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[大震災 あの日から6年](中) 農地集積 2年遅れで 受け手不足 育成に力 宮城県気仙沼市

3/10(金) 7:01配信

日本農業新聞

 東日本大震災で津波被害を受けた宮城県気仙沼市では、震災6年目の2016年度、担い手への本格的な農地集積がようやく動きだした。仙台市や石巻市など他地域と比べ2年の遅れだ。遠隔地で地元に建設業者が少ないなど、農地そのものの復旧に時間がかかった。農地を引き受ける法人は復興の遅れを取り戻そうと奮闘する。

 気仙沼市では、農地の2割が津波被害を受け、670ヘクタールが復旧対象となった。震災から3年たった13年度末時点の復旧率は38%。石巻市の83%、仙台市の80%の半分にも満たなかった。

 気仙沼市は県最北端にあり、都市部の仙台市や盛岡市から離れた位置にある。県は「気仙沼市は建設業者の数が他地域より少ない。農地の多くは30アール程度。面積の大きい農地が多く、工事を受注しやすい仙台や石巻より復旧が遅れた」(農村整備課)と説明する。

 気仙沼市では、他地域より2年遅い15年度末時点で農地の復旧率が86%に達した。営農を再開できる農地が一定に確保できたことから、16年度からは公的な農地中間管理機構(農地集積バンク)の活用を視野に入れた農地集積が進みだした。

 サンフレッシュ小泉農園は、同市で初めて農地集積バンクを活用し、水田12ヘクタールを引き受けた。同法人は震災後に設立し、トマト生産から着手。水稲栽培は同法人にとって新規部門だ。代表の今野圭市さん(58)は「もともと兼業主体の地帯だった。機械を失ってしまった人も多く、農地の引き受け手は少ない。放っておくわけにはいかなかった」と打ち明ける。

 トマトの収穫期は10~6月。5月中旬の田植えや10月上旬の稲刈りと作業が重なる。法人では今、パートを30人雇っているが、田植えや収穫に配置できる人員は2人程度に限られる。地元のJА南三陸を通じ、農家10人の協力を得て水稲を維持している。

 同法人に続き、農地集積バンクを活用して個人で15ヘクタールを集積した認定農業者の佐藤美千夫さん(72)は「もっと農地が早く復興すれば営農を続けた人もいただろう。そういう人の分まで頑張る」と意気込む。

 農地集積バンクの活動が本格化し、次は農地の受け手育成という課題が出てきた。同県は、担い手の規模拡大や法人化による復興に力を入れており、仙台、石巻両市では現在、農地集積バンクの受け手の数が160を超える。だが、気仙沼市は14にとどまる。

 市は「農地集積を進めるには受け手となる担い手づくりが必要。農家の意向を踏まえながら法人設立などを支援したい」(農林課)と考える。

 同JАも、農地の受け手となる組織向けに資材や肥料の経費の独自助成を始めた。ただ、今の米価では、被災していない担い手でさえ採算ぎりぎりというところが多い。復興途上で稲作経営を軌道に乗せるには、今後も課題が待つ。JAは「集積した農地の維持や今後の規模拡大を支えるにはコスト低減へのサポートが欠かせない」(営農生活部)と話す。

日本農業新聞

最終更新:3/10(金) 7:01
日本農業新聞