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中国・李首相を延命させる理財商品は日本発祥

3/22(水) 16:00配信

ニュースソクラ

日本のバブルに重なる投資集団の破綻

 中国の李克強首相は全国人民代表大会(全人代)の開幕式で、「不良資産、債券の債務不履行、(ファンドや運用会社など)影の銀行、インターネット金融などの蓄積しているリスクを厳重に警戒する必要がある」と、異例ともいえる強い口調で金融システムのリスクに言及した。

 中国では2015~16年の相次ぐ金融緩和であふれでたマネーが、金融市場に流入し、商品先物、債券、仮想通貨など様々な金融商品が高騰した。なかでも通常の銀行融資などとは別ルートで信用を提供する「シャドーバンキング(影の金融)」は、政府もその全体像を正確に把握しているとは言い難い。

 昨年2月に公表された中国銀行理財市場年度報告によれば、銀行理財商品は426の銀行で取り扱われ、その15年末残高は23.5兆元(約352.5兆円)で、前年比56%も増加した。だが、国際通貨基金(IMF)によれば、中国のシャドーバンキングの残高は少なく見積もってもGDPの2倍もの規模にまで膨張していると試算されている。実に2000兆円を超える残高というわけだ。

 シャドーバンキングでは、「理財商品」と呼ばれる高利回り(年利20~30%)の金融商品で集めたお金が地方政府に回り、大規模な住宅・不動産や都市開発に充てられた。これらの資金の流れは中国の金融当局の規制の外で野放図に膨張している構図だ。

 理財商品を販売する金融会社は「○○投資集団」と呼ばれ、分かっているだけでも中国全土で800社を数え、一説には1万社あるとの分析もある。中国が2桁の経済成長を続けていた時期は理財商品も20~30%の高利回りが実現できたわけだが、いまや経済成長が6%台に低下し、かつ、米国の金融引き締めを契機に中国から資金が流出し、各種の開発案件は頓挫し、理財商品を販売する「○○投資集団」の破綻が相次いでいる。破綻した不動産開発プロジェクトを地元では「鬼城」と呼んでいる。「○○投資集団」の中には、地方政府庁舎の中に事務所を構えるところもある。シャドーバンキングを実質的に支配者しているのは地方政府の役人そのものであり、官僚の賄賂の温床とみられている。

 一方、シャドーバンキングの原点は日本の信託制度にあったという驚きの事実は知られていない。大手信託元役員によれば、「2000年代初頭に、中国政府から日本の信託制度を勉強したいということで、信託協会を通じて話があり視察団を受け入れた」という。この時に教えた信託制度が、シャドーバンキングのモデルに化けたというのだ。

 中国がまねた信託商品は、「貸付信託」と呼ばれるもので、ファンドで資金を集めて重厚長大企業向け融資のほか、インフラ融資や不動産融資に回される仕組み。貸付信託の利率は「実績配当」。運用利回りが高ければそれだけ高い利率を出せる仕組みである。中国の地方政府は、この「貸付信託」を「理財商品」と名前を変えて販売したが、いまや開発案件の多くは頓挫し、理財商品を販売する「○○投資集団」の破綻が相次いでいる。この構図は日本のバブルと同じ、日本の信託銀行もバブルで踊り、不良債権の重みに耐えかねて再編を余儀なくされた。

 バブル崩壊を経て、日本の信託銀行は「貸付信託」の募集を取りやめたが、それは中国で「理財商品」となって、中国バブルを演出しているのは歴史の皮肉としか言いようがない。

 中国・地方政府の巨額な固定資産投資とその頓挫による不良債権額は中国経済そのものを崩壊させかねないほど膨張している。もはやハードランディングさせることは不可能との指摘もある。高度成長が終焉を迎えようとしている中国。社会の歪みはいたるところで顕在化しつつある。シャドーバンキングはその象徴的かつ喫緊の課題にほかならない。

 そのシャドーバンキングを制御し、中国経済をソフトランディングさせることができるのは経済に精通した李克強首相しかいない、李首相の全人代での演説はそう聞こえなくもない。習近平国家主席は、今秋の党大会で不仲が伝えられる李首相を切るのではないかとの見方が有力だが、李首相が不良債権を人質に延命するというシナリオも皆無ではないだろう。

■森岡 英樹(経済ジャーナリスト)
1957年 早稲田大学卒業後、 経済記者となる。
1997年米国 コンサルタント会社「グリニッチ・ アソシエイト」のシニア・リサーチ ・アソシエイト。並びに「パラゲイト ・コンサルタンツ」シニア・アドバイザーを兼任。2004年 4月 ジャーナリストとして独立。一方で、「財団法人 埼玉県芸術 文化振興財団」(埼玉県100%出資)の常務理事として財団改革に取り組み、新芸術監督として蜷川幸雄氏を招聘した。

最終更新:3/22(水) 16:00
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