特捜部が、久々に独自案件として着手したのが豊田建設事件である。

 年商5~6億円の埼玉県の地場の建設業者が、11年3月の東日本大震災を機に、ゼネコンの「前さばき」を得意とする元暴力団幹部を顧問に迎え入れて以降、売上高は9億円、23億円、39億円、43億円(16年5月期)と、急激に伸びた。その背景には、顧問による暴力団系企業の排除と地方から中央までの政界工作資金の調達という“苦労”があった。それをゼネコンは評価、二次下請けから一次下請けに昇格させた。

 だが、そういう役割の「前さばき」には、金融機関のものではない高利業者の「急ぎのカネ」が欠かせない。そこで「四国の女帝」と呼ばれる危ない勢力との取引も厭わない金貸しに調達を頼った。しかし、その「女帝」との揉め事を機に、双方が民事刑事で争うようになり、事情聴取の過程で、「女帝」が語る「ゼネコンと豊田建設が一体となって行った政界工作」に興味を持った特捜部が、警視庁に出ていた刑事告訴を取り上げる形で捜査着手、昨年10月中旬、関係各所に家宅捜索を行った。

 除染を中心とする復興事業、ゼネコンの裏ガネ、政界工作、そこに関与する暴力団――復興利権は特捜部が取り組みたいテーマであり、そこに金融業者として各種証拠を集め、証言を得ている人物が、全面協力するというのだから「リハビリ案件」として最適かと思われた。官邸との調整は必要とせず、“手頃感”があった。

 しかし、キーマンとなる元暴力団幹部の顧問が、12月15日、先祖の墓の前で覚悟の焼身自殺。すべての責任は顧問に着せられるようになり、今年に入って豊田建設と連携していた福島の建設大手に捜査の比重を移していたものの、肝心の豊田建設が急速に経営を悪化させて倒産。しかも、自己破産の道を選んだことで従業員も経営幹部も散り散りとなり、組織的な捜査は不可能になった。

 いくら証拠と証言があったからとはいえ事件の突破口は、捜査協力者の「女帝」を貸金業登録していなかった貸金業法違反の容疑者として取り調べ、その関連先として豊田建設に家宅捜索に入るというトリッキーなものだった。しかも、捜査対象者は「元」とはいえ暴力団幹部。そこをステップに、ゼネコン、政治家にまで駆け上がるというのだから、どこか無理がある。

 案の定、キーマンは自殺して被疑者は破産で雲散霧消。またひとつ“失敗”を重ねる結果につながりそうだ。

(敬称略)

伊藤 博敏 (ジャーナリスト)

最終更新:2/28(火) 11:30
ニュースソクラ