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戦時中、兵士たちに夢をみせた元アイドル。97歳「まっちゃん」に話を聞いた

2017/3/4(土) 6:00配信

BuzzFeed Japan

そして東京は、戦場になった

戦況は、どんどん悪化した。1944年の暮れ頃からは本土への空襲も始まり、もはや東京も安全な街ではなくなった。

「終わりに近づくと、毎日が飛行機。やっぱり東京は戦場でしたもんね」

それでも、ファンたちは劇場に足を運んだ。防空頭巾や鉄兜を持って。

舞台を見ながら空襲警報がなると逃げ出し、解除されればまた劇場に集まる……。そんな日常が、当たり前になっていたという。

「警報が解除になったらね、蟻が餌を見つけたようにみんな戻ってくるの。ああいう状況だったからこそ、やっぱり、ムーランはみなさんの心の慰めになっていたんですね」

「私たちも、客席の人たちも、明日には弾が当たって死ぬかもしれない。だから、本当に緊迫した舞台でしたね。見るほうもやるほうも命がけでした。良かった、というとおかしいかもしれないですけれど、真剣な舞台が踏めて、よかったと思っていますよ」

アイドルとは、何か

1945(昭和20)年5月の空襲で、劇場は焼け落ちた。明日さんは御殿場へ疎開し、そのまま終戦を迎えた。
ムーランはその後、再起を図る。明日さんも戦後、地方巡業などを続け、映画にも出演した。ファンの人たち、そして戦災で傷ついた人たちを「慰める」ために。一生懸命、働いた。

4年後、結婚を機に北海道に引っ越した明日さんは、アイドルを引退した。「明日待子は東京において、北海道に行ったんですよ」。

以来これまで、「五條殊淑」の名前で日本舞踊の活動を続けている。ちなみに、ともに生涯を歩み、2年前に先立った夫は、ムーランに通っていた早稲田生だったそうだ。

アイドルをしていたことを、いま振り返ってどう思ってるのか。

「舞台が好き、そこに立つことが大好きでしたからね。やっぱり自分は、踊っても、歌っても、なんでも好きだから。それでファンにも、観ている人たちにも喜んでもらえるんだから。自分も満足でした」

「やっぱりアイドルをしていて、良かったと思えます。思い残すことはありません。それを青春時代というんですかね。うふふ。なんでもできた。なんでも考えられる、良い時代でした」

最後に聞いてみた。「アイドル」って、なんですか?

「アイドルはね、いつまでも消えないものですよ」

明日さんの顔が華やいだ。写真を撮らせてもらおうと、カメラを向けた。ファインダーの中にはたしかに、あの頃の「まっちゃん」の笑顔が、写っていた。

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最終更新:2017/3/4(土) 15:56
BuzzFeed Japan