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【スーパーGT】設計者の”意思”を語るフェラーリ488GT3「設計意図を見つけなければ失礼だ」

4/3(月) 20:07配信

motorsport.com 日本版

 4月2日に発表されたINGING & Arnage RacingのスーパーGT GT300クラス参戦体制。同チームが使うのは、昨年51号車JMS LMcorsa 488 GT3としてスーパーGTを戦ったその車体であるという。

【写真】フェラーリ488GT3の複雑な冷却用開口部

 しかし、2017年仕様のバージョンアップが施されており、昨年からの大幅なポテンシャル向上を実現しているという。INGING & Arnage Racingの伊藤宗治監督はその最大の違いを、「エンジンのコントロール」と語る。

「ソフトウエアだけではなく、ECUも、センサーも含めて全て変わりました。その結果、エンジンのコントロールを細かく設定できるようになりました。トップパワーは変わっていませんが、常にトップパワーで乗っているわけではありません。ただ、その途中はパワーアップしていると言えるかもしれません」

 その他にも細かいアップデートが加えられているという。伊藤監督は説明する。

「空力面は一緒ですが、それ以外の細かい部分はたくさん変わっています。例えばフロントのフロアを吊っているワイヤ、これは昨年まではロッドだったものが、今年からワイヤに変わりました。これにより、縁石などで突き上げを受けた時の、縮み方が大きくなりました」

「どのGT3マシンも、年度が変わる前にバージョンアップをします。今回のマシンは、その2017年バージョンアップを全部やってありますよということです」

 Arnage Racingは昨年まで、メルセデスSLS AMG GT3を走らせ、スーパーGTを戦っていた。伊藤監督は長年エンジニアとして活躍しているが、フェラーリを扱うのは今回が初めて。その初めての”跳ね馬”は他のGT3マシンとは全く異なり、しかも”意志”が伝わってくるという。

「設計者や、組み立てた人たちの”意志”を感じます。それをクルマが訴えてくるんです。『俺たちはこういう考えで作ったんだから、しっかり使えよ!』と」

「形で言うなら、冷却面です。オルタネーター、スターター、ドライブシャフト……そういうところ全部に、別々にダクトが引いてあって、冷やしている。全部そうなっているんです。オルタネーターには、普通はダクトなんてありません。あっても、前方からだけ。しかし、このクルマは後ろからもダクトが引かれて、冷やしているんです。オイルクーラーもなく、これまでに見たこともない大きなラジエターで全てを賄っているんです」

「エンジニアとしては、意志が伝わってくるクルマは面白いです。サスペンションのセッティングをしていても、それがすごく敏感に伝わってくるんです。それを全て掴むのは大変だし、完璧には掴めないと思います」

 そのマシンをいかにセッティングするか、それは”感性の問題だ”と伊藤監督は言う。

「昨年とは、セッティングを1から変えました。去年のやり方が間違っていたということではなくて、ここに至るまでのアプローチがたくさんありすぎて、それを経験し、順番にやっていかなければいけないということです。失敗の数こそがエネルギーであり、財産。現時点では今までの失敗が功を奏して、良いアプローチになっていますけど、まだまだ奥があるはずです」

「誰かに聞いてやれるような話ではありません。そして、設計者の意図を見つけてあげないと、その設計者に失礼だと思います。どのクルマにも設計者の意図があって、その意図に応じた走らせ方をしなければ」

 伊藤監督はフェラーリ488GT3を「勝つために、コストを考えずに作られたクルマ」だと評価した。そしてチャンピオンを獲るのは”非常に難しい”と言うものの、「今年はひとつひとつ取りこぼさず、チャンスがあれば勝ちに行く」と、今シーズンの目標を語った。

 今季のスーパーGTは、いよいよ今週末に幕を開ける。

Kenichi Tanaka