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プーチン大統領が子だくさん家族に勲章と補助金 ロシア少子化対策

2017/3/18(土) 10:00配信

The Telegraph

【記者:Marcel Theroux】
 18人の子どもたちに囲まれたナデジダ・オズヤックさんは、出産時の痛みを思い出して顔をしかめながら、「お産は楽にはならなかった」と語った。50代前半でも若々しいその細い体で18人も子どもを産んだとは信じられない。

 ナデジダさんと、ロシア正教会の神父である夫のイオアンさん(53)の間に第1子が生まれたのは1984年、ソ連でミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)氏が権力を握る直前だった。そして18人目は、共産主義もソ連も遠い記憶となっていた2009年に生まれた。

 このような大家族を築くことになった動機は何なのだろう。「愛だ」と、イオアンさんは妻の手をなでながら言う。

 オズヤック家は明らかに一般家庭とは違う。おむつ替えや夜泣きなど子育ての大変さをよく知る人なら、誰もがオズヤック家が成し遂げてきたことに恐れ入るだろう。だが今日のロシアでは、オズヤックさんのような家族は特別な意味を持っている。

 ロシアの政治家たちにとっては、しばらく前から同国が人口危機に直面しているのは火を見るよりも明らかだった。ソ連崩壊後、ロシアの人口は1年間に最大70万人減となり、1992~2009年の間には人口の4%に当たる約600万人が減少した。

 突如として、ロシアという国の歴史は終焉(しゅうえん)を迎えるかに思われた。出生率が低過ぎて死亡率を相殺できず、ロシアの人口はどんどん減少。ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)氏は2012年の大統領選で、「われわれは(歴史に)穴を開けるような危機に直面している」と警鐘を鳴らした。

 少なくともこの問題の始まりは、数多くの戦死者を出した第2次世界大戦(World War II)の時代、そして大規模な粛清や人為的な飢饉(ききん)が行われた1930年代までさかのぼる。

 しかしロシア政府は、解決策となり得る一つのシンプルな案を提示してきた。オズヤック家のように子どもをたくさんつくらせる政策だ。

 政府はこれまでのところ、現金支給と巧みな広報戦略によって多産を促している。2007年以来、第2子と3子を出産した親には補助金を支給。2008年には子どもを7人以上もうけた(養子も含む)親のために栄誉賞を創設し、大統領府(Kremlin)に招かれた親に大統領自らが勲章を授与するようになった。最初に勲章を授与された親たちの中にオズヤックさん夫妻もいる。

 昔を知る人は、ソ連時代にも大家族に対して同様の賞が授けられていたことを覚えているだろう。イオアンさんは18人家族で育ち、母親もそうした賞を授与された一人だった。しかし、イオアンさんの母親は子だくさんであることを称賛された一方で、その信仰心には冷ややかな視線が向けられた。当時のソ連では無神論が支配的だったためだ。

 イオアンさんは、そうした信仰の自由を認めない社会の空気についてよく覚えている。特に、母親が自宅の建築資材を購入しようと店に行ったところ拒まれ、手ぶらで帰ってきたときのことは苦い思い出だ。店員から「神が助けてくれるだろうよ」と嘲笑されたという。その当時に比べると、時代は大きく変わった。

 オズヤック家は現在、ロシア南部の港湾都市ロストフナドヌー(Rostov-on-Don)郊外にある大きな家で暮らしている。ロシアで最富裕層に属する人々からの寛大な寄付のおかげで、内装も立派だ。

 オズヤック家の暮らしぶりの変化は、ロシア全土で信仰が復活していることを反映している。事実、ロシア正教会とプーチン政権は、オズヤック夫妻のように仲むつまじい関係を築いているようだ。正教会のキリル総主教(Patriarch Kirill)は、プーチン大統領の指導力を「神の奇跡だ」と褒めたたえている。

 イオアンさんも、プーチン氏が、かつて神父や信者を迫害した旧ソ連の国家保安委員会(KGB)の出身であるにもかかわらず、大統領に熱狂している。「父親のように、この国のすべての人の面倒を見ている。大統領は大家族の世話をしているのだ」とイオアンさんは言う。

 称賛はお互いさまだ。プーチン大統領もロシアの未来を守るために、大家族を当てにしているのだから。【翻訳編集】AFPBB News

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最終更新:2017/3/18(土) 10:00
The Telegraph

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