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親の財産を把握しやすくなる「家族信託」とは?

4/2(日) 18:30配信

ZUU online

相続対策は単に不動産活用や節税を目的とした対策だけにとどまらず、「争族」にしないために何が出来るのかを考えなければならない。

2015年に相続税及び贈与税の税制改正がおこなわれ、基礎控除額と法定相続人1人あたりの控除額が減少すると、メディアなどで対策が広く扱われるようになった。相続対策の大きなポイントは、親が元気なうちに「親の財産を(子どもや孫が)把握しておく」こと。その方法として、いま「家族信託」が注目されている。

1. 家族信託とは何か? 信託銀行との違い

「信託」といえば多くの人が信託銀行を思い浮かべるだろう。財産を有している人(委託者)が、不動産などの個人資産を信頼できる専門家(受託者)に託し、運用や管理を任せる仕組みだ。そのうえで資産を渡したい相手(受益者)に資産を渡すところまでが一連の流れ。このタイプの銀行が行う信託を厳密には「商事信託」という。受託者を「業」として行う信託業務が定義とされ、信託銀行のほかにも弁護士法人や司法書士法人が受託者となるケースもある。

一方で、受託者の役割を家族が担い、専門家がバックアップすることによって「家族間『のみ』で信託する」ことを家族信託(民事信託)という。商事信託に対して、「民事信託」という場合もある。

家族信託のメリットは商事信託と異なり、銀行に手数料を支払わなくて良い点、相続対策を委託者・受益者・受託者のすべてが「家族」で出来る点だ。

デメリットとしては、活用されるようになって時間が浅いため、税務上のメリットが整備されていない点だ。いわゆる家族信託を活用することによって、相続税の課税額が軽減されたり、所得税の軽減要因となったりということは見当たらない。

2. 成年後見制度と相性の良い家族信託 補完制度としての役割

この家族信託は「成年後見制度」と相性が良い。成年後見制度は法定後見や任意後見の総称で、委託者の資産や意思決定を代わりに行う制度。ただしこの制度は、「資産の積極的活用(運用)や生前贈与、相続税対策」をすることができないため、この部分の補完制度として家族信託が活用できる。

具体的には所有不動産の売却や借換、アパート建設や、証券などの投資、確定拠出年金など「運用」をすることができる。また、委託者が自身の財産を法定相続を飛び越えて「孫に遺したい」場合、遺贈をすることになるが、家族信託ではそこまでのスケジュールを踏まえて組むことが可能だ。

3. 家族信託を活用して「親の財産を把握」する

家族信託のポイントは、「受託者を誰が担うか」という点だ。家族のなかで委託者にも受益者にも、それ以外の家族にも納得させられる人選はもちろん、受託者自身、特定の誰かに著しい利益をもたらさないように気をつける必要がある。もちろん話し合いの結果として、家族全員で「長男の孫に遺そう」という結論になることはある。

そのため、家族信託の制度に精通している弁護士や司法書士は全体の構図をプロデュースすることに加えて、受託者を管理監督する役割が求められる。

ただ、弁護士や司法書士が参画しても家族信託の主役は「家族」であることに代わりにはない。家族信託を活用することによって、親の財産を把握しやすくなる、というメリットがある。

相続において、生前に資産がいくらあるのかを家族間で共有しておくことはとても大切だ。実際に相続が発生すると、分割協議を終えて相続税を申告するのに10カ月。仮にマイナスの資産があるとすれば、相続放棄をするのに3カ月しかない。故人を送り出して、喪が明ける期間もそこに含まれるため、決して余裕のある日程ではない。そこで遺産を受け取る相続人各自の見解が異なると、まさに相続が「争族」となる一歩になる。

そこで生前に資産を共有する方法として、子どもや親に資産がどれくらいあるかを尋ねる方法があるが、親としては「あなたが死んだら」と聞かれるに等しいため、一家の相続対策になるとはわかっていても、なかなか気持ちは進まない。

特に親と子どもが離れて住んでいる場合は、正月やお盆に集まった時が相続の話をするいいタイミングといえるが、「正月にたまに顔を合わせて死んだときの話か」と空気が悪くなってしまうことも多いという。

そこで、家族信託を活用できる。家族信託を活用するには資産の状況、その資産をどうするかを設定しなければならないため、子どもからすれば親の財産を把握できる。また、受益者や受託者を設定することで、親がその資産をどうしたいのか、希望を家族間で把握することができる。公的遺言と組み合わせたうえで、家族で財産のプロデュースを進めるようにしたい。

工藤 崇
FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じ、Fintech領域のリテラシーを向上させたい個人や、FP領域を活用してFintechビジネスを検討する法人のアドバイザーやプロダクト支援に携わる。Fintechベンチャー集積拠点FINOLAB(フィノラボ)入居。執筆実績多数。

最終更新:4/2(日) 18:30
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