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米国基準では中国の為替操作国認定ムリ

3/10(金) 16:00配信

ニュースソクラ

それでも、「トランプ流」に心配は尽きない

 トランプ大統領が、選挙キャンペーン中から「中国の米国に対する輸出ラッシュで米国の雇用が失われている」「中国製品に45%の関税をかける」「中国を為替操作認定国にする」と一連の中国たたきを行ってきたことはよく知られている。トランプ大統領の最近におけるスピーチでも中国、メキシコを名指しして「失業の輸出」を行っているという猛然たる批判は変わらない。また関税面では国境税を創設して、輸出にかかる法人所得税を減免する一方で、輸入には例えば20%の関税をかけるという共和党の有力者も含めて議論が巻き起こっている。

 この中で、為替操作認定を巡っては、4月に米財務省が昨年10月に続いて為替半期報告書を発表する。為替操作国の認定は実はこの報告書で客観的な基準に基づいて判定されることはあまり知られていない。

 その客観的基準は次の三つである。つまり、(1)対米貿易黒字が年間200億ドル以上、(2)該当国の全体の経常収支黒字額がGDP比で3%以上、(3)継続的、一方的に為替市場で自国通貨売り・ドル買いなどの自国通貨安を狙った介入をしていること、の三点である。
 
 この基準に照らし合わせた中国の動きを昨年10月の為替半期報告書で取り上げた2015年7月~2016年6月の1年間で見ていくと次のとおりである。(1)の年間200億ドル以上という対米貿易黒字は3,561億ドルと第二位のドイツ(711億ドル)、第三位の日本(676億ドル)、第四位のメキシコ(626億ドル)を圧倒的に引き離した断トツである。

 (2)の経常収支黒字の対GDP比では台湾(14.8%)ドイツ(9.1%)、韓国(7.9%)などのはるか下で2.4%と3%以上の基準に抵触しない。

 (3)の為替介入により通貨安に誘導していないかが最大の論点である。しかし、中国はむしろ大量の資本流出に伴う人民元売り・米ドル買いで人民元が安くなるのに対抗して為替市場で大量のドル売り介入を行い、人民元レートの下落を食い止めようとしている。それの証拠がピーク時に4兆ドルを超えていた外貨準備高が3兆ドル割れ(2017年1月末 29,982億ドル)まで大幅に減っていることである。外貨準備として保有している米ドルを売って人民元を買い入れたためである。

 以上を総合すると、まず中国の為替操作国認定は不可能である。とくに(3)の為替介入が大量のドル売りで全く逆方向であるのは如何ともしがたい。為替介入についていえば通貨ユーロの為替介入を引き受けるECBも円安志向と思われる日銀もここ数年全く市場介入を行っていない。ドイツも対米黒字が中国に次ぐ第二位、経常収支黒字のGDP比9.1%と対外不均衡では圧倒的な存在ながら為替操作をしているという米国政府高官の言い分は濡れ衣といえる。

 従って、冷静・客観的なデータ分析に従えば中国もまたドイツも為替操作認定国に指名するのは不可能である。しかし、そこは就任以来、破天荒な大統領令を出し続けたトランプ大統領のこと、万が一という心配は尽きないところだ。市場の一部では「1年、2年という短期でなく長期でとれば為替操作は明らかだ」といった言いがかりをぶつけてくるのではないか、と噂されている。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:3/10(金) 16:00
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