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「大統領が変わっても韓国社会は変わらない」悪徳市長描いた映画監督が貫く権力への不信

3/2(木) 19:41配信

BuzzFeed Japan

見ていておぞましく、鳥肌が立つ世界。そこの住人たちは頭のねじが外れ、おかしくなっている。2016年に韓国で公開された問題作「アシュラ」の主人公ハン・ドギョン(チョン・ウソン)は、ビールを注ぐガラスのコップを唐突に、口の中を血だらけにしながら喰う。
【BuzzFeed Japan / 徳重辰典】

「あれは製作会社のハン・ジェドク代表のアイディア。ドギョンは哀願の気持ちと、自分は怒ると怖いということを動作で伝えたかったんです」

市長の犬として悪事に手を染めてきたドギョンの狂った、けれど切実な意思表示。韓国人監督のキム・ソンスはその意図を、BuzzFeed Newsにそう明かした。

映画「アシュラ」(3月4日、日本公開)は架空の都市アンナム市を舞台に、刑事、政治家、検事たちが己の欲望と保身のために争いを繰り広げる、救いのない物語だ。

キム・ソンスは「アシュラ」でもコンビを組むチョン・ウソン主演の映画「MUSA-武者-」として知られるが、2013年にメガホンを取った映画「FLU 運命の36時間」が興行的にも失敗。出来栄えにも納得できていなかった。

自分はなんて取るに足らないのか。だが映画を作りたいという思いは止められない。ならば、次こそ自分は得意なものを撮ろう。そう考えた時、思いついたのが「アシュラ」の構想だった。

「刑事映画が好きなことを思い出したんです。非常に弱々しい悪党と、とるに足らない刑事が登場し、苦境に陥り、やがて奈落に落ちる。そういう映画の輪郭は以前から考えていて、そこに好きだったフィルム・ノワールを組み合わせました」

過去4作でタッグを組んだ盟友チョン・ウソンにまず声をかけ、国民的人気のファン・ジョンミン、クァク・ドウォンと実力派俳優の映画への出演が決まった。

最年少のチュ・ジフンの起用の前には一緒に酒を飲んだ。

「俳優は監督と会うとどうしても礼儀を守ろうとする。だが、お酒を飲むと隠しきれない性格や癖が見えてくる。チュ・ジフンはとても純真な一面と、悪知恵を働かせる冷徹な面を持っていて、今回の役にぴったりだと思った」

映画にはフィルム・ノワールで定番の男を堕落させるファム・ファタール(危険な女)は登場せず、ラブストーリーも入らない。

徹底的な男たちだけの世界。ノワールを描くにあたり、過去を踏襲しないと考えたからだ。

「登場する人物はすべて欲望の塊で、暴力に慣れすぎている男たち。お互いが噛みつき、噛みつかれ、やがては地獄に落ちる。ファム・ファタールや恋愛をいれると、私の伝えようとしているものの邪魔になると考え、省きました」

アクション映画でありがちな銃撃戦もない。

「今まで使われているパターンから抜け出したいという思いがありました。韓国映画では高級なホステスがいるルームサロン(日本でいうクラブ)や地下駐車場で銃撃戦が起こるのが常套手段でしたが、それを変えてみたいという思いが強かった」

その思いから生まれたのが、終盤のこれまで誰も見た事のない凄絶なアクションシーン。祭儀場で痛々しい刃物での斬り合いが繰り広げられる。

「銃でなく刃物だったのは、欲望と権力が渦巻くおぞましい世界で、苦痛の祝祭が行われていることを表現したかったから。悪党たちを出口のないところに追いやられ、戦い、そして死ぬ。あの場面は肉体の足掻きです。映画におけるアクションは格好良く描かれるが、本当の暴力がどんなものか感じてほしかった」

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最終更新:3/3(金) 14:20
BuzzFeed Japan

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