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【漢字トリビア】「鰆」の成り立ち物語

3/19(日) 12:00配信

TOKYO FM+

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「鰆(さわら)」。春を告げる旬の味わいは、心と身体を目覚めさせます。

魚へんに「春」と書いて「鰆(さわら)」。
春に旬を迎えて食卓にのぼることから、「魚」と「春」を組み合わせて日本で創られた「半国字」です。
漢字を作り出した中国の古代王朝は内陸に位置したため、魚へんの漢字はそう多くは生まれませんでした。
でも、日本は国土を海に囲まれた、漁業のさかんな国。
種類が豊富な魚を表す漢字が少なかったため、すでにある漢字を使って自分たちで次々と作りあげていきました。
鰆は食文化の中心地だった京都や大阪へ春に届くため、魚へんに春で「鰆」という字がつくられました。
とはいえ、冬に捕れる「寒鰆(かんざわら)」も脂がのって大変美味。
関東地方では鰆は真冬が旬の魚です。

春先から初夏にかけ、産卵のため日本の近海に現れる鰆。
特に、瀬戸内海は有名な産卵場で、外海から入り込んできた大量の鰆や鯛、鯖が海面を盛り上げるほど。
その様子が小さな島のように見えることから、地元では「魚島(うおじま)」と呼んでいます。
刺身はとろりと濃厚に、西京漬けや照り焼きはさっぱり上品に。
そのほか煮物や吸い物など、鰆は多彩な食べ方で親しまれています。
細長く縦に平たい体型が語源と言われる「鰆」。
狭い腹をしているのでサ・ハラ(狭腹)という名前がついたとか。
小型の幼いサワラは「サゴシ」「サゴチ」と呼ばれていますが、これも狭い腰を語源として「サ・ゴシ」(狭腰)になったといいます。
春の光をはねかえす優美な春告魚、鰆。
旅立ちの季節を祝う宴にぴったりの魚です。

ではここで、もう一度「鰆」という字を感じてみてください。

四季の移ろいをこまやかに感じ取る「七十二候」。
そこからは、春の訪れを知らせる魚たちの様子をうかがうことができます。
立春を過ぎれば「魚氷に上る(うお、こおりにあがる)」。
湖を覆っていた氷がとけて、魚たちが元気に顔をのぞかせます。
その次にやってくる季節が「獺魚(かわうそうお)を祭る」。
捕れた魚を岸辺に並べてすぐに食べようとしない獺(かわうそ)の習性を、先祖をまつる姿にみたてたのです。
今年も出会えた、滋味豊かな春の魚たち。
獺のように神さまやご先祖さまに感謝を捧げて、春の訪れを告げる食卓を、思う存分味わうことにしましょうか。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『動物の漢字語源辞典』(加納喜光/著 東京堂出版)
『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』(白井明大/文 有賀一広/絵 東邦出版)
『読んでわかる俳句 日本の歳時記 春』(宇多喜代子、西村和子、中原道夫、片山由美子、長谷川櫂/著 小学館)


(TOKYO FMの番組「感じて、漢字の世界」2017年3月18日放送より)

最終更新:3/19(日) 12:15
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