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[大震災 あの日から6年](下) 業務野菜で営農再開 安定取引 所得確保へ 福島県広野町

3/11(土) 7:00配信

日本農業新聞

 東京電力福島第1原子力発電所事故で、打撃を受けた福島県沿岸部。農業の復興を目指して、JA全農福島や地元JA、県が業務用タマネギの産地化に乗り出した。県内の加工業者に供給する予定で、全農福島と地元JAは2019年度までに約20ヘクタールを確保する計画を立てる。事故前は水稲が主力だったが、新たな基幹品目として安定取引が期待できるタマネギを定着させ、農家所得の確保を目指す。

 産地化には、全農福島とJAふくしま未来、JA福島さくら、県相双農林事務所が携わる。営農を再開できるようになった農地に、何を作るか――。検討は品目選びから始まった。

 水稲は経験も技術もあるが、生産調整の見直しという大改革を18年に控え、安定生産に不安もある。広い土地を利用し切れなければ復興にはつながらない。話し合いを全農福島の主導で重ね、機械化でき、省力化が見込めるタマネギにたどり着いた。需要が見込める業務用を狙い、所得の確保につなげる。

 17年度は現在、約20の個人・グループが除染の完了した水田など約5ヘクタールで作付けを計画する。全農福島とふくしま未来、福島さくら両JAは19年度までに、30程度の個人・グループ、約20ヘクタールに拡大させたい考えだ。

 全農福島は地力向上や販路確保、同事務所は栽培技術の確立、ふくしま未来と福島さくら両JAは作付けの推進などを担う。地区内の農地は、除染と客土によって営農を再開できる状態になったが、地力が下がっているところが多い。このため全農福島は土壌診断に基づく施肥設計、専用肥料を供給するなどして支援する。

 業務用としての販路を確立するため、全農福島は現在、県内の大手加工業者と契約販売に向けた調整を続ける。コンビニチェーンの総菜や弁当、ラーメンチェーンの原料、冷凍加工食品向けなどとして7月からの出荷開始を見込む。

 全農福島は「市場出荷と違って業務用は需要も安定している。相馬・双葉地区の新たな基幹品目に育てたい」(直販課)と話す。

 規模拡大を促しつつ作業期間が集中しないよう全農福島や県は秋植え、春植えの両方を農家に提案していく方針。秋植えは稲刈りが終わった11月に定植し、翌年、田植えが終わる6月に収穫できる。春植えは沿岸部の暖かい気候を生かして4月に定植でき、西日本と北海道の端境期に当たる7月に出荷できる。

 JA福島さくら管内の広野町の新妻良平さん(58)はこれまで秋植えだけを栽培していたが、全農福島が業務用需要の開拓に動きだしたことを受け、新たに春植えを始める。17年度は春植え10アールと秋植え50アールの両方を栽培する。

 新妻さんは「新たな需要が生まれれば安心して拡大できる。地元で営農を再開した農家はまだ震災前の約4分の1。再開や新規就農につながるよう成功事例を積み重ねたい」と意気込む。

日本農業新聞

最終更新:3/11(土) 7:00
日本農業新聞