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オランダ総選挙 極右の自由党が反移民・反EUで第一党の勢い

3/1(水) 15:10配信

ニュースソクラ

ウィルダース党首ってどんな人?

 約1ヵ月後に下院議員選(150議席)を控えているオランダで、注目を浴びている人物がいる。オールバックにした白髪が特徴的な「自由党(PVV)」の党首ヘルト・ウィルダース氏だ。

 12月に行われた世論調査では、自由党が支持率トップを維持し、第一党となる可能性が出てきた。議席数が現在の12議席から30を上回ると予想され、現在第一党の中道右派・自由民主党の議席数を上回るとされる。

 なぜウィルダース氏が注目されるのか。それは自由党がヨーロッパで勢いを増している極右政党のひとつだからだ。ウィルダース氏は12月、オランダ西部のスキポールにある裁判所の法廷に立った。選挙運動で外国人への差別を扇動した罪で検察から訴えられたのだ。

 「モロッコ人が増えるのと減るのと、どちらがいいか」。2014年に行われた地方選挙の応援演説でこう聴衆に呼びかけ、聴衆が「減らせ」と叫ぶと「そうしよう」と応えたのだ。結果、有罪判決が下ったが、刑事罰を伴わない判決であったため、ウィルダース氏は下院議員資格を維持した。

 ヘルト・ウィルダース氏はオランダのフェンロー出身の53歳。90年代に自民党のスピーチライターを経て、97年にユトレヒト市議会に選出され、98年に国会議員に選出されている。その後2006年に現在の自由党を立ち上げた。同年に9議席を獲得し、国内第5位の野党となった。当初から「イスラム教は宗教ではない、ただのイデオロギーだ」と語り、移民排斥、EUからの離脱を主張し続けている。

 2008年にはウェブサイト上に17分間の反イスラム映画を公開し、EU、国連、イスラム教国で反発が相次いだ。国連(UN)の潘基文事務総長も、この映画が「不快極まりないほど反イスラム」だとして痛烈に非難、英国は一時入国禁止の措置をとったほどだ。またモスクの建設中止、コーランの発禁処分、女性のスカーフの禁止なども主張している。今月19日に行った下院選挙に向けての最初の選挙運動では「モロッコ人の『くず』が治安を悪化させている」と発言し、注目を集めた。

 ウィルダース氏のこのような思想は、兵役中や兵役後にイスラエルやアラブ諸国を旅した経験が元になっているようだ。ニューズウィークの取材に、イスラエルに住んでいた17歳頃に 「イスラム諸国が暴力的で、破綻していると判断した」と答えている。その後、ユトレヒト市議時代に、自宅近くで「ペッパースプレーをかけられ、目につばを吐かれ、お金とパスポートを盗まれたこともあった」と語っている。

 2009年からウィルダース氏を研究しているオランダのある研究家は、同氏の祖父がかつてオランダの植民地であったインドネシアの高等弁務官であったことが、ウィルダース氏の思想に関係あるのではと語る。ウィルダース氏の祖父は高等弁務官であった1934年、休暇中に弁務官の座を解雇されている。一家はインドネシアを追われオランダに戻らざる得なくなり、その後貧しい生活を送ったという。

 日本の九州と同程度の大きさのオランダには、現在約1700万人もの人々が暮らしている。首都アムステルダムには150カ国を超える国籍の人々が暮らしているといわれ、オランダは、移民・難民の受け入れに積極的で、非常にリベラルな国として知られていた。

 差別に対する罰則が非常に厳しい国でもあり、差別的発言や行為を継続し行った者は、最長で2年の懲役となる。第二次世界大戦後には植民地であったインドネシアの人々を受け入れ、1960年代には労働力不足を補うために、ゲストワーカー(労働移民)としてトルコやモロッコの人々を積極的に受け入れてきた。

 そのオランダで移民排斥を掲げるウィルダース氏が支持を集めているのは、国民の潜在的な不満を体現したからとも言えるだろう。ウィルダース氏やその党を支持する人々の不満の矛先は、1960年代に移住したトルコやモロッコの人々の子供や孫の世代に向けられている。1960年代当初、オランダ政府は「労働移民は一時的なものであり、時期が来れば帰国するであろう」という考えで移民政策を進めていった。

 しかし、移民の多くはオランダ国内にとどまり、その後独自のコミュニティを築いていった。オランダ国内にも関わらず、独自のコミュニティ内だけで育てられた第二、第三世代はオランダ語を話せないこともあるという。そういった人々は学業不振や就職が困難になり、最終的に生活保護に頼らざるを得ないという悪循環に陥る。

 社会保障を一方的に享受されることへの不満に加え、厳しい差別規制で移民に対する反発の声を上げられなかったことが、ウィルダース氏の党への支持を集めている。

 小国とはいえ、EUの中核を担うオランダ。自由党が政権を取るには、単に第一党になるだけではなく、他の政党との連立により過半数を得る必要がある。他の党の自由党への嫌悪感はまだまだ強く、政権獲得への道は遠い。だが、自由党が総選挙で予想通り躍進するなら、今年春のフランスの大統領選挙、秋のドイツでの総選挙、いつあってもおかしくないイタリアの総選挙にもあなどれない影響を与えるだろう。

ニュースソクラ編集部

最終更新:3/1(水) 15:10
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