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鈴木帝人社長、「進化しない会社は絶える」

3/26(日) 18:00配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 鈴木純帝人社長・CEO(1)

 かつて化学繊維産業をけん引してきた帝人が今変わりつつある。

 来年、創立100周年を迎える名門企業は、高機能素材、ヘルスケア(医療・医薬)、IT (情報技術)の3事業を束ねて、長かった停滞期から抜け出そうとしている。ヘルスケア部門出身の鈴木純社長・CEO(最高経営責任者)がこれからを語る。

――2014年4月に社長に就任して3年、営業利益500億円の収益目標は、16年3月期に671億円を上げて、1年前倒しで達成しましたね。振り返られて手応えはいかがですか。

 手応えというよりも、言ってきたことが何とか達成できそうで、ホッとしているというのが正直な気持ちです。今まで私たちが社会に言ってきたことが、信頼されていないと思ってきましたのでね。

 目標と現実がかい離しているではないかと言われますと、環境が変わったとか事情はいろいろありますが、やはり何も言えません。当初の収益目標達成は、なすべきことのまだ半分で、これから先、山は一層険しくなるぞという気持ちです。

――業績予想を下方修正することがたびたびありましたからね。

 ありました。「できないじゃないか。いつ言ったことができるのだ?」という問われ方をしましたので、厳しい目があると気を引き締めています。

――トップ経営者として、緊張するでしょうね。

 緊張するというか、重たいですね。「全身全霊で決断しなければならない」と言う経営者の方もいます。そこまで重いかどうかわかりませんが、間違えてはいけないという気持ちがすごくあります。

 ただし間違えていいことと、いけないことを、自分なりに区別しておくべきだと思うんです。多少間違えてもいいんだというくらいの気持ちが、社内にはあった方がいい。そうでないとガチガチの減点経営になります。

 また私がガリガリこうしてほしいと言えば、みんないろいろ言いながらも、その通り動きますよね。それが間違いであっても、止めてくれる人はいないし、責任を取ってくれる人もいません。

 部長や部門長のときにも、失敗などでオレの責任だということはいっぱいありますが、上の人が謝ってくれるというのがあるわけです。まだ上があるというのが無くなると、それは怖いですよ。

――まだ半分来たところで、これからが大変だということですが。

 本当に、帝人は今まさに変わろうとしているんです。その足固めができたというくらいの感じです。踏み出しかけてはいますが、ガシッと歩いて山に登るのは始まったばかりだという意味でまだ半分なのです。

 体力もないのに、山に登ろうと言っても無理でしょう。ようやく装備を整え、体を筋肉質に鍛え直したので、山登りができそうになったかなというところです。

――社長就任以来、3年かけて事業構造改革をやりましたね。足固めとは何ですか。

 昨年、一昨年、よく言ってきたのは、基礎収益力とは何かということです。基礎収益力というものが多分あって、そのうえに景気による業績変動が乗っかるのならわかるけど、景気変動で根こそぎ振れては何もできないだろうと。

 僕らはこのくらい稼げる力があるから、この程度の先行投資はできて、たとえ失敗しても大丈夫だろうという具合に、判断するわけです。その計算が成り立たなければ、怖くて投資はできないというのが私の感覚です。

 だから基礎収益力を高めよう、では、それはどのくらいなのかと考えたわけです。種々検討して営業利益が500億円を超えるくらいのところだと決めて、17年3月期に、それを超える営業利益の企業体になることを目標にしたのです。

 16年3月期の決算は(営業利益671億円と)ものすごくいいのですが、計画したときとは為替も原油価格も前提が違っています。それをならせば真っすぐきているので、いい線なのかなと思います。

――景気の波は当然ありますから、まず土台をしっかりしたいということですか。

 もう一つ言えば、景気の波の影響をできるだけ受けにくい体質にしたいんです。帝人の事業は、素材だけでもヘルスケアだけでもないので、うまいポートフォリオになっているのです。08年のリーマンショックの時も、ヘルスケアは好調でした。素材産業では、あり得ないことです。

 ポートフォリオによって安定性は保たれることがあるわけですが、もっとしっかりしたポートフォリオが必要だと思います。

 景気による業績の振れはできるだけ小さい方が、経営は楽です。中身をよく見ていじらないといけないのですが、プロダクト(製品)のポートフォリオまで手を入れる必要があります。そうすればもっと大きなポートフォリオ転換がやりやすくなります。

 大きなプロダクト・ポートフォリオの転換を考える場合、ある塊の事業体について自分たちの基礎収益力が見えていないと、何をどう変えるのか絵を描けません。

――次期中期経営計画(17-19年度)は、進化し続けるとの意味で「ALWAYS EVOLVING」と題していますね。

 会社自体が進化していくのが必要で、進化しない者は絶えるよと言いたいのです。社会も進化するわけですから、それを先取りするくらい会社も進化して行こう、さらに社会の進化を加速することができるといいねという思いも込めています。

――世の中の動きについて行くだけでは、後追いですよね。

 私たちが新しい価値をどんどん作り出して、社会を進化させる側になる。そのためには自分たちが進化して行かなくては駄目で、そうでなければこれからは生きていけないでしょう。

(次号に続く)

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:3/26(日) 18:00
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