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試練続きのウーバー、野心家CEOは変われるか

ウォール・ストリート・ジャーナル 3/8(水) 8:22配信

 2015年6月、米ウーバー・テクノロジーズがサンフランシスコ本社で行ったサービス開始5周年イベントでは、共同創業者トラビス・カラニック氏がスピーチで謙虚な言葉を並べ、最高経営責任者(CEO)としての成長ぶりがうかがわせた。

 「自分もこの会社も完璧ではないということは私が真っ先に認めるところだ」。カラニック氏はときどき涙を浮かべながら、それまでの5年間を振り返った。

 それから2年近くが経過し、40歳になったカラニック氏は今、再び同社の改革を約束している。最近の一連の騒動を受け、投資家の一部からは、世界一の評価額を誇る新興企業ウーバーでリーダーシップの欠陥が露呈しているとの声も出ている。

 事情に詳しい複数の関係者によると、ウーバーの経営幹部らは最近、カラニックCEOの新たな補佐役を担う人材を迎え入れることについて協議している。米フェイスブックでマーク・ザッカーバーグCEOを支え、同社の対外的な顔にもなってきたシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)のような形になる可能性もあるという。

 現在、ウーバーの取締役会に課された課題は、680億ドルという評価額を築いてきた経営手法を維持しながら、同時に改革を進めて行くことだ。ウーバーはコメントを控え、カラニックCEOもインタビューには応じなかった。

好戦的なリーダーシップ

 自らを「やり手」と呼ぶカラニックCEOには、世界中で規制当局や競合他社と戦いながら新市場に打って出る時に効を奏した好戦的なリーダーシップスタイルがある。世界中で約150万人のドライバーと乗客を引き合わせている同社に投資家は約130億ドルを出資してきた。

 カラニックCEOの対立を辞さないアプローチは、ウーバーでの働き方にも反映されていると従業員や投資家は話す。同社は重視する価値として「実力主義」や「同僚の仕事に口出しする」などを挙げている。また同社は競合他社リフトのドライバーが正当な料金を受け取れないようにする「オペレーション・スロッグ」や、事業に干渉されないように規制当局者を特定し、そうした人々によるウーバーアプリの利用をブロックするプログラム「グレーボール」など、強引とも言える戦略を用いたことも認めている。

 そうしたアプローチは、規制当局やライバル企業、ウーバーの従業員やドライバーなどから批判を受けた。

 それでもカラニックCEOともう1人の共同創業者、そしてグローバル事業責任者の3人で議決権株の過半数を握っているため、カラニック氏のCEOとしての地位は事実上守られていると関係者は話す。

 長い期間にわたってネガティブなニュースが絶え間なく出ているにもかかわらず、カラニックCEOが社内からの大きな圧力に直面することはなかった。それどころか、規制に関する勝利が積み重なるに連れ、同社の評価額は急騰していった。

今年に入って相次いだ逆風

 1月にニューヨークのタクシー運転手たちがドナルド・トランプ大統領による入国禁止令に抗議するストライキを起こしたとき、それを台無しにしようとしたと見なされたウーバーは顧客から大きな反感を買った。同社はツイッターを通じ、そのスト中に料金引き上げは実施しておらず、誤解されたのだと弁明した。その数日後、カラニック氏はトランプ大統領の経済諮問委員会メンバーを辞任した。

 先月には同社の元エンジニアが、性的差別やセクハラが社内でまかり通っているとして告発。同様の主張をする人が他にも複数乗り出てきた。カラニックCEOはセクハラ行為を強く非難し、エリック・ホルダー元司法長官を責任者とする独立調査を命じた。ただ、従業員との対話集会で時折涙を浮かべてプレゼンテーションを行ったカラニックCEOに対しては、過酷な職場環境やブランドイメージ悪化に憤る参加者から鋭い質問が浴びせられた。

 2月には、グーグルの親会社であるアルファベットが自動運転システムの設計計画を盗んだとしてウーバーを提訴。ウーバーはこの件を調査していると述べた。

 それに続いて先月末には、ダッシュボードのカメラで撮影されたカラニックCEOがウーバーのドライバーを罵倒している動画が公開された。カラニック氏はこれについて謝罪し、「人間として成長すること」、「トップの振る舞いについての助言」を受けることを約束した。

「業績が悪化しなければ」

 エール大学経営大学院のデービッド・バッハ氏は「多くの起業家にとっての課題は、従来のやり方を打破する意欲を維持しながら、より一般的なリーダーシップスタイルに移行できるかどうかだ」と指摘する。「ウーバーが達成してきた多くのことがこの4週間ぐらいで台無しになってしまった」

 それでも投資家はカラニックCEOの率直さや大胆さはまれに見る資質だとし、スキャンダルが続いても概ね信頼を保ち続けている。企業価値が高騰したウーバーの株式が公開されるときには、生涯に1度あるかないかの大きなリターンがもたらされる可能性があるので、それも当然だろう。

 エール大学のバッハ氏は「サービスの利用やドライバーの登録申請が減少するなど、事業のファンダメンタルズに実際的な影響が出始めるまで、投資家はこうした失態をよくあるささいな問題と見なす可能性が高い」と述べた。「業績が悪化しなければ、投資家はカラニック氏を信頼し続けるだろう」

By GREG BENSINGER

最終更新:3/8(水) 8:22

ウォール・ストリート・ジャーナル

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