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森友疑惑の捜査始まる、検察は本気か

3/31(金) 12:00配信

ニュースソクラ

補助金受給だけでなく、疑惑全体を解明せよ

 「森友学園」籠池泰典理事長の国会証人喚問から1週間、新しい動きがあった。大阪地検特捜部が籠池氏に対する補助金不正受給容疑の告発を受理する一方、森友学園が国交省に補助金を返還した。自民党は籠池氏を偽証罪で告発する動きを見せている。

 疑惑解明の舞台を、国会から法廷に移すかどうかの攻防だが、試されるのは検察の本気度だ。全容解明に及び腰なら、国会追及の幕を引きたい政権を助ける疑惑隠しと受け取られかねず、「政権に弱い検察」の汚名を上塗りすることになる。

 証人喚問で、よくしゃべった籠池氏が、「3通の契約書」を問われると「刑事訴追される恐れがある」と、口をつぐんだ。

 小学校の校舎の建設費で、森友学園は同じ日付の(1)国交省には23億円余(2)大阪空港を運営する「関西エアポート」には15億円余(3)大阪府私学審議会には7億円余と、3通の契約書を提出していた。

 建設業者は15億円余が正しい額という。国交省には、木材を活用した建築への補助金を多くもらおうと額を水増しし、私学審議会には学園の財務状況を良く見せようと少ない額を示した疑いがある。

 このうち実際、補助金を受け取ったのは国交省からの5600万円。関西エアポートからの騒音対策の交付金は、まだ受けていない。

 国交省への補助金返還は、私学審への小学校の認可申請を取り下げた時点で予想できた。いずれも刑事訴追、すなわち逮捕や起訴を逃れようとする行為だ。

 もっとも盗人が犯行発覚後に金品を返したからといって無罪放免されないように、補助金を返しても既遂を未遂にはできない。大阪地検特捜部は、補助金適正化法違反容疑の告発を受理し、捜査を始める。

 金額が異なる契約書が明らかになった時点で本欄に、もはや検察が捜査すべき段階で、村木厚子・元厚労省局長の冤罪事件で信用を地に落とした大阪地検特捜部には、名誉回復のチャンスと指摘した。

 もし、検察が単なる補助金不正受給事件に矮小化して立件を目指すなら、名誉回復どころか、国会での疑惑追及に幕引きしたい政権への協力と見なされて、さらなる信用失墜を招くだろう。

 森友疑惑の本質は(1)国有地払い下げをめぐり不正があったのか(2)大阪府私学審の「条件付き認可が適当」の判断をめぐり不正があったのか、の2点だ。

 大阪地検には、補助金不正受給のほかに、森友の贈賄(賄賂申込罪容疑)と、財務省近畿財務局職員(氏名は特定されない)の背任容疑の告発も出ている。

 前者は籠池夫妻が、自民党の鴻池祥肇参院議員に現金だか、商品券だかを贈ろうとした件。後者は近畿財務局の国有地払い下げ手続きに不正があったか、が問われるが、払い下げの経緯では、大阪府と財務省の説明に食い違いがある。

 また、国会が籠池氏を議院証言法違反(偽証罪)で告発すれば、国有地をめぐる「神風が吹いた」「政治の関与があった」とした証言の真偽も問われる。安倍晋三首相の昭恵夫人による100万円の寄付の有無、名前の挙がった政治家の関与の有無も当然、捜査の対象になろう。

 もっとも政治家の明確な働きかけがなく、財務省本省や近畿財務局が「忖度(そんたく)」して便宜をはかったとなると、立件はなかなかの難物かもしれない。刑法に「忖度罪」などなく、具体的な違法行為として立証できるかどうか。

 だが、大阪地検特捜部が捜査する以上、求められるは、補助金受給に絞った局所的な事件処理ではなく、国民の前に疑惑の全体像を解き明かす努力だ。その気構えがなければ、特捜検察の不要論に輪がかかろう。

■土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)

最終更新:3/31(金) 12:00
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