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オランダ極右第一党ならず 安堵のメルケル独首相

3/22(水) 14:00配信

ニュースソクラ

欧州選挙の年 トランプ米大統領が反面教師

 3月15日のオランダの総選挙。隣国ドイツの各メディアは、同時通訳による開票中継を翌16日まで刻々と流した。

 フランスの報道も同様だった。両国メディアの詳細な報道ぶりが今回は目立った。

 背景にあるのは、極右政党の台頭への警戒と関心である。ヘルト・ウィルダース氏の率いるPVV(自由党)が、多数あるオランダの政党の中で首位になると、フランスの大統領選挙での極右・国民戦線(Front National)の党首マリーヌ・ル・ペン氏の当選の可能性が高まり、ドイツのAfD:ドイツのための選択肢(Alternative fur Deutschland)の台頭へ拍車がかかり、ポピュリズム傾向がさらに強くなる大きな懸念があった。

 欧州連合(EU)の行き詰まり、ユーロ通貨問題、そして、モロッコをはじめとする北アフリカやトルコからの移民による麻薬犯罪などの治安問題を抱えるオランダ。市民たちの政治への関心は強く、今回の投票率は80.4%と非常に高かった。

 おりしも、トルコのエルドアン大統領の専制独裁化に拍車をかけるトルコ憲法改正の国民投票のキャンペーンがドイツとオランダ在住のトルコ人たち対して展開されていた。オランダのPvdA(労働党)と連立政権を組む保守リベラルVVD(自由民主国民党)のマルク・ルッテ首相は選挙直前に、国民投票キャンペーンのため訪蘭中だったトルコの労働大臣のオランダ出国を命じた。

 「オランダは、外国人に門戸は開いているが、オランダの政治を行うところで、トルコなど外国の政治を行うところではない!」と、ルッテ首相はドイツ以上に厳しい態度を示した。これが与党挽回にプラスに働いたとみられる。

 米国の大統領選挙がハッカーに侵される危険があったことから、オランダ総選挙の開票はすべて、手作業で行われた。現地時間の16日午後現在、開票作業は完了していないが、信憑性の高い出口調査によると、与党VVDが首位を守り、注目を浴びていた極右PVVは2位となった。

 VVDは今後、時間をかけて、CDA(キリスト教民主党)、D66(左翼リベラル)、Christen Unie(キリスト教同盟)、GroenLinks(緑の党・左翼)などと、連合政権を構成する予定である。

 一方、PVVは議席数を増やしたものの、予想に反して首位には届かなかった。米国のトランプ大統領にあまりにも傾倒しすぎ、急進的右翼化に走ったことが敗因にあげられる。トランプ大統領就任でポピュリズムの様々な弊害がでている米国に、欧州市民は学ぶものがあったのだろう。

 いままで、オランダの労働者たちの声を代表してきたPvdA(労働党)が、賃金、年金切り下げに歯止めをかけることができず、多くのPvdA支持者が疑問を抱きながらもPVV支持に走っていることが、オランダ政治の大きな問題だ。この傾向はフランスにもみられる。オランド大統領は支持が落ち、次期大統領選への立候補を断念している。

 トルコとの外交がぎくしゃくしているとはいえ、オランダは欧州ではじめての移民たちの政党であるトルコ人政党DENKを認めている。今回の選挙では、3名の議員をオランダの国会に送り出す見通しだ。

 今回のオランダの選挙結果について、ドイツのメルケル首相は安堵したようだ。オランダのPVVにあたる、ドイツのAfDは内部権力抗争のため、今秋の総選挙のキャンペーンを思うように展開できていない。メルケル首相にとっては好都合だ。

 一方、オランダで支持率を落としているPvdAにあたるドイツのSPD(社会民主党)が擁するシュルツ氏 への支持率がドイツでは高まっている。メルケル首相は油断できない状況だ。

 フランスでは、大統領候補としてエマニュエル・マクロン氏への期待が高まっている。同氏の党、2016年4月6日に結成された社会自由主義政党アン・マルシェ!(フランス語: En Marche!)は、今回オランダで支持率を伸ばしたGL(緑の党)に相当する。マクロン氏にとってはオランダの選挙結果は追い風だ。

 ル・ペン氏は、PVVが首位にはならなかったが、議席数を伸ばしているので、選挙結果に悲観してはいないだろう。オランダ総選挙で、右翼化・ポピュリズムに歯止めがかかったとはいえない。

 欧州では今後、4月にフランス大統領選挙、5月にドイツで一番人口の多いノルトライン=ヴェストファーレン州の選挙、そして、9月にドイツの総選挙と正念場が続く。

 米国のトランプ大統領の挙動を見て、人種を問わない人権尊重や民主主義の大切さを改めて噛みしめている欧州の市民たち。各国各政党のキャンペーンに真剣に耳を傾けている。

■シュヴァルツアー節子(在ミュンヘン・ジャーナリスト)
慶応大経済卒、外務省専門職として在英国大使館勤務、オックスフォード大学留学。ドイツでの日系企業勤務を経て、大手新聞の助手など務める

最終更新:3/22(水) 14:00
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