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圧巻のブラジル=強く美しく南米を席巻=6度目の優勝果たし伝説となるか

4/1(土) 4:01配信

ニッケイ新聞

パラグアイを粉砕、南米予選連勝記録を8に伸ばす

 ブラジル代表が3月28日のパラグアイ戦に勝利し、世界一番乗りでロシアワールドカップ出場を確定させた。
 この試合の前までワールドカップ予選7連勝を記録しており、アルゼンチンやウルグアイにも3点差をつけて勝利していたブラジルは、ホームでのパラグアイ戦でも連勝の勢いそのままに相手チームに襲い掛かった。
 元々守りの堅さには定評のあるパラグアイ、何とか引き分けて勝ち点1を持ち帰ろうと粘ったが、それも33分しか持たなかった。右サイドからドリブルで切れ込んだコウチーニョが、ゴール前まで上がっていた、ボランチのパウリーニョへの縦パス、パウリーニョがヒールで戻すと、シンプルなパス&ゴーでディフェンスを置き去りにしたコウチーニョはダイレクトでゴール左スミに流し込んだ。
 1点差ならまだ射程圏内、パラグアイは傷口を広げずに耐えしのぎ、後半残り15分勝負の目論見だったが、絶好調のネイマールがそれを許さなかった。後半早々に自ら得たPKを失敗したネイマールだったが、18分には自陣深くからドリブルを開始、2人を置き去りにすると、最後は3人に囲まれながらもゴールを決めて2―0、70メートル超の独走だった。
 試合終了間際には芸術的なパス交換でパラグアイディフェンスを翻弄すると、超攻撃的左サイドバックのマルセロがキーパーの頭上を越すシュートでダメ押し、アシストはまたもパウリーニョのヒールキックだった。
 驚くべきはチーム全体の攻撃姿勢だ、キーパーと一対一だったマルセロにはレナト・アウグストへパスの選択肢も残っていた。「2―0で勝っていて、試合終了間際、左サイドバックとボランチが、ネイマールより前にいるなんて!」と解説者も絶賛の攻撃的姿勢だった。

常識を覆すブラジルの強さ

 「サッカーはリアリズムの戦い、点が沢山入り、娯楽的な試合なんて絵空事、ましてやワールドカップ予選は1点を争ってジリジリとした我慢比べがつきもの。むしろ、そうした駆け引きこそ面白い」と信じていた筆者は、そんな小難しい理屈など関係なく、ひたすらに見ていて楽しい、愉快な試合にスタンドで呆然としていた。
 今のブラジルは、サッカーの常識、ワールドカップ予選の常識から逸脱している。
 通常は、スペースの空いているところを攻め、ノーマークの選手を探してパスをするが、ブラジルは狭いところを攻め、マークにつかれている選手にパスを出して、それでも突破してしまう。守備側は通常、「ここは守れている。だから敵は空いている逆サイドを狙ってくるはず」と、ある程度攻撃側の動きを予測しながらプレーするが、それが全く無視され、さらに簡単に突破されてしまうのだから、始末に終えない。
 また、絶好調のネイマールは、パラグアイ戦のように自陣深め、むしろ自軍ペナルティーエリアが近いところからのドリブルで独走ゴールを決めてしまうから、通常センターラインから10メートルほど敵ゴールに近づいた地点に定められる、守備の開始ゾーンが意味をなさない。ネイマールがドリブルを開始した地点まで守備ゾーンに定めたら、前線で守る選手の負担が大きすぎ、早々にスタミナ切れを起こすのが関の山だ。
 またブラジルは、「過酷なワールドカップ南米予選、ホームでは勝利を狙い、アウェイでは慎重に戦って引き分けもOK」という常識にも全く従わない。
 例えばパラグアイ戦の5日前のウルグアイ戦は、「予選2位の難敵、しかもアウェイ、引き分けでもOK」との声が自国メディアからも出たが、守備を固める戦い方を選択しなかった。前半9分にPKで失点し、チッチが監督に就任して以来、初めて先制を許したものの、ビハインドの状況は9分も続かなかった。全く動じずにボールを支配しすぐさま同点に、その後も奔放に攻め続け、終わってみれば4―1の大勝だった。

1970年ペレの時代以来、「美しく攻撃的なサッカー」で世界を制するのか?

 ブラジルはワールドカップで5回も優勝しているが、不思議なことに最近2回の優勝、1994年、2002年の事が振り返って語られ、OB選手がもてはやされる事は少ない。
 むしろ未だに懐かしく語られ、ドキュメント番組が作られるのは、ジーコを中心に戦ったが、優勝を逃した1982年、1986年の世代だ。「美しいサッカーは80年代で終わってしまった。それ以降のサッカーは守備的で、優勝しても喜べない」と語る国民も未だに多い中、今のブラジル代表は久々に結果も、魅力的なプレーも両立していて、来年ロシアの地で優勝すれば、1970年ペレ世代のように、伝説のチームになる可能性を持っている。

井戸 規光生

最終更新:4/1(土) 4:01
ニッケイ新聞

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