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鉄道促進中止で31億円宙に浮く 基金目的失う、返還か新幹線整備か

3/21(火) 8:36配信

福井新聞ONLINE

 福井県嶺南6市町でつくる嶺南広域行政組合が「琵琶湖若狭湾快速鉄道(リゾート新線)」の建設促進運動を中止したのを受け、約31億円に上る基金残高は目的を失い、県の積立金約50億円とともに宙に浮いた状態となっている。6市町と県は年内をめどに計81億円の取り扱いを決める方針を明らかにしているが、市町ごとに2億~14億円とばらつく残高をめぐり、各自治体関係者の思惑が交錯し始めている。

 ■“埋蔵金”

 6市町が拠出する嶺南鉄道整備促進基金は▽JR北陸線直流化▽小浜線電化▽リゾート新線―のいわゆる「3点セット」のために目的ごとに管理されている。直流化と電化は実現したため新規積み立ては既に終了、ここ数年はリゾート新線分として毎年計1億8800万円を積み立ててきた。

 積立額は市町で異なり、最も多い小浜市の場合は年間8750万円ずつ拠出して1月末現在の残高(利子含む)は14億692万円。同市にとって一般会計の1割弱に当たる金額だ。市幹部や市議の間では「降ってわいた“埋蔵金”。庁内のいろんな部署が狙っている」「(自治体の貯金に当たる)財政調整基金のようなもの」と関心が高い。

 ■3パターン

 嶺南広域行政組合事務局によると、残高の取り扱いは大きく分けて▽6市町に全額返還する▽一定額を基金に残し、残金を返還する▽全額を基金に残す―との3パターンが想定される。

 基金を残す場合、使途変更の合意があらためて必要だ。過去には直流化分を2008年3月に精算した際、整備補助金として11億6千万円をJR西日本に出して、残金約58万円を各市町に返還したケースがあるという。

 複数の関係者が「最も分かりやすく、財政難の自治体にはありがたい方法」とみるのが全額返還のパターン。しかし「全額戻してしまうと、県が『全額(約50億円)を別の目的に回す』と言い出す恐れもある」と打ち明ける関係者もおり、すんなり進まないのが実情のようだ。

 ■嶺南振興

 同組合の管理者を務める松崎晃治小浜市長は2月15日の予算発表会見で「各市町の積立額が異なるため残高の取り扱いは難しいが、できれば一部でも残して小浜線活性化などの嶺南振興に使えれば」と説明。県の基金に対しては「鉄道に限らず嶺南振興に活用してもらえる、と希望的観測を持っている」とした。

 ただ、嶺南振興の捉え方には温度差がある。「もともとリゾート新線の実現性はなかった」という小浜市議の一人は「小浜線活性化のほか、新幹線小浜駅の整備費にも活用してほしい」と指摘。別の自治体の議員は「特定の市町ではなく嶺南全域のために使うべきだ」と漏らす。「原発が集中立地する嶺南と、中京・関西をつなぐ避難道路整備に充てるべき」との意見もある。

 リゾート新線中止をめぐっては、若狭町と小浜市が15日に住民の会向けの合同説明会を開いた。28日には各市町議会の議員で構成する組合議会が開かれる。

 県や県議会の意向も含め、年末までにどんな結論を導き出すのか、81億円に上る税金の行方が注目される。

 琵琶湖若狭湾快速鉄道とは JR小浜線・上中駅とJR湖西線・近江今津駅の全長19・8キロを結ぶ地域鉄道で、概算事業費は424億円。1992年に嶺南8市町村(当時)が建設促進期成同盟会を設立、県や滋賀県側とも連携し事業化を目指した。北陸新幹線小浜・京都ルート決定を受け、嶺南広域行政組合の管理者会は「嶺南と関西圏を結ぶ目的の大半が達成される」として促進運動中止で合意。基金への新規積み立てをストップした。

福井新聞社