ここから本文です

いよいよ公開『ムーンライト』、オスカー獲得俳優のマハーシャラ・アリの言葉が感動を呼ぶ

3/30(木) 15:10配信

dmenu映画

今年のアカデミー賞で「作品賞」を含め3部門に輝いた『ムーンライト』(3月31日公開)。それ以前から、今の時代に見るべき作品として絶賛されていましたが、アカデミー賞授賞式で起こった世紀の誤発表による影響もあり、注目度はますますアップしました。いわゆるスター俳優の出演はありませんが、主人公・シャロンに父親のような愛情を注いだ麻薬ディーラーのフアン役を演じたのは、海外ドラマ好きには馴染みの顔であるマハーシャラ・アリ。アカデミー賞では助演男優賞を獲得し、さらなるブレイクも期待されています。

あらゆる色眼鏡をはずしてくれる物語

『ムーンライト』は、米・マイアミの美しい空の下で育つ黒人のシャロンが主人公。シャロンの幼年期、少年期、青年期は、それぞれ3人の役者によって演じられ、だんだん自分のアイデンティティに目覚めていくシャロンの成長過程が描かれています。

黒人社会にはびこる貧困と麻薬という劣悪な環境の中、麻薬中毒の母を持ち、さらにマイノリティーである同性愛者のシャロン。偶然出会ったシャロンを息子のようにかわいがった麻薬ディーラーのフアンは、内気なシャロンが心を開いた数少ない人物の1人です。幼年期のシャロンに「自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな」と諭します。フアンはストリートで麻薬売買をしていましたが、父親がいなかったシャロンにとって唯一頼りにできる大人の男性でした。どんな人生を歩もうと揺るがなかった、シャロンの幼馴染・ケヴィンに対する愛は、このフアンの言葉を守り通していたからかもしれません。

この一途なシャロンの思いは、人種、年齢、セクシャリティを越え普遍的な感情として描かれることで、ぐっと私たち観客の心を惹き付けてくる物語になるのです。様々な社会問題やマイノリティーに対しての色眼鏡を優しくはずしてくれるような作品です。

海外ドラマ好きにとっても待望の作品

フアンを演じる俳優、マハーシャラ・アリは、海外ドラマ好きの人にとってはよく知られている存在。2004年から米で放送されたSFドラマ「4400 未知からの生還者」では、ある女性へ人種と世代を超えた愛を貫き、温厚で勇敢な男性を演じました。また、今も続く米ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」にも出演。ホワイトハウスを舞台に権力闘争が繰り広げられる中、アリは“企業の利益のために政治家や官僚に対して働きかける人=ロビイスト”をスマートに好演しています。それらの役とは対照的に、米ドラマ「ルーク・ケイジ」ではNYを牛耳るギャングのボス、コーネル・ストークスを演じ、極悪非道な冷徹さを見せています。

アリの本格的な俳優デビューは2001年の米ドラマ「女検死医ジョーダン」。映画は『ムーンライト』でエグゼクティブ・プロデューサーを務めたブラット・ピット主演の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』にも出演しています。主演でなくとも、役柄の人生を背負ってきたかのような名演で存在感を発揮していきたアリ。密かに応援していたアリのファンにとっても『ムーンライト』での高評価は、まさに待望のものとなりました。

さらにアリは、今年のアカデミー賞「作品賞」を含む3部門にノミネートされていたNASAの黒人女性たちを描いた『ヒドゥン・フィギュアズ(原題)』(日本公開未定)にも出演しているなど、映画界での躍進も続いていきそうです。

月明かりに照らされた褐色の肌を映し出す映像も息をのむほど美しい今作。世の中にまん延している社会問題に隠された別の側面を映し出し、人が生きる上で大切なことを浮き彫りにしてくれます。

文/岩木理恵@HEW

最終更新:3/30(木) 15:10
dmenu映画