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「人権が大きく制限される」共謀罪、沖縄弁護士会長が批判

3/22(水) 11:50配信

沖縄タイムス

 政府が閣議決定した「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法の改正案に対し、沖縄弁護士会の池田修会長は「一般市民が捜査の対象になり、国民の表現の自由やプライバシーが制限される」として、反対する姿勢を示した。「取り締まりの対象が不明確で、政府の説明も不十分だ」と指摘する池田会長に改正案の問題点を聞いた。(聞き手=社会部・国吉聡志)

既存の法体系覆す

 -改正案の問題点は。

 「政府は目的をテロ対策としているが、重大犯罪は予備罪や準備罪などを備えた現行法で対応できる。必要のない法律だ」

 -政府はどんな説明をしているのか。

 「国連総会が2000年に採択した国際組織犯罪防止条約の要請で、新たな法整備が必要だと説明している。だが、同条約はマフィアや国際詐欺集団などの経済犯罪を取り締まるためのもので、テロ対策が目的ではない。『共謀罪』を創設しないと条約を批准できないというのはおかしい」

 -改正案の成立で懸念されることは。

 「成立すると『不正なことを計画しているらしい』という曖昧な状況で捜査が始まるだろう。捜査範囲が計画の周辺にいる一般市民にも及ぶ可能性がある。昨年の改正で対象犯罪が拡大した通信傍受が使われる可能性があり、令状を示されることなく秘密裏に電話を盗聴される気味の悪さを想像してほしい」

 -反対する理由は。

 「刑事法は、犯罪の実行を処罰するのが原則だ。だが改正案は計画段階での処罰を認めてしまい、既存の法体系を根本から覆す。人権を侵害する法律で、法律家として許容できない。政府は東京五輪対策なら、何でもしていいということにはならない。この法律が必要なのか、一人一人が考えてほしい」

曖昧な処罰対象 基地反対運動、容易に弾圧する恐れ

 「共謀罪」の政府案は、処罰対象の「団体」や「罪名」が次々と変遷した。法務省は「普通の団体は対象外」と答弁を続けていたが、議論終盤には「目的を一変した団体は処罰対象」と対象を広げた。曖昧な処罰対象と、277にも上る違法行為を組み合わせれば、市民運動や基地反対運動を容易に弾圧する可能性がある。

 法案は「一般人が対象になるのでは」と懸念の声が上がり、法務省は打ち消しに躍起になってきた。

 1月31日の予算委員会で、福島瑞穂参院議員(社民)は名護市辺野古の新基地建設抗議行動を例に「共謀罪の取り締まり対象か」と質問。法務省の林真琴刑事局長は「普通の団体、会社、労働組合、NPO団体は除外される」と答弁した。

 しかし半月後の2月16日、同省は「正当な活動を行っていた団体でも目的が一変した場合は処罰の対象」と解釈を広げた。何をもって「一変」かの議論は深まらず、「捜査側が恣意(しい)的に『危険性』を判断することになる」との指摘が上がる。

■膨大な違法行為

 「共謀罪」は当初、676の犯罪を対象にしたが、277に絞りこんだ。だが中には労働基準法や著作権法、スポーツ振興投票法などテロとの関連が不明確なものも多い。

 県内の抗議運動では座り込みなどに「組織的威力業務妨害」、建物へのビラ掲示が「組織的建造物等損壊」、刑事特別法の「軍用物の損壊」が適用される恐れがある。

 辺野古では、コンクリートブロックをゲート前に置いた行為が威力業務妨害罪として起訴されている。「共謀罪」ではブロックを置こうと計画し、仲間への連絡や資金を引き出した時点(準備行為)で同意した全員が逮捕される可能性がある。

最終更新:3/22(水) 11:50
沖縄タイムス