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反政府集会で大量拘束 それでもプーチン体制は揺るがない

3/29(水) 11:00配信

ニュースソクラ

依然高いプーチン大統領支持

 26日にモスクワを中心にロシア各地で当局が許可しない比較的大規模な反政府デモ・集会が実施され、数百人が拘束された。その中には提唱者のアレクセイ・ナワルヌイ氏も入っている。ロシアではいよいよウラジーミル・プーチン体制批判が勢いを取り戻し、当局と反体制運動が激突、ロシアは政治危機に突入する――そんな観測が高まるかもしれないが、その可能性は低い。

 集会は20を超える都市で開かれ、モスクワでの参加者は主催関係者によると、約2万人(当局発表で7000~8000人)。ナワルヌイ氏は今月初め、ドミトリー・メドベージェフ首相が巨万の富を不正に築いていると告発、集会は首相の退陣、汚職追放を求め開かれたが、一言で言えばプーチン政権批判の運動だ。

 モスクワでは2011年末から2012年初めにかけて実施された不正選挙に抗議する集会・デモには10万人規模の参加者がいた。今回はそれに比べると極めて小さいが、それでも反政権運動が久しぶりに盛り上がりを見せたことは間違いない。

 問題はそれが今後、政権を追い詰めるまでに発展するかどうかだが、まずプーチン支持率は今も80%近辺と高いことを考慮しなければならない。ナワルヌイ氏は「野党指導者」と表現されているが、彼が率いる進歩党は議会に議席を持たない。つまり支持層はあまり広くない。それに反政権運動は一つにまとまっておらず、言わば内部分裂の状態にある。またそれが首都で盛り上がったとしてもロシア全体となると話は別だ。従って運動には限界がある。もちろん、当局に弾圧され、政治活動が規制されているから支持者も少ないとの反論はありうる。

 反政権運動支持は全体としては弱いが、政権としては現状を見くびっているわけにはいかない。ナワルヌイ氏は2013年にモスクワ市長選に出馬、30%弱を得票、首都では一定の支持者がいる。それにロシアでは比較的大規模な政権批判のデモ、集会が時々起きている。2011~2012年のほかにも2005年には年金生活者が制度変更に抗議、2015年には車両税の引き上げに反対の狼煙をあげた。

 今回、一定の参加者を集めたのは、それが汚職撲滅を掲げたからだろう。ナワルヌイ氏は今月、ドミトリー・メドベージェフ首相が高級アパート、ヨット、果てはワイナリーなどを汚職によって入手、所有していると告発、それに関する映像をYouTubeで流した。閲覧件数は1100万件に上るという。首相に対する告発の当否は不明だが、それだけ国民の間には汚職に対する反感が強い。

 ロシア経済は石油価格の低迷による苦境を脱しつつあるが、一方で貧困率が上昇、賃金削減も広がっており、一部市民の間には政府の経済政策への不満が鬱積しているという要因もあろう。

 現政権としては、現時点でたいした政治的脅威にさらされているわけではないが、過去に大規模抗議運動が盛り上がったことがあり、さえない経済状況下で汚職疑惑を機にそれが再現してはたまらない。彼らはそう考え、厳しい対応に出たのかもしれない。

 今回の大量拘束の模様は内外で大きく報道された。ロシア国内では基本的にはそれを問題視する向きは少ないだろうが、海外は別だ。プーチン体制の「強権」「弾圧」「自由の欠如」が印象づけられ、ロシアはますますひどい国だと思われるだろう。

 ウクライナでは今月23日白昼、ロシアの元下院議員(共産党)が射殺され、ペトロ・ポロシェンコ大統領はただちにロシア当局による犯行だと非難した。証拠を提示したわけではないし、むしろロシア当局には彼を殺害する理由がないように思われるのだが、この事件もあって西側諸国ではプーチン政権への印象は悪化するばかりだ。米欧とロシアの関係改善の道は遠い。

■小田 健(ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)
1973年東京外国語大学ロシア語科卒。日本経済新聞社入社。モスクワ、ロンドン駐在、論説委員などを務め2011年退社。
現在、国際教養大学客員教授。

最終更新:3/29(水) 11:00
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