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【インタビュー】ムーンループ「複雑性は音楽を書く上で自然なプロセス」

BARKS 3/16(木) 2:07配信

ムーンループのセカンド・アルバム『ディヴォーション』が3月22日にリリースとなる。“スペインの香りが漂うテクニカル・デス・メタル”というだけで、興味をそそられるのではないだろうか。

◆ムーンループ画像

ここ日本ではまだあまりその名前は浸透していないムーンループだが、新作『ディヴォーション』によって状況は一変するかもしれない。テクニカル/プログレッシヴ・デス・メタル好きのみならず、正統派デス・メタルやプログレッシヴ・ロックのファンの皆にも、ぜひ聴いてみてもらいたい作品の登場だ。

──ムーンループの作品を聴いたことがない人に、そのスタイルを説明するとしたらどうなりますか。

エリック:さまざまなスタイルのコンビネーションだから、“ロックやプログレの要素が入ったエクストリーム・メタル”と言えばいいかな。そもそもプログレ自体がさまざまなスタイルのコンビネーションだから、プログレを定義することも難しいんだけどね。いつもは自分たちのスタイルを、プログレッシヴ・デス・メタルと呼んでいるよ。もちろんクリーン・ボーカルやソフトなパッセージも採り入れているけど、他のプログレッシヴ・デス・メタルとされるバンドも多彩な要素を持っているよね。

──とても幅広い音楽から影響を受けているようですが。

エリック:影響を受けたのは主にオーペス、デス、それからゴジラ、デヴィン・タウンゼンド、ペスティレンス、エイシスト、メシュガー、サフォケイション,、初期のメタリカ、それからテスタメントあたりだね。

──メタル以外からの影響はどうですか。

エリック:非常に大きな影響を受けているよ。クラシック、電子音楽、インディー・ロック、それからジャズ/フュージョン、民俗音楽、フラメンコとかね。あまりに多すぎて、アーティスト名を挙げるのが不可能なくらい。メンバーそれぞれが別の音楽的バックグラウンドを持っているんだ。いくつか例を挙げると、ピンク・フロイド、ポーキュパイン・ツリー、マリリオン、ジミ・ヘンドリックス、オズリック・テンタクルス、フェイス・ノー・モア、ザ・ドアーズ、フランク・ザッパ、スティーヴ・ヴァイ、ジョー・サトリアーニ、レディオヘッド、フランコ・バッティアート、サウンドカード、U2、ザ・ビートルズあたりだね。

──ニュー・アルバム『ディヴォーション』は、デビュー・アルバムと比べてどんな仕上がりですか?

エリック:一番の違いは、今回の作品はもっとオーガニックで、同時に非常にパワフルな仕上がりになっていることだと思う。曲をもっと豊かにするために、アコースティック・パートやキーボードの使用も増やしたんだ。俺のグロウルもさらに激しくなっている。2014年に自分たちのリハーサル・ルームでレコーディングを始めたんだ。ドラムだけはEric Roviraが所有するSoundprat Studioで録って、ミックスとマスタリングは、前回のアルバムと同様Gorka Dresbajに任せたのだけど、とても良い音質に仕上がっていると思う。

──タイトルの『Devocean』というのは造語ですよね。

エリック:そうだよ。"Devotion"(=深い愛情・献身)と"Ocean"(=大洋)という二つの単語をミックスしたんだ。ベーシストがこのタイトルを思いついて、メンバー全員がいたく気に入ったんだ。俺たちの曲のコンセプトにぴったりだったから、パーフェクトなタイトルだと思うよ。

──フラメンコからの影響という話がありましたが、具体的にはどのようなものですか?リズム、それともスパニッシュなスケール?

エリック:ミュージシャンとして、フラメンコのスケールからもリズムからも影響を受けているよ。レコーディングにはスパニッシュ・ギターも使ったしね。フラメンコだけでなく、アラブ音楽のような他のエキゾティックなスケールもリフやソロに使っているし、ドラマーのラウルはラテンのタッチもあるユニークなスタイルを持っているよ。

──とすると、やはりムーンループの音楽はスペイン風だということでしょうか。

エリック:とりたててスペイン風だとは思わないけどね。デス・メタル自体他の国から来たものだし。だけど俺たちはミュージシャンとして、そしてスペイン人として、やはり他の国のプログレッシヴ・デス・メタル・バンドとは違うタッチがあるとは思っている。

──「メドゥーサ」のアコースティック・ギター・ソロなどはフラメンコっぽいですね。

エリック:あれはクラシカルなスパニッシュ・ギターで録音したし、使っているスケールのせいで、非常にフラメンコ・ギターに近い感触にはなっている。露骨にフラメンコ色を出そうとしたわけではないけど、例えば「オリジン」の冒頭、長いアコースティック・パートがあるだろう?あれもフラメンコ・スタイルを思い起こさせると思う。「ジール」のラストは、ディストーションのかかったギターで弾いているリフだけど、これはフラメンコやアラブ音楽のメロディを持っているよ。

──アルバムのアートワークも非常に独特のものですが、これは何を表しているのですか?

エリック:孤独な青い生物が、暗い海と風景に囲まれていて、まるで地球初期の古代生物みたいだろ?エイリアンにも見えるけど、これは実在するカツオノエボシ(電気クラゲ)という生物なんだ。まだ人類が自分たちについて知らない/知るべきことがたくさんあるということと、地球をどう扱うかということの関係には深い意味がある。アートワークは、この生物がもつ繊細なディテールの素晴らしさも伝えているんだ。俺は2014年にMatty Smithが撮った写真で初めてこの生物を見たんだ。すぐにその写真の虜になってね。他のバンドのメンバーにも見せたよ。

──「自然」というトピックを扱おうと思ったのは何故なのでしょう。

エリック:俺がすべての歌詞を書いているのだけど、俺はこの惑星、海、そして化石学や地質学が大好きなんだ。地球をどう扱うべきか、俺の自然への愛と俺が音楽を通じてどう表現ができるかについては深い関係がある。だから俺にとって自然を題材にとるのは、とても当たり前のプロセスなんだよ。

──それにしても『ディヴォーション』で採り上げられている題材は、本当に幅広いですよね。

エリック:そうだね。「メガロドン」は古代のサメの話だ。史上最大で2000万年前の完全なる殺人マシーンさ。この素晴らしい生き物について、語らずにはいられなかったんだよ。「ナイトメア・ギャラリー」は、最も有名なホラー俳優のひとりヴィンセント・プライスについて。子供の頃に彼の映画に夢中になったんだ。「ジール」は交際相手に裏切られ、悲しみの中をいかに生き抜くかについて。こういう経験は人を強くするけれど、非常に傷つくし嫉妬も感じる。「エクスパイアド・キングズ」は、音楽やアートのシーンについてだ。人は一時王になれるが、メディアやファンはある日突然時代遅れの烙印を押してくる。そしてその人は忘れ去られてしまう。まるで世界の頂点にいるかのような気分だったのが、ある時突如相手にされなくなるという状況に追い込まれるとどうなるのか、ということを表現しようとしたんだ。「メドゥーサ」は、自分を愛しているふりをしている女性に恋をしてしまう男の話だ。二人の関係は、有害な感情依存に基づいているので、愛などは存在しない。女はただ男を支配したいだけ。偽の恋の幻想にほぼ完全に盲目になる寸前で、男はある種の啓示を受け幻想を打ち砕く。男は女の首を斬るんだ。ギリシャ神話のメドゥーサのようにね。「オーシャンズ」は、35億年前に地球に生命が誕生した海について。俺たちは生物として何者なのか、産業革命以来、海にどんな仕打ちをしてきたのか、そして個人的な海の生物への興味について歌っている。人類へのアドバイスも含まれているよ。「インターグレイシャル」は、地球がどのように生命を作り出したり絶滅させたりしてきたかについてだ。地球というのは、すべてのものが変化し続ける場所でもある。地球自体が歩み進化し続ける巨大な生物のようなものだからね。俺は化石学のマニアだから、人類が誕生する以前にこの地球でどんなことがあったのかを知るため化石は重要だよ。とても魅力的だ。「オリジン」は、自己治癒のプロセスについてだ。自分自身のうちなる旅だけど、自分を知るというのは重要なことだ。もっと遠く、深く、自分の考えること、そしてその考えがどのような感情を呼び起こし、さらにその感情がどのような行動につながるかを知ることだ。俺たちはみな、本当の自分自身とつながっていると感じることが大切なんだ。

──ムーンループの音楽というのは非常に複雑ですね。

エリック:俺たちにとっては、複雑性というのは音楽を書く上での自然なプロセスなんだけど、もちろん良い音楽が必ずしも複雑である必要なない。俺たちの曲が複雑なのは、内容を豊かにしたいからなんだ。その欲求に抗えないんだよ。

──ムーンループというバンド名は、ポーキュパイン・ツリーの曲名からとられているのですよね?

エリック:そうだよ。16年前、ちょうどバンド名を考えている頃に、俺たちはポーキュパイン・ツリーにハマっていたんだ。「Moonloop」というインストの曲は、マジカルでサイケデリックでプログレ風味のある曲で、とても気に入っていたんだ。もちろん今でも大好きだよ。それにこの言葉は、自然や宇宙とのつながりを感じさせるだろう?

──最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

エリック:日本のファンに俺たちの音楽を聴いてもらえて非常に感謝しているよ。まるで夢みたいな話さ。アルバムを気に入ってもらえるといいな。そして是非いつか日本にも行ってみたい。サポートどうもありがとう。

取材・文:川嶋未来/SIGH

ムーンループ『ディヴォーション』
2017年3月22日日本先行発売
【CD】¥2,300+税
※日本盤限定ボーナストラック2曲収録/日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.メガロドン
2.ナイトメア・ギャラリー
3.ジール
4.エクスパイヤード・キングス
5.メデューサ
6.オーシャンズ
7.インターグレイシャル
8.オリジン
《日本盤限定ボーナストラック》
9.ディシーヴィング・タイム(アコースティック・ライヴ)
10.シングス・キャン・チェンジ(アコースティック・ライヴ)

【メンバー】
エリック・バウレナス(ヴォーカル)
ファンホ・マーティン(ギター)
ラウル・パイヤン(ドラムス)
ヴィック・グラネル(ベース)

最終更新:3/16(木) 2:07

BARKS