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フェイクニュースとは何か? その起源とトランプ氏の影響

3/5(日) 12:00配信

The Telegraph

【記者:James Carson】
「フェイク(偽)ニュース」という言葉がメディア論議の中から飛び出して主流メディアに対しても使われるようになったのは、ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が米大統領に選出され、初の記者会見を開いた時だった。

 CNNのジム・アコスタ(Jim Acosta)記者が質問しようとした際、トランプ氏はアコスタ氏の質問に耳を傾けることを拒み、同氏にむかって「フェイクニュースだ!」と指さした。今や大統領に正式就任したトランプ氏はこの日以来、週に数回、ツイッター(Twitter)で主要メディアを「フェイクニュース」と非難し、特にCNNとニューヨーク・タイムズ(New York Times)がやり玉に挙がっている。トランプ氏はなぜこの言葉をこうも頻繁に使うのか? そしてこの言葉はどこから来たものなのか?

■フェイクニュースの起源

 政治的利益のために真実をねじ曲げるのは目新しいことではない──それはプロパガンダであり、プロパガンダが用いられた記録は古代にさかのぼる。共和政ローマ(Roman Republic)の最後の戦いで、オクタビアヌス(Octavian)がアントニウス(Marc Anthony)に勝つために一連の虚偽情報を駆使したのは有名な話だ。オクタビアヌスはその後アウグストゥス(Augustus)と改名し、自身の見栄えのする若々しい姿をローマ帝国全土に行き渡らせ、年老いてからもその若かりし日の像を使い続けた。

■20世紀のプロパガンダ

 イデオロギーの大きな対立の連続に揺れた20世紀、プロパガンダはマスメディアを介して、規模の面でも説得力という意味でも増幅していった。第1次世界大戦(World War I)では、英政府が国民の反ドイツ感情をあおるために、プロパガンダを非常に効果的に使った。「ドイツ野郎」という意味の「Hun」という侮辱語が頻繁に用いられた。

 ナチス・ドイツ(Nazi)は成長するマスメディアを利用して権力基盤を築き、1930年代にその権力を盤石にした。人種ごとの固定観念を植え付けることによって、ユダヤ人差別を助長した。続く第2次世界大戦(World War II)では全当事者が、あらゆる媒体を通じてこのプロパガンダマシンを執拗に稼働させ続けた。

 この手のプロパガンダは、資金を拠出したのも操作したのも主に各国政府だった。だがイデオロギー闘争が弱まるにつれて、そこに盛り込まれていた露骨な偏見も縮小していった。加えて、人々がマスコミに慣れていくにつれ、プロパガンダを容易に見透かせるようになっていった。

■インターネット時代の到来

 昨年台頭が見られたフェイクニュースの傾向は、主に政府がアナログ操作していた20世紀のプロパガンダとは大きく違った。目立ったのは、小規模組織がソーシャルメディア上の交流とアルゴリズムを巧みに利用し、米大統領選という政治の一大イベントをめぐる誇大記事をでっち上げる姿だった。
 
 とはいえ、プロパガンダとインターネット上のフェイクニュースには類似点も確かにある。いずれも人々を扇動することを目的として、事実を歪曲(わいきょく)する手段だということだ。政治的行為に見えはするが、昨年の米大統領選での動機は必ずしもそうではなかった。どちらかといえばフェイクニュースの書き手の多くは、コンテンツを配信し、広告収入の源となる読み手を増やすことによって、楽に稼げる方法を求めていたのだ。

■昨年の米大統領選とフェイクニュース

 インターネット以前にあった経済的な障害が消え去ったことにより、昨年にはフェイクニュースの温床がこれまでにないほど整い、しかも大統領選というほぼ完璧な、格好のテーマが与えられた。世界中で議論の的となり、その議論はさまざまな形で二極化され、いずれの候補に対しても大批判論争に発展した。

 トランプ氏の予測不能性や、対立候補への不信感の扇動が、トランプ氏寄りのフェイクニュースの勢力拡大につながった。次に何が起こるか、何を信じればいいのか全く分からない雰囲気の中では、人は誇張と真実の歪曲をつい真に受けてしまう。

「法王はトランプ氏を支持している」、「ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏はイスラム過激派組織『イスラム国(IS)』に武器を売った」、「ヒラリー氏メール流出問題への関与が疑われた米連邦捜査局(FBI)捜査官が死亡」──こうした根も葉もない見出しが、選挙期間中ずっとフェイスブック(Facebook)上で広がり続けた。あまりの反響の大きさに、ニュースサイト「バズフィード(BuzzFeed)」は、フェイクニュースがいかに本物のニュースをしのいだかという分析記事を出している。

 ソーシャルメディアの台頭と、いわゆる「フィルターバブル」とを非難する向きもある。フィルターバブルとは、ユーザーが好む、あるいは同意しやすい情報を提示し、それ以外の情報を隠す現象を指す。これが中立的な議論の場を乱し、最も過激な記事が最も多くの注目を集めるという状況を生んでいるという批判的な指摘も上がっている。

 誰でもウェブサイトを立ち上げ、フェイスブック上で読み手を獲得し、フェイクニュースを配信することができる。派手な見出しを付けておけばどんどん拡散して、書き手に多額の収入をもたらす可能性もある。フェイスブックはフェイクサイトを発見した場合、アルゴリズムを操作しそのドメインの表示順位を下げることもできる。だがウェブサイト作成のハードルはあまりに低いため、フェイクニュースの配信元は別サイトを立ち上げ、また一からやり直せてしまうのだ。

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最終更新:3/5(日) 12:00
The Telegraph