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神山健治、映画「ひるね姫」に込めた想い

3/21(火) 18:00配信

Lmaga.jp

「今の若者は幸せそうに見えたんです」(神山健治)

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002年)、『東のエデン』(2009年)などで知られ、日本を代表するアニメーション作家として熱烈な支持を集める神山健治監督の最新作『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』が、3月18日より公開される。『009 RE:CYBORG』(2012年)以来となるこの映画は、岡山・倉敷市で暮らす女子高生・森川ココネが見る夢が、両親の過去を巻きこんだ出来事と絡み合っていく物語だ。神山監督自身「これまでとは作風が少し違う」と語る本作について、話を訊いた。

【写真】主人公・森川ココネの声は女優の高畑充希

──この『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』はまず、24時間、人々が機械作りに励んでいる街の「夢」からスタートしますよね。しかし、車の自動運転など技術が発達しているにも関わらず、その世界では常に渋滞を起こしている。高い技術力を生かすために様々な法律を定めているんだけど、進歩が逆に人々の暮らしを軋ませている結果になっています。

車の製造技術そのものは、自動運転が可能なところまできている。ただ、社会のインフラ、法整備の部分がコンフリクト(対立)を起こしている。僕らが生きる現実の社会でも、技術が進歩しているのに、生活に幸せが感じられなかったり、むしろ悪化しているように思えたりしますよね。それらをきれいにやり直していくには、全部ひも解いていかなければならない。みんな分かってはいるけど、後戻りできなくなっているこの現状の比喩として、あの冒頭のシーンがあります。

──「コンフリクト」がキーワードですよね。ストーリーも、夢と現実の世界の関係性がそうなっていますし、ある秘密が隠されたタブレットを巡るヒロイン・ココネと敵の闘いなどもそうです。あと、ココネと父親・桃太郎が、家のなかでもLINE的なツールで話すところも、ある意味、「コンフリクト」かも知れません。

あの父親と娘の関係性は、数少ない僕の実際のエピソードでもあるんです(笑)。3日くらい娘とメールでしか会話しないとか、たまにあるんですよ。でもアメリカ人のメディアの方がこの映画を観たとき、「アメリカでは割とメール、LINEで会話をしている親子がポピュラーだよ」と言っていて、あの描写に親近感が沸いたそうなんです。アメリカで起きていることは日本にも遅れて入ってくるだろうし、ますますそういう流れが出来てくるのかも知れません。

──技術の進歩は、コミュニケーションの方法も変えていきました。良いか悪いかは別として。でも、かつての時代では夢物語でしかなかった物事が、今や実現されるようになった。夢と現実の境界線がなくなっていますよね。VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、あとSNSも。

現実はさまざまなものに浸食されています。しかし、浸食されないものもある。それは、「世界がどうなろうが、私が信じる世界はこうなんだ」という個人の想い。この映画はそこに着目しました。

──この映画も、もともとは神山監督が「自分の娘に見せたい映画」というところからスタートしたんですよね。

そうです。というのも、僕らが考えているよりも、今の若者は幸せそうに見えたんです。その「幸せに見える」という印象が、いったいどういうところからきているのか。その内側の部分を描いてみたかった。

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最終更新:3/21(火) 18:00
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