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経団連が英国政府に対し、「在英企業への配慮」要請 英EU離脱問題(Brexit)

4/2(日) 8:10配信

ZUU online

トヨタ、日立など大手日本企業1340社が加盟する日本経済団体連合会(経団連)が英国政府に対し、「在英企業による事業活動への影響を注意深く考慮した交渉」を要請する書面を準備した。

「影響を受けない事業はない」とまで懸念されているBrexitは、すでに多方面にわたり不穏な空気をかもしだしている。多国籍企業は勿論、最新の情報ではロンドン証券取引所とドイツ取引所の合併却下も報じられている。

■英国の目指す「真の国際化」は企業にとって最悪のシナリオ?

日本経済団体連合会の動きは、英ファイナンシャル・タイムズ紙の報道から明らかになった。他国の在英企業同様、日本企業にとって英国のEU離脱は今後の事業活動を大きく左右する深刻な問題だ。交渉の結果次第では「悪夢」になりかねない要素をふんだんに含んでいる。

「単一市場への残留」という離脱決定直後に残されていたわずかな希望は、今年1月、テリーザ・メイ首相が完全撤退の意向を表明したことで打ち砕かれた。EUという枠組みに拘束されることなく、幅広い領域で貿易協定を結ぶことができる「真の国際化」を目指す意図だ。

しかしEU側がほかの加盟国によるドミノ離脱を防ぐ目的で、英国に厳しい離脱条件を突きつける姿勢であるのに対し、メイ首相は「英国の将来にとって不利な条件をのむぐらいならば、No Deal(取引なし)の方が賢明だ」と、全面的に争う意向を明らかにしている。そのため交渉が2年間という期限内にまとまらない可能性も考えられる。

交渉の延長にEU側が応じなかった場合、英国は手ぶらでEUを脱退することになる。日本経済団体連合会を含む多国籍企業が最も恐れている「最悪のシナリオ」だ。

■再三にわたる企業からの警告も届かず

日本企業はこれまで英経済に多大なる貢献をもたらしてきた。投資総額は年間1兆円を突破。進出企業は1100社を上回り、現地で14万人以上を雇用している。手ぶら離脱はこれまで免除されてきたEU間の輸出入の関税や経済活動の制限、従業員のビザ取得など、あらゆる事業上の不都合を意味する。

昨年6月の離脱決定以前から、日本企業は再三にわたり「警告」を発してきた。9月には日本政府も15ページにわたる覚書を外務省ウェブサイトに掲載し、離脱の影響に配慮を促している。

これに対し英国側も日本企業の留置に努めている。昨年12月にはフィリピン・ハモンド英財務相自ら来日し、日本企業との話し合いの場で懸念を払しょくする発言をしていたが、その時点では「EU市場へのアクセス権の維持」が前提になっていた。

「欧州の窓口」として多国籍企業を魅了してきた英国がその肩書を失う危機に直面している今、英国に代わる移転先を検討する企業が日を追うごとに増えているのも不思議ではない。

■金融セクターへの痛恨の一撃

現時点では経済よりも移民制限や規制を優先させる「ハード・ブレグジット」路線で、交渉が進められる気配が濃厚だ。あらゆる企業が影響を受けると予想されているが、中でも金融セクターへの打撃は痛恨の一撃となりそうだ。

英国側は離脱後も「欧州一の金融セクター」の座を死守する自信を見せているが、「日本の銀行はそれほど楽観視していない」とファイナンシャル・タイムズ紙は報じている。現に三井住友FGの国部 毅社長なども、ロンドンの金融セクターとしての地位の低下への懸念を示している。

頭をかかえているのは他国の金融機関も同じだ。JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、HSBC、クレディスイスなどの大手が、続々とロンドンからほかのEU圏への移転を検討中だ。金融機関の大移動が現実となれば、最終的には3万件の雇用と1兆8000億ユーロ(約214兆6766億円)相当の資産が英国から流出すると予想されている。

■「新たな英国の可能性」に賭けるトヨタ、日産

一方「新たな英国の可能性」に社運を賭ける日本企業もある。トヨタおよび日産は今年にはいり、英国での生産を継続する意向を明らかにした。EUの対英輸出で最大品目である自動車産業の残留は、英国にとって心強い盾となる。

内山田 竹志代表取締役会長は「トヨタは英EU離脱にともなう問題を乗りきれる」と前向きな姿勢を見せており、日産のカルロス・ゴーン社長も英EU離脱が英国の工場で新モデル生産する計画におよぼす影響について、好戦的な考えを示した。

EU側はすでに英国を拠点とする航空会社のEU圏での活動に、圧力をかける動きを見せている。英EU離脱後、EU主要路線運行する条件として「本社のEU圏への移動」を提示していることがガーデアン紙の報道から明らかになっている。

また以前から度々暗礁に乗りあげていたドイツ取引所によるロンドン証券取引所の買収は、EUからの合併承認が取得できず頓挫ということになりそうだ。

こうした企業誘致線は今後ますます激化して行くだろう。日本企業だけではなく、英国で事業を営んでいるすべての企業にとって決断の時が訪れようとしている。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

最終更新:4/2(日) 8:10
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