ここから本文です

初めての映画は性格が変わるほどのインパクトだった―『クーリンチェ少年殺人事件』主演チャン・チェンインタビュー

3/17(金) 20:30配信

dmenu映画

1991年に公開された台湾映画『クーリンチェ少年殺人事件』は、世界の映画人や映画ファンに影響を与える“衝撃”だった。台湾ニューウェイブを代表する存在であり、2007年に59歳という若さで亡くなったエドワード・ヤン監督の最高傑作と言われる本作。3時間を超える長尺でありながら、一切無駄のない映像、音、人物の表情で観客を引き込み、一人の少年とその家族という小さな世界を通して、物語の背景にある台湾全体の“気分”までも味わわせてしまう、まさに誇張なしに「傑作」と呼べる一本だ。

そんな『クーリンチェ~』が四半世紀を経て、現在リバイバル上映されている。主役を演じたのは、撮影当時14歳だった張震(チャン・チェン)。アジア映画ファンでなくとも、サントリーウーロン茶のCMや『レッドクリフ』シリーズでご存じの方も多いかもしれない。今回、デジタルリマスター版公開にあわせて来日したチャン・チェンに、自身の俳優人生の原点となった『クーリンチェ少年殺人事件』について、そして彼を映画の道に導いたエドワード・ヤンの凄さについて語ってもらった。

俳優を続けることを運命づけたシーン

『クーリンチェ少年殺人事件』の舞台は1960年代の台湾。チャン・チェン演じる少年・小四(シャオスー)の家族は、1949年の中華人民共和国成立の前後に、共産党に敗れた国民党とともに大陸から台湾に渡った「外省人」だ。大陸へ帰ることを夢見ながら、台湾での厳しい暮らし向きと、叶えられない大陸へ帰るという夢の間で焦燥感を募らせる大人たち。親世代の不安を感じ取り、小四ら少年たちも徒党を組んで脆い心を懸命に守っている。そんな小四の心の闇が、やがて悲惨な事件に発展していくのだが……。エドワード・ヤンはこの小四という難しい役柄に、演技経験がほとんどなかったチャンを大抜擢。彼は大役を見事に果たしてみせた。


Q.小四は非常に複雑な心理状態を抱えた少年です。エドワード・ヤン監督は、どうやってあなたをあの役に入らせたのでしょうか?

チャン・チェン(以下、チャン):『クーリンチェ少年殺人事件』にとっては、ヤン監督自身が一番のロードマップのような存在でした。なので、基本的なお芝居の訓練をした後は、シーンに合わせていろいろ違う方法で監督の演出を受けるという感じでした。

Q.本作は、1961年に実際に台北で起きた少年によるガールフレンド殺人事件をモチーフにしています。撮影当時14歳だったあなたにとって、人を殺める心理を理解するというのは難しく、ある意味残酷な作業だったのではないでしょうか? 

チャン:実はあまりいろいろ考えていませんでした。もちろん殺人者の心理を理解するのは難しいことですが、小明(シャオミン)を刺すシーンを撮ったのは、もう数ヵ月も撮影をした後だったので、僕は既に自分と小四(シャオスー)の境界がわからなくなっていました。あの場面はすごく印象に残っていて、その後僕が俳優を続けていくことになるきっかけになった大事な芝居でもあります。あの時、あの少年は僕ではなかった。でも同時に僕だったのです。その感覚がとても面白くて、自分自身「役になれた」と感じました。

1/3ページ

最終更新:3/17(金) 20:30
dmenu映画