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ウーバー「実力主義」に批判、セクハラ問題契機

ウォール・ストリート・ジャーナル 3/2(木) 16:27配信

 米配車アプリ大手ウーバー・テクノロジーズは重視する価値として「実力主義」や「同僚の仕事に口出しする」を含む14項目を挙げている。「最善のアイデアは常に勝つ。一体感のために真実を犠牲にするべきではない」とも宣言している。

 こんな企業文化が今、批判の的になっている。きっかけはセクハラ問題だ。ウーバーの元技術者は先週、加害者が優秀な社員であるため同社幹部が告発に誠実に対応しなかったと主張した。

 企業が掲げる実力主義は実態とかけ離れていることが多い。企業経営の専門家によれば、実力主義は同僚を競争相手に変え、職場をとげとげしくする危険がある。職場が偏見に満ちていても上司がそれを無視する場合もある。研究によればこのような環境では男性が有利になることが多く、逆に女性は働きづらい。また実力主義を容赦なく推進することで従業員が不公平感を持つケースもあるという。

 「純粋な実力主義が成り立つ組織などない」と話すのは、職場の多様性に関するコンサルティングを手掛ける新興企業パラダイムのジョエル・エマーソン最高経営責任者(CEO)だ。「実力主義の企業文化を形成したいと言う時点で、偏見を認識していない」

 シリコンバレーでは多くの企業が実力主義を重んじている。個人の才能や努力が官僚的な経営に邪魔されることがあってはいけないと考えるためだ。従業員としても自らの成果によって昇進できる企業に勤めたいだろう。

 ウーバーは非常に優秀な社員を優遇することで評価額680億ドル(約7兆7000億円)の企業に急成長した。今では世界70カ国で1万1000人の従業員を雇用する。しかし現・元従業員らは、実力主義によって同僚の仕事に干渉する企業文化がつくられており、優秀な社員は態度に難があっても問題視されない場合が多いと話す。

 ウーバーは企業文化に関して具体的にコメントすることを差し控えた。元従業員のスーザン・ファウラー・リゲッティ氏が告発した社内セクハラの問題では、トラビス・カラニックCEOが内部調査を始めている。調査チームにはエリック・ホルダー元司法長官らを起用した。

「実力主義のパラドックス」

 グーグルを傘下に持つアルファベットなどのテクノロジー大手は、仕事のあり方を変えようと試行錯誤してきた。過去の経営手法を否定し、個人の成果に基づいて昇進する仕組みを作ろうとしている。偏見を排除し多様性を取り入れる努力を続ける企業も多い。しかし多くの企業では白人の男性が幹部の座を占めているのも事実だ。

 ギットハブ社は何年にもわたって、上下関係のない実力主義の企業文化を自慢してきた。しかし女性が上級職に少ないハイテク業界で「実力主義」をうたうのは問題があるとして、特に女性職員から批判が上がっていた。2014年には元従業員が社内で性別に嫌がらせを受けたと主張。社内調査は性別による差別はなかったとした上で、職場環境のあり方には問題があり、それが元従業員絡みのもめ事を助長したと結論づけた。

 マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院とインディアナ大学は2010年、実力主義の盲点に関する調査をした。学生445人に経営者としてボーナス支払額を判断するように依頼。仕事の達成度と自らの裁量のどちらかによって金額を決めるように指示した。

 仕事の達成度を基にボーナス額を決めたグループは、同等の成果をあげている女性がいるにも関わらず、男性側に平均46ドル高い金額を支払った。一方、自らの裁量でボーナス額を決めた参加者は、男性よりも女性に高額なボーナスを支払った。研究者らはこの現象を「実力主義のパラドックス」と呼んだ。

 夫のミッチ・カポール氏とともに初期のウーバーに出資したフリーダ・カポール・クライン氏は「実力主義の影に偏見が隠れている」と話す。夫妻は先週、ウーバーの取締役会と投資家に向けた公開質問状を発表し、同社がセクハラ問題の調査担当者の大半を社内から出していると批判した。

 今年に入りウーバーを退職したクリス・メッシーナ氏は、「働きやすく温かい職場を求めているならば」ウーバーは避けるべきだと話す。ウーバーでは同僚同士が肘で押し合い、競ってカラニック氏に認められようとするという。「常に素早く動かなければならず、それが衝突につながることがある」

By VANESSA FUHRMANS and GREG BENSINGER

最終更新:3/2(木) 16:27

ウォール・ストリート・ジャーナル

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