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「小江戸」観光客戻る 真の復興「若者の帰郷」<よみがえった香取・佐原>

3/12(日) 11:02配信

千葉日報オンライン

 古い町並みで知られる千葉県香取市・佐原。千葉県有形文化財の八つの建造物(計13棟)がかつて商都だった町を象徴する。その建物は、東日本大震災のわずか数分間の大揺れでことごとく損壊。無残に変わり果てた姿に、所有者らはそろって悲観し存続への危機感を口にしていた。

 「あの日」から丸6年を迎えた11日、取材エリアの現地をあらためて歩いた。好天の週末。小野川沿いはたくさんの観光客であふれていた。

 町に戻ったにぎわいとともに、江戸後期創業の老舗「福新呉服店」8代目おかみの平塚智子さん(52)も取り戻した笑みを浮かべた。「佐原はよみがえった。住民の頑張りはもちろんだが、地域以外の多くの人の助けがあった。感謝してもしきれない」。かみしめるように言った。

 古い商家や町屋が軒を連ね、国の保存地区に指定された佐原は「小江戸」と呼ばれる。和雑貨などを扱う平塚さんの店は、明治中期に建てられた県有形文化財だ。

 大震災直後、平塚さんは「正直もうだめかもしれない」と思った。それでも、多くの人に支えられ、1年後に店を再建。他の有形文化財の建物も時間をかけながらも着実にかつての姿を取り戻し、「小江戸」の風景はよみがえった。同店の柱時計の下に7代目の喜伊子さん(92)が座る姿も戻った。

 「震災後は客足が何年も遠のいたのが苦しかった」と本音を打ち明けてくれたのは、江戸末期の建築「中村屋商店」の5代目、並木潤一郎さん(70)。

 200年以上前から佐原で商売を続ける「正上」の加瀬幸一郎社長(51)は「震災は二度と経験したくないが、地域のつながりや町の活力に、人の情けとか、家族の絆とかを再認識するきっかけとなった」と今では前向きにとらえられる。

 取材などで佐原を見続けるが、多くの観光客が再び訪れるようになったのはここ1年ほど。町案内ボランティアの太田定雄さん(76)は、6年前に自ら撮った写真を見ながら「震災で観光客にけががなかったことも、佐原の良さかな」と胸をなで下ろした。

 町並みを生かした地域おこしに取り組むNPO法人「小野川と佐原の町並みを考える会」の佐藤健太良理事長(64)は「(震災は)自分たちの生き方を見つめ直す分岐点になった」と振り返る。

 佐原にはこの6年の間に、日本遺産認定やユネスコ無形文化遺産登録など追い風が吹いた。ただ、急激な人口減少や高齢化も迫り、佐藤さんは「町並み保存や祭りの担い手不足は深刻になる。町に若い人が帰って来ることが、本当の意味での復興だ」と、取り戻した小江戸を次世代に引き継ぐ思いを強めた。(香取支局 馬場秀幸)