ここから本文です

木村草太の憲法の新手(51)森友学園と文書管理 疑問残る交渉記録の破棄

沖縄タイムス 3/5(日) 10:15配信

 森友学園への不可解な国有地払い下げ問題は、収束する気配をみせない。

 売却価格はあまりにも安く、値引き理由となった大量の地中ごみが本当に存在したのかも定かではない。問題の小学校では、学校名に安倍晋三首相の名を冠することが検討され、首相夫人の安倍昭恵氏が名誉校長に就任予定だった。当然、首相が財務省に影響力を行使したのではないかとの疑念が生じる。

 もちろん、首相も財務省も、影響力の行使を否定している。しかし、いくら「関係ない」と言われても、信じようがない。疑念を晴らすには、国有地取引に関する記録を開示し、関与した人物を調査する必要がある。

 財務省行政文書管理規則は、別表第一で文書の保存年限の基準を定める。まず、「国有財産(不動産に限る)の取得及び処分に関する決裁文書」の保存期間は、30年とされる(同第28欄)。このため、本件でも決裁文書は残っている。もっとも、決裁文書だけでは、交渉過程や、それに関わった人物は明らかにならない。政治家の関与の有無を判断するには、不動産処分時の交渉記録が必要だ。

 交渉記録は別表第一の項目にないので、「文書管理者は、本表の規定を参酌し、当該文書管理者が所掌する事務及び事業の性質、内容等に応じた保存期間基準を定める」との規定が適用される(同備考6項)。

 この点、財務省の佐川宣寿理財局長は、交渉記録は事案終了時に廃棄する運用となっており、今回のケースは、2016年6月の売却契約締結時を事案終了の時点と認定して廃棄したと答弁した。

 しかし、今回の取引は、買受特約付きの定期借地契約を事前に結んでいたこと、買受権行使時に分割払いを認めたこと、廃棄物処理費用を国が算定したことなど、異例な点が多い。事後的な検証がなされ得ることは容易に想定できたはずだ。それにもかかわらず、他の契約と同様に売却契約締結時に文書を廃棄することが、財務省行政文書管理規則の要求する「事業の性質、内容等に応じた保存期間基準」の適用と言えるかは疑問だ。

 また、仮にそれが規則違反でないなら、規則自体に不備があったということ、すなわち、規則制定権者である財務大臣の責任問題になる。首相への深刻な疑念を晴らせない状況を作った財務大臣と財務省の責任は重い。

 もっとも、この連載でも何度か指摘してきたように、文書管理のずさんさは、財務省だけの問題ではない。鳩山由紀夫元首相は、首相在任時に、普天間基地移設の判断に際して、外務・防衛両省から米軍の基地設置基準に関する外交文書を示されたと指摘した。しかし、外務省はその文書の存否を確認できなかった。防衛省は、南スーダンで武力衝突があった日の日報を廃棄していた。

 責任ある行政のためには、文書作成記録とともに、長期保存する行政文書の範囲拡張が必須だ。原本保管にはスペースの限界があるにしても、電子データの保管は容易なはずだ。

 記録がなければ、国民は隠蔽(いんぺい)を疑う。自らの潔白を証明するためにも、行政文書の管理を徹底せねばならない。(首都大学東京教授、憲法学者)

木村 草太

最終更新:3/5(日) 13:55

沖縄タイムス

Yahoo!ニュースからのお知らせ