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お上や医療界がすごかった!?NHK「ガッテン!」で小野文恵アナによる謝罪を迫られた背景とは…

産経新聞 3/13(月) 16:30配信

 NHKが、2月に放送した生活情報番組「ガッテン!」(毎週水曜日午後7時半)の内容の一部について、放送から1週間足らずでスピード訂正&謝罪した。前身の「ためしてガッテン」からだと20年を超える息の長い人気番組で何が起きたのか。

 「糖尿病の治療をするために直接睡眠薬を使うことは認められていません」。3月1日放送の「ガッテン!」冒頭。司会の小野文恵チーフアナウンサー(48)が、前週の同番組で放送した「糖尿病患者が特定の睡眠薬を飲むことで、血糖値を安全に下げることができる」という内容を訂正して謝罪した。2月22日の「ガッテン!」の特集「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」は、放送直後から批判にさらされたのだ。

 「番組で取り上げた睡眠薬は糖尿病への処方が認められていない」「既存の臨床試験データで血糖降下作用が確認されていない」

 たとえば、日本睡眠学会と日本神経精神薬理学会は同27日午前、異議を唱える統一見解を、それぞれのホームページに掲載した。「糖尿病患者に過大な期待を持たせたばかりか、医療現場での混乱を招いている」と憤り、睡眠学会は同内容の文書をメールと郵便でNHKに送ったという。それに先立つ同24日、厚生労働省はNHKに口頭注意した。同省医薬生活衛生局監視指導麻薬対策課が説明する。

 「放送を見た患者から、『あの薬を処方して』と頼まれた医師もいたようだ。睡眠薬が糖尿病に使えるかのようなテロップを流し続けたり、副作用がほとんどないと表現したりする放送内容は、視聴者に誤解を与え問題があると伝えた」

 実際、放送翌日からインターネット上には、医療現場の困惑の声があふれた。「(番組で紹介された睡眠薬の処方を希望する)患者さんがもう3人も来たぞ。『きのうガッテン観たんですよ』って判で押したように言ってたぞ」

 東京都内で開業する糖尿病専門医は「深い眠りを阻害すると血糖値が悪くなるかもしれない、というデータは少ないながらも存在する。が、だから睡眠薬で治療したら血糖値が良くなる、といえるほどの研究はないはず」と指摘。「科学的根拠がはっきりしていない治療法を、さも効果があるように紹介するのはやめてほしい」

 厚労省の注意、医療現場からの批判。「さまざまなご意見をいただいた結果です」(NHK広報局)と話すNHKは、1日の放送に先立ち、2月26日午後8時の段階で、公式ホームページ「NHKオンライン」に「『最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎』をご覧になった皆様へ」と題した説明と謝罪の文章を掲載した。日曜日の夜中だったが、「水曜日の次回放送(3月1日)を待たず、視聴者と関係者らにNHKの見解を迅速に伝えるべきと判断しました」とNHK広報局は説明する。

 日本睡眠学会と日本神経精神薬理学会が異議の見解をホームページに掲載するのが翌27日午前だから、NHKのほうが先んじたことになる。28日午前零時10分から予定していた再放送も、別の回の「ガッテン」に変更し、迎えた3月1日の放送回の冒頭で小野アナウンサーによる謝罪と説明となる。

 だが、小野アナウンサーが謝罪した、この日の特集が、また物議を醸す。「コラーゲン活用法」という特集で、コラーゲンには褥瘡(じょくそう)ケアや血管年齢を下げる効果があると説明。そして「コラーゲンとゼラチンは同じ」だからとゼラチンを使った料理を紹介したのだが、食品関係者らは「論理が飛躍しすぎだ」と指摘する。

 「褥瘡ケア等への効果はコラーゲンペプチドによるもの。放送は『コラーゲンそのもの』と、『それを部分分解したコラーゲンペプチド』とを一緒くたにしている」

 こう指摘するのは、フードファディズム(食品が健康に与える影響を過大に信じること)研究で知られる群馬大の高橋久仁子名誉教授だ。「そしてコラーゲンペプチドの健康効果は、まだ研究途上。それを無視して『体に良いからゼラチンを料理に使おう』と勧めるのは論理が飛躍しすぎている。ゼラチンは優れた食材ですが、万能薬的効果があるかのような変な期待をもたせる番組づくりはいいかげんやめるべき」と手厳しい。NHK広報局は「コラーゲンのほうは、あくまで食品であり薬のような効果は保証されないとテロップなどで何度も繰り返し放送しました」と説明する。

 「昨年、IT大手の医療情報サイトの不適切な健康情報が問題になったが、国民の信頼が高いNHKの人気番組が与える影響ははるかに大きい」

 メディアなどの健康情報のあり方を研究する京都大大学院医学研究科健康情報学の中山健夫教授は、そう指摘したうえで、次のように提案する。

 「健康や医療の情報を扱う場合、複数の専門家の助言や慎重な根拠の確認など、制作者側に何らかのガイドラインが必要ではないか」

 筑波大視覚メディア研究室の掛谷英紀准教授は、より抜本的な対策として、放送界に甘い現状の放送倫理・番組向上機構(BPO)を、組織的に見直すべきだと訴える。「前身の『ためしてガッテン』の時代から、情報に疑義が生じたことは何度かあった。テレビ局が同じ問題を繰り返し続けるなら、BPOが実効性のある厳しい処分を下すべきだ。委員の公選制導入など、BPOの具体的な改革を論ずべき段階に来ている」(文化部 平沢裕子)

最終更新:3/13(月) 17:41

産経新聞

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