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高島オイシックス社長、 「ピンチとチャンスはセットで来る」

3/6(月) 16:00配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る  高島宏平オイシックス社長(3)

――今年秋に、有機農産物を宅配する大地を守る会(本社千葉市)と経営統合する予定ですね。異なる2つの企業文化が一緒になると、どう変わるのでしょうか。

 僕が考えているのは、オイシックスと大地を守る会が持つ文化の良いところを、どう残すかということではないのです。統合後の新会社のあるべき文化は何なのか、あるべき組織は何なのかを考えて、そこへ向かってみんなと一緒に進んでいくという感じです。

 今まさに統合する新会社が創業する年ですから、創業後の新しい文化を一から改めて作るというミッションを担うわけです。今、両社でメンバーを出し合って議論を始めたところです。合わせて約1200人規模になる組織を初めて経験する者同士が、下手くそなりに考えるのもいいのかなと思っています。

――作っても違うなと思ったら改めればいいわけですね。

 どんどん修正していけばいいのです。文化は守ろうと思った瞬間に、逆に守れないと思うんですよ。文化はつくるもので、進化させるものです。

 料亭の吉兆の方と話をして、食文化を守っているのか作っているのかという話になって、当たり前ですけど毎年メニューを変えているんですね。メニューをどんどん進化させなければ、何十年も何百年も続かないのです。

 企業文化もおそらく、そういうものなのでしょう。絶えず作り続けることが重要なのだなと思うのです。

――両社で議論する中で、この点は重視したいというものは何ですか。

 オイシックスもたぶん大地を守る会さんも、今まで自分たちの規模が大きくなることが、社会にとっても良いことなのだと確信してやってきたわけです。自分たちの事業を成長させることに何の憂いもなく、またそういう事業しかやらないというのが、僕らにとって大事な価値観です。

 これから大きくなっても、隅々にまでその状態を維持していくというのが非常に大事です。それが、僕らが変えない価値観です。

 僕はチームメンバーが夢中になれる環境をつくるのが仕事だと思っています。毎週、大地を守る会さんに行って、15人から20人で話をしていまして、それに関して質問がでました。

 人数が増えれば、夢中でなさそうな人がいても気づきにくくなるのではないか。10人なら、君、最近、仕事に乗っていないねと、すぐにわかるのに難しくなる。でも僕は大人数になっても、全員が夢中になれるチームを作っていきたいですね。

――高島社長は著書で、リーダーは技術を学べばなれると述べています。これからさらに、どのような技術が必要ですか。

 一つは、自分が直接コミュニケーションできない人にも、よい影響を及ぼすスキルを身につけないといけないなと思います。マン・ツウ・マンで接しなくても、勇気づけたり、仕事をしやすくしたり、モチベ―ションを上げたりできるように、仕組みによって、やらなくてはならなりません。

――どの企業でも、創業期には創業者が社員と膝詰めで語り合えますが、規模が大きくなるとできなくなります。すると創業者に代わって創業の精神を説く語り部のような人たちが出てきますね。

 自分としては事業の求心力を、経営トップに求めてはいけないと思っているんです。僕らが大きくなった方が社会にとってもいいという、企業の存在価値そのものに求心力を持たせなければならない。

 そのためには何人も、語り部というか、文化の伝承者、いや伝承というよりも、文化の作り手、担い手ですね。そういう人を複数つくり、それぞれの人が社長や偉い人を見るのではなくて、事業の存在理由を拠り所に仕事をして行くようにしたいなと思います。

――よい食生活を広めたいという理念を指針に、自律的に仕事をする集団を作り上げればよいわけですね。

 ラッキーなのは、今度一緒になる大地を守る会の方々は、これまで僕を全く見ずに仕事をしてきたので、僕を見る理由がないのです。そういう人たちに夢中になって働いてもらうには、どうしたらいいのか。

 僕中心、社長中心の組織を作ったら、絶対に動かないと思います。こうした課題にチャレンジせざるを得ない環境が自然に用意さたので、やりきるしかありません。

――創業から今日まで、節目となる様々な経験をされてきたと思いますが、最も大きな節目になったものは何ですか。

 創業2年目に配送センターをお願いしていた会社が突然廃業して、潰れる瀬戸際に一番追い詰められた経験でした。あれがその後、どのような意味があったのかと言うと、どんな危機に直面しても、あの時の絶望感に比べばましだと思うようになったことですね。

 その経験者が今も10人以上います。僕らが学んだのは、暗い気持ちで解こうが明るく解こうが、問題は変わらない。深刻な問題を、辛い、辛いと思って対応しても、問題が易しくなるわけではない。あまりに辛すぎて、笑いながら解こうと切り換えたら、だいぶ違うんですよ。

 問題は選べませんが、問題に向き合う態度は選んだ方が得だと学んだのは大きかったですね。その後、問題にぶつかった時、やりがいのある仕事と前向きにとらえるようになりました。

――ピンチに逃げずに正面から向き合うわけですね。

 自分が好きで起業したのだから、辛いと思わなければいいんです。ピンチは逃げようもないのですが、ピンチとチャンスはセットで来ると実感しています。ピンチに陥ったのには理由があるわけで、その理由を解決すれば、単にピンチを乗り越えた以上の恩恵が多いのです。だからピンチはチャンスでもあると思います。

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:3/6(月) 16:00
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