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ハッカーの系譜(10)マービン・ミンスキー (9) 人工知能「冬の時代」が到来

3/23(木) 14:37配信

THE ZERO/ONE

パーセプトロンの限界を指摘するミンスキー

1963年に、ミンスキーはシーモア・パパートと知り合った。この南アフリカ生まれの数学者は、数学の学士号をとるためにイギリスのケンブリッジ大学で学んでいた。そのときにパーセプトロンに興味をもったが、パーセプトロンの機能については、ミンスキーを同じように限定的なものではないかという疑いを持った。

パパートが、MITを訪れ、ミンスキーと面会すると、二人の考えはたちまち一致した。パーセプトロンがあまりに魅力的に見えすぎるため、人工知能研究者が誤った道に進もうとしている。パーセプトロンを追求してもそれは袋小路になっているのだ(現在のディープラーニングの基礎となっているのもパーセプトロンだが、それには飛躍的な進化が必要だった)。

パパートは、MITの数学科の教職を得て、さらにミンスキーのAI研の研究員となることで、ミンスキーといっしょにパーセプトロンの限界を探る研究を始めた。

パパートとともに導きだした結論は、パーセプトロンは線形分離可能な問題しか学習できないということだった。線形分離可能というのは、直線で集団をわけることができるような事象のことだ。

たとえば、犬と猫を見わける問題を考えてみよう。見わける基準は、体の大きさと活動量だとする。一般に、犬の方が体は大きく、活動量が大きい。猫は小さく、寝る時間が多いので1日の活動量は多くない。横軸に活動量、縦軸に体の大きさをとり、さまざまな犬や猫の測定値をプロットしてみると、猫はグラフの左下隅に固まり、犬はグラフの右上隅に集まることがわかるはずだ。このような集団であれば、一本の直線で犬と猫をわけることができる。ミンスキーとパパートは、パーセプトロンはこのような線形分離可能な問題しか学習できないことを数学的に証明してしまった。

XOR問題が学習できなければ実用にはならない

線形分離可能な問題だけでも学習できるのだったら、じゅうぶんとは言えなくてもたいしたものじゃないか、そう考える方もいるかもしれない。しかし、数学者たちは落胆をした。なぜなら、線形分離しかできないとすると、世の中のほとんどの複雑な事象は学習することができず、実験室の中で慎重に準備された特別な問題しか学習できないことになるからだ。

世の中の複雑な問題を理解するためには、必ず論理演算をしなければならなくなる。論理演算とは、AND、OR、NAND、XORの4つが基本だ。これ以外にも論理演算はあるが、この4つの論理演算を組み合わせることで実現できる。この0と1、または真と偽の組みわせの論理演算の結果のうち、AND、OR、NANDは直線で結果をわけることができる。ところがXORの結果は直線ではわけようがないのだ。

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最終更新:3/23(木) 14:37
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