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福島の今、伝えたい 茨城大・滝さん 被災地の映像制作

茨城新聞クロスアイ 3/13(月) 4:00配信

「悲しみを乗り越え、福島で生きる人がいることを知ってほしい」-。こんな思いを込め、茨城大教育学部4年の滝なつみさん(22)が、原発事故で一時全村避難となった福島県川内村で暮らす人々の生活を追った映像ドキュメンタリー「今ここにいる 福島県双葉郡川内村」を制作した。東京電力福島第1原発の南西、原発30キロ圏内の同村で、住民らへのインタビューを重ね完成させた。無料動画投稿サイト「You Tube」での公開を予定している。

滝さんは高萩市出身。2011年3月の東日本大震災の時は、県立日立二高の1年生だった。被災地に関心を持ったきっかけは同年夏、宮城県石巻市へ救援物資を届けるボランティア活動だ。バスから見えたがれきが散らばる無残なまちのありさまに衝撃を受け、以来「何かできることはないか」と自問を繰り返した。

大学進学後もボランティアなどで宮城、福島、岩手の東北3県を巡り、3年生になると映像制作を専攻に選んだ。川内村を題材にしようと決めたのは、原発に振り回されながらも、自立し前を向いて歩もうとする住民の姿が胸に響いたためだ。「自分にしかできない形で、被災地を伝えられるかもしれないと思った」と滝さんは振り返る。3年生の冬から、多い時で月に4、5回も同村を訪ねた。

同村へ向かうには、電車やバスを何度も乗り継がなければならない。原発に近いことで周囲に反対されたり、滝さん自身もためらったりした。だが「『今』を生きる人たちを後世に伝えたい気持ちが強かった」。性別や年齢、時には国籍を超えた50人以上から話を聴き、撮影時間は100時間を超えた。

1人で監督、撮影、編集の3役をこなし、できた作品の長さは28分半。滝さんの構えるカメラの前で、住民らは率直な心境を吐露する。震災後、初めて村で挙式したカップルは「小さな花火で風評被害を払拭(ふっしょく)するほかない」と話す。「誰も住んでいないと思われてる村に生活していることを知ってもらいたい」としっかりした口調で話す男性。時には「お前の話は東電の人と同じだ。頭にくるよ!」と、放射能汚染を巡り口論する2人の男性をも映し出し、「ナマの暮らし」を捉える。

同大で10日行われた上映会には、合わせて約40人が訪れ「勇気をもらった」、「住民たちが生き生きとしていた」などの感想が相次いだ。滝さんは来場者に向けて「少しでも福島に心を寄せていただければ」と訴えた。作品は今後、同村での上映も予定されている。 (鈴木剛史)

茨城新聞社

最終更新:3/13(月) 15:03

茨城新聞クロスアイ