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<南スーダンPKO>撤収 政府本音はリスク回避

毎日新聞 3/11(土) 8:30配信

 政府は10日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊の施設部隊を5月末に撤収させる方針を決定した。道路整備などの作業が一定の成果を上げたことを理由にしているが、現地では安定化の兆しが見えていない。隊員の安全確保に加え、国民の間で派遣に対する懸念が高まっていることに配慮したというのが実態だ。

 ◇菅官房長官「昨年9月から検討」

 「5年という節目を見据えて昨年9月ごろから検討してきた」。菅義偉官房長官は記者会見で、派遣から5年を超える施設部隊の今後の在り方を半年前から検討してきたと強調した。

 政府は、施設部隊の活動が一区切り付いたのが撤収の理由と表向きは説明している。だが、治安悪化が続く中、隊員に死者が出れば「これまで築いた国民の信頼を一瞬で失う」(防衛省幹部)のは確実で、リスク回避の思惑があった。昨年7月に首都ジュバで政府軍と反政府勢力の大規模な武力衝突が起きてからは、南スーダンへの派遣に国民の理解が得られにくくなっているとの事情もある。

 一方で、南スーダンは日本が参加する唯一のPKOで「積極的平和主義を掲げる安倍政権として簡単に撤収できない」との意見もあり、慎重にタイミングを探っていた。現在派遣している11次隊の派遣期間は3月末までで、さらなる延長に踏み切るか決断の期限が迫っていた。

 ジュバの治安は現在、小康状態を保っており、「事態が悪化してから撤退すれば国際社会から非難を受け、部隊の安全確保も難しくなる」(自衛隊幹部)と判断。道路整備などに成果があったことを理由に撤収発表に踏み切った。3月末までとしていた活動を2カ月延長するとともに、輸送などの撤収作業に当たる要員を追加派遣する方針だ。

 政府が10日公表した「活動終了に関する基本的な考え方」は、「道路補修は約210キロ、用地造成は延べ約50万平方メートル」と施設部隊の実績を列挙。「施設活動中心の支援から自立の動きをサポートする方向に支援の重点を移すことが適当」とし、施設部隊撤収の時期が来ていると強調した。

 11次隊には昨年11月、安全保障関連法に基づく新任務「駆け付け警護」と「宿営地の共同防護」が付与された。武器使用の範囲が広がり、治安が悪化した場合は、こうした危険な任務に隊員が従事する可能性が高まるとみられていた。

 政府は11次隊の派遣時に、PKO参加5原則に加えて「安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難な場合は撤収」との方針を示し、将来の撤収に向けた準備との見方も出ていた。

 今年2月には施設部隊が昨年7月に作成した日報に、憲法に抵触する「戦闘」の言葉が使われていたことが明るみに出た。稲田朋美防衛相は国会で「憲法9条上の問題になるので『戦闘』ではなく『武力衝突』という言葉を使っている」と答弁し、野党は「隠蔽(いんぺい)だ」などと追及。民進党は「シビリアンコントロール(文民統制)が十分機能していない」として、速やかな撤収を求めていた。

 防衛政策に明るい自民党議員は「自衛隊に死者が出たら政権が吹っ飛んでもおかしくない。野党から追及される材料が減ったという意味でも英断だ」と撤収方針を歓迎した。【村尾哲】

最終更新:3/11(土) 9:23

毎日新聞

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