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【漢字トリビア】「伝」の成り立ち物語

3/12(日) 12:01配信

TOKYO FM+

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「伝える」「伝言」「伝聞」の「伝」です。ものが入った袋のかたちを丸く整え、それを人が背負って運ぶ様子を表しています。


「伝」という字はにんべんに「云」と書きます。
この「云」という字は、もともと「専門」の「専」、または「専ら」と読む字を書いていました。
古い字体を見るとこの文字は、袋の中に入れたものを手で打って、まるく整えた様子を描いているといいます。
そこににんべんを添えて、人がこの袋を背負う形を示し、「背負って運ぶ」「他に運んで伝える」という意味をもつようになりました。
ほかに、「おくる」「ひろめる」という意味にも用います。

自然と寄り添って生きるさまざまな知恵。
記録する術を持たなかったいにしえの人たちは、五感を使えば誰もが分かるようなしるしを見つけました。
虫たちを起こす雷、山肌に残る雪のかたち、鳥の渡りをうながす風。
それを後に続くものたちへそれを伝えたのです。
耳をそばだて、目をひらき、匂いをかぎわけよ。
春の訪れに気づいた人々は、農作業や狩りの準備を始めるのです。
その機会を逸してしまえば、命に関わることさえあります。
伝えようとすることの重みはそのままに、相手に分かるよう形を整え、大切に運ぶ。
人から人へ、魂をこめて伝えられてきたものには、未来への希望が宿っているのです。

ではここで、もう一度「伝」という字を感じてみてください。

二〇一一年の震災、それに続く原発事故。
福島出身の詩人・和合亮一さんは、故郷と日本の終わりを確信します。
この悲しみと絶望を、誰かに伝えたい。
そう思い立った彼は、自らの真実と被災地の現実を言葉にして、次々と空へ投げかけ始めました。
「詩の礫」と名づけられたそれらのつぶやきは、多くの人々の心をおだやかに鎮め、時に、激しく奮いたたせました。
伝えようとすることで、今、自分のやるべきことが見えて来る。
彼は、福島をあきらめないことを決意するのです。
そして、ツイッターを始めてから三日後の夜、和合さんは故郷の空の下から、湧き上がる想いを世界に向けて伝えています。
「あなたも私も、歴史の連結点なのだ。子どもたちのために、生きよう。働こう。泣こう。笑おう。」

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『詩の礫』(和合亮一/著 徳間書店)

(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2017年3月11日放送より)

最終更新:3/12(日) 12:01
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