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新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う?

アスキー 4/1(土) 12:00配信

NAMMショーで注目を浴びた超小型ヘッドアンプ「MV50」は「CLEAN」「AC」「ROCK」の3種ある。今回はそれぞれの音の違いを聞く。

 VOXは新型真空管「Nutube」を搭載した初の製品として、超小型ギター用ヘッドアンプ「MV50」を発売した。
 
 NutubeはVFD(蛍光表示管)で有名なノリタケ伊勢電子とコルグの共同開発によるもので、従来の真空管より低電力で動き、発熱も少なく、小さな筐体に収められる。MV50はそうしたNutubeのメリットをわかりやすく形にした製品だ。
 
 MV50の外形寸法は標準的なストンプボックスサイズのエフェクターと大差なく、重量はわずか540gに過ぎない。ACアダプターと合わせても、ギターのギグバッグに難なく収められる。
 
 にも関わらず、Nutubeを使ったプリ段と、クラスDのパワー段によるハイブリッド構成で、MV50は最大50Wの出力を発揮する。一般的なギター用スピーカーキャビネットと組み合われば、リハーサルスタジオからライブハウスまで対応できるパワーだ。
 
 また、ヘッドフォン/ラインアウト端子にはキャビネットシミュレーターも搭載されており、自宅練習やDTMのような用途にも使える。こうした応用範囲の幅広さもMV50のウリのひとつ。
 
 MV50はサウンドキャラクター別に「CLEAN」「AC」「ROCK」の3種が用意され、店頭価格はそれぞれ2万1600円。同時に発売された小型8インチスピーカーキャビネット「BC108」は1万800円。MV50とBC108のセット販売もあり、こちらはROCK、AC、CLEANともに2万8080円。そして4月末には本格的な12インチスピーカーキャビネット「BC112」の発売も控えている。
 
 VOX開発陣へのインタビュー2回目は、CLEAN、AC、ROCKと3種類用意されたサウンドキャラクターの違いについて。
 
3つの違いはクリーン、クランチ、ディストーション
―― CLEAN、AC、ROCKと3つあって、それぞれキャラが違う。すると全部欲しくなるじゃないですか。でも、それはよくないと思うんですよ。
 
江戸・李 (笑)
 
―― どれかひとつにしたいので、どう違うのかを教えてください。
 
江戸 まず、クリーン、クランチ、ディストーションで差別化しようというアイデアが当初からあったので、音に関してはその通りの違いです。
 
ROCKは1959とJCM800のいいとこ取り
―― CLEAN、AC、ROCKの順で歪みが深くなると。では、まずROCKはどんな設定ですか。
 
江戸 ROCKはブリティッシュ・ロック・サウンドを目指してボイシングされています。ギターをシールド一発でつないで、ハードロック、メタルまで行っても大丈夫だと思います。歪み主体で使う人はROCKを使ってくださいということですね。もちろん、ゲインを下げるなり、ギターのボリュームを絞ればいい感じのクリーントーンも出ますし。
 
―― 一個あるとロックならなんでもできちゃう感じですね。どれくらいのゲインが来るんですか。
 
李 回路的なことで言えば(マーシャルの)1959とJCM800のいいところを取って、いい感じにブーストさせたみたいな。
 
―― その音、好きな人がたくさんいそうですね。
 
江戸 これは自分の感想ですが、ROCKはJCM800にTS系のオーバードライブをかませた感じの音もするなあと思っているんです。いい意味で真空管だけの歪みじゃない、ちょっとガリッと来るところが、ゲインを上げていくとだんだん出てくる。
 
―― じゃあブースターはいらない?
 
李 なくても大丈夫。ゲインはJCM900くらいはありますけど、ゲインを低めにしてボリュームを上げて、ラウドな感じの1970年代の音も出せるし、そういうところは狙って作っています。
 
江戸 それでいてNutubeのキャラクターというのも聴こえてくるんですよね。ちょっとハイがロールオフされたような。ローミッドに温かさが増したような、ギターアンプのキャビネットから出ている音なのに、質のいいマイクプリを使ってコンデンサーマイクで録ったみたいに聴こえる部分もあって。
 
―― やっぱりNutubeらしい音というのがあるんですね。
 
李 あります。
 
ACでしかないAC
―― ACはどうですか?
 
李 ACはACですね。
 
江戸 ACはACですよね。
 
―― ACとしか言いようがないですよね。VOXが作るACの音だから。愚問でした。ただ、ACシリーズのよさというのは伝わりにくくて、ROCKのゲインを落としてミッドハイを上げれば同じみたいに思われてるところもあります。
 
江戸 クランチを比べるとフェンダー、VOX、マーシャルってぜんぜん違うんですよ。AC30の場合は、スピーカーにセレッションのアルニコブルーを使っているおかげで、ジャリーンというところが出てきているんですが、これはそのジャリーンをアンプで出しているので、単にROCKのゲインを下げればACになるというわけではないです。
 
李 もちろん回路構成も違いますから。
 
―― 僕はAC4やAC10のような小さいVOXのチューブアンプを使っているので、MV50のACがどんな感じなのか、すごく気になっています。
 
江戸 だったらこれは気に入られると思いますよ。これはちょっとダイナミクスがフラットな感じで、弾きやすいです。
 
ほかとは設計が違うCLEAN
―― ACやROCKはバックパネルにインピーダンスの切り替えスイッチがありますけど、CLEANはそこがアッテネーターになっていますよね。
 
李 ACとROCKはスピーカーの影響を受けて音が変わる回路をパワーアンプに載せています。その影響を受ける量は、接続するスピーカーのインピーダンスで変わってくる。それで背面にインピーダンスの切替スイッチがあるんですが、CLEANにはあえてその回路を搭載していません。
 
―― それはなぜですか?
 
李 どのキャビネットでも安定したクリーントーンが出せるように。スピーカーと箱の影響を受けて出る音の差を、CLEANでは広がらないようにしています。
 
―― そうしないとクリーントーンが成立しないとか?
 
李 その方が好まれる場合が多い、ということですね。クリーントーンで弾くジャズギタリストで、真空管アンプという人もそんなにいない。むしろトランジスタアンプのほうも好きという人が多い。
 
江戸 パワーアンプが頑張ってますとか、スピーカーが頑張ってますという、アンプとスピーカーの相互作用で生まれる音は、ある程度、アンプが歪んでいるからこそ出る音なんですね。CLEANはそういうシミュレーションをあえてしないほうがよいと思ったんです。
 
―― デモを効く限り、ある程度は歪むようですが。
 
江戸 はい。ボリュームを上げていくと、ベースマン的な歪まではいきます。その歪んだ状態で音量を下げて弾きたいという人のために、裏にアッテネーターが付いているんです。
 
―― ボリュームがゲイン的に、アッテネーターがマスターボリューム的な役割になっていると。
 
李 そこもかなり考えて、ここまでまとめた感じですね。
 
―― また殴り合いですか?
 
李 いえ、手は出ていないですから(笑)。
 
江戸 この形は李が提案してくれたんですよね。
 
李 アッテネーターは江戸が最初に言ってくれたんだよ。それでボリュームをアッテネーターにすれば、ゲインをなくしてEQはトレブルとベースにできるじゃんって。
 
―― EQを2バンドにしなければならない理由があったんですか?
 
李 やっぱりCLEANではゲイン、トーン、ボリュームではちょっとなあと。
 
江戸 クリーントーンを使うジャズの人は、細かくEQをいじれたほうがいいだろうなと言うのもあって。
 
李 あとは実際に音を出しながら説明したほうが早いかな。
 
(次回は果たしてどれくらいの音量が出るのか。実際にスピーカーにつないだ様子をお伝えします)
 
 
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
 
 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
 
文● 四本淑三

最終更新:4/22(土) 12:18

アスキー