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【特集/フットボールを進化させる監督 5】サンパオリの哲学に欠かせない古典的10番 ビエルサから受け継ぐスタイル

3/15(水) 12:30配信

theWORLD(ザ・ワールド)

大胆さと緻密さその源流はマルセロ・ビエルサ

2015年のコパ・アメリカで開催国チリが初優勝。代表チームの宿泊地には、試合後にファンが祝福に押し寄せた。一度はファンの前でピシャリと締められた門を開放させたのはホルヘ・サンパオリ監督だったという。しかも、ファンと選手たちの集合写真を撮ったのも監督だった。サンパオリの「いいオッサン」ぶりを伝えるエピソードである。

負傷でプロを断念したのが19歳。ニューウェルス・オールドボーイズ(アルゼンチン1部)の選手だった。選手は諦めたが、クラブの若手を指導しはじめる。ニューウェルスといえば少年時代のリオネル・メッシがプレイしたクラブだが、最大のビッグネームはスタジアムにその名がついている人物、マルセロ・ビエルサだ。エル・ロコ(狂人)と呼ばれる、サッカー界きっての変人監督。サンパオリはビエルサのサッカーに魅了されたという。

徹底的なマンツーマンのディフェンス、ボールを奪ってからのオートマティックな攻撃、息もつかせぬ切り替えの速さ……。ビエルサの魅力はその大胆さと緻密さにある。前がかりのプレッシングはカウンターのリスクも大きいが、まったく気にする様子はなかった。雌雄を決しようとロスタイムに壮絶な打ち合いになる試合があるが、ビエルサのチームは毎回試合の最初からそんな状態なのだ。それで打ち勝てるチームを作るために、実に緻密で計算されたトレーニングを日々行っていた。ゲームを構成する要素を200以上に分類し、その1つ1つを効率的に練習メニューに落とし込んでいく。それまでの常識では考えられない、いやビエルサ以外は誰もやっていない練習である。

それをサンパオリは間近で見て、学び、解釈した。直接の関係はない。ビエルサ監督の下で選手だったマウリシオ・ポチェッティーノ(トッテナム監督)やエドゥアルド・ベリッソ(セルタ監督)のような直系ではない。ただ、チリ協会がビエルサ監督のサッカーを継ぐ者としてサンパオリを指名したのは、それだけ類似性を認められていたからだ。

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