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<インタビュー>介護、役でも現実でも 映画「話す犬を、放す」主演 市川出身、女優のつみきみほさん

3/8(水) 12:54配信

千葉日報オンライン

 女優業と母親の介護の両立に悪戦苦闘する女性を描いた映画「話す犬を、放す」が11日から公開される。主役のレイコを演じたつみきみほさん=市川市出身=に作品の見どころや女優業に対する思いを聞いた。(聞き手は文化部・日暮耕一)

 -脚本を読んだ時の作品の印象は。

 濃密な親子関係をはじめいろいろな面白い要素が詰め込まれていると感じました。温かみのある作品だとも思いました。

 -レビー小体型認知症が取り上げられています。見えないはずの人や動物などが見える「幻視」の症状が特徴の一つ。映画の中では昔飼っていた愛犬が何度も出てくる。

 幻視という現象は当事者や周りにいる人は大変でしょうが、興味深いですね。その人の世界観や深層心理みたいなものがふと現れるという側面もあるのでは。熊谷まどか監督の母がレビーを発症し、その体験が映画に反映されているのですが、監督自身が母の幻視を面白いと感じたそうです。あまり深刻に捉えずにいたことで、監督の母も病気を恐れずにすぐ受診する気になったそうです。

 -この映画自体、介護を描きながら深刻さはあまり感じない。むしろ作品のタッチは明るい。その点が新鮮です。

 私も最初に脚本を読んだ時はもっと深刻なイメージだったのですが、監督から「もっと軽くていい」「明るく明るく」と撮影中に言われ続けた。確かに笑いがあると自分の置かれている状況に対して客観的になれますよね。

 -演じたレイコは久々に女優として大きな役が付いた矢先に、母ユキエがレビーを発症。介護と女優業の両立に苦しみ、結局仕事を断念します。レイコに共感できますか。

 私自身、女優と子育ての両立で苦労した経験があるので、仕事を断念したレイコの気持ちはよく分かります。でも仕事を続けるならヘルパーに頼るなど現実的な対応の仕方も。どちらの選択肢もあると思います。観客のみなさんには自分の立場や視点から見て、いろいろ感じてもらえたらいいなと思います。

 -レイコは中年のぱっとしない女優で、社会との接点の希薄さに孤独を感じている。「つながり」が作品の大きなテーマ。ある意味で“虚業”とも言える女優という職業は社会とのつながりを実感しづらいのでしょうか。

 とても核心を突いた質問ですね。私自身、そういうことで悩んだ時期がありました。自分と社会とのつなげ方が難しいと感じて…。実は今、俳優の仕事と一緒にヘルパーの仕事もやっているんです。

 -えっ。役ではなく現実にヘルパーを?

 はい。1年半ぐらいになります。福祉の勉強はもっと前からやっています。自分と社会とのつなげ方は人それぞれだと思いますが、私にとっては福祉の現場で働くことと俳優の仕事が互いに刺激し合ってどちらもプラスに働いたらいいなと思っています。

 -市川市出身だそうですが、ふるさと千葉で好きなスポットは。

 千葉は自然がいっぱい。勝浦の海は透明できれいだし、九十九里の海も遠浅で大好きです。市川の実家は海側の工場地帯の近くで、子どもの頃は工場のお兄さんたちとよく遊んでいました。下町みたいな雰囲気。今は工場はだいぶ減ってベッドタウンに変わっていますけれど。

 -映画「櫻の園」(1990年)のボーイッシュでピュアな女子高生役が忘れられません。今もあの役のイメージと重なる。

 「変わらない」とよく言われます。これまでは清純な役やクールな役が多かった。私としてはクセの強い変なおばさんの役もやってみたいですね。

 ◇つみき・みほ 1971年、市川市生まれ。85年に吉川晃司主演映画ヒロイン募集オーディションでグランプリを獲得し、翌86年に「テイク・イット・イージー」でデビュー。中原俊監督の傑作「櫻の園」(90年)では女子校演劇部の生徒役を印象的に演じ、毎日映画コンクール女優助演賞を受賞。他の主な出演作は「花のあすか組!」「蛇イチゴ」「ちはやふる下の句」など。

【ストーリー】

売れない女優下村レイコ(つみきみほ)にある日、映画出演の話が舞い込む。チャンス到来で張り切るレイコだったが、同居している母ユキエ(田島令子)が幻視に悩んでいることが分かる。死んだ愛犬チロが目の前に突如出現するのだという。レイコは映画の仕事と母の介護の両立に励むが、ユキエが次々とトラブルを起こし、演技に集中できず映画出演を断念する。そんな折、ユキエからチロに関する意外な告白を受ける…。