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なぜ福島デマが残り続けるのか?専門家が勘違いしてたこと

3/5(日) 10:46配信

BuzzFeed Japan

「福島県産の食品は実は危ない」「放射能がうつる」。原発事故から6年が経とうというのに、根拠のないデマはあとをたたない。なぜ起きるのか。専門家と住民のコミュニケーションのズレにその一因がある。【石戸諭 / BuzzFeed Japan】

原発事故で時間が止まった町のいま

「放射能のはなし、難しくておぼえてない」

リスクの伝え方を研究し、食品企業のコンサルティングなどを手がけてきた西澤真理子さん(48歳)はズレを経験した専門家のひとりだ。

2011年9月、福島県飯舘村から「放射線リスクをどう村民に伝えたらいいか」のアドバイザーを務めてほしいと依頼された。

西澤さんが主催し、放射線の専門家と住民の少人数の対話集会を開いた。

福島市内にできた仮設住宅の一角。専門家は、飯舘村が直面している放射性物質のリスクについて、住民を素人扱いせず熱心に、かつわかりやすく話した。

放射性物質は事故前に日常的に食べていたもの、例えばバナナやポテトチップスなどにも含まれていること。食品で気になることがあるなら、それらと比較して判断すればよいこと。

水道水をつかってもいいし、この時点で過剰に健康リスクを心配する必要がないことも伝えていた。

子供がいる世帯には関心が高いだろうと考え、広島や長崎の被爆者を対象にした研究成果も取り上げた。遺伝を心配するような被ばくはしていない、と強調するためだ。

対話は活発だったし、なにより、参加者は熱心にメモをとっていた。
集会が終わった後、西澤さんと専門家は「これは成功だ。他の仮設住宅でもやるべきだ」と話していた。

ところが2012年1月末、集会に参加した住民の感想を聞いて、西澤さんは愕然とする。

「先生、この前の話、全然おぼえてない」と子育て世代の女性は話しはじめた。
「バナナにも(放射性物質が)あるって言っていたから、娘にバナナ食べさせるのやめたんだ」

比較のために、バナナの事例を出したが、バナナを食べないようにという話はしていない。西澤さんはもう一度、女性に尋ねる。

「えー。あれだけメモとってたじゃないですか」
「うん、でもあとはラドン温泉の話くらいしか覚えていない」
「そうですか……。わからなかったこと、次に聞きたいことあります?」
「先生、放射能の話は難しいんだよね。なにを質問していいのか、わからないんですよ」

専門家としては、住民の関心にあわせてわかりやすく説明したつもりだったが、住民は覚えていない。

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最終更新:3/5(日) 22:54
BuzzFeed Japan