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ドラフト1時間後に“クビ”宣告 楽天は「命の恩人」、ドラ9左腕が感謝の初登板

Full-Count 4/3(月) 18:14配信

プロ初登板に秘めた「恩返し」の想い、投手生命の危機救った奇跡の9位指名

 一度は“クビ”を言い渡された戦場で躍動した。楽天のドラフト9位左腕・高梨雄平投手は2日のオリックス戦(京セラドーム)でプロ初登板。1イニングを無安打無失点でデビューを飾った。4点差逆転でチームの開幕3連勝を呼び込む力投。上々の初登板となった。

2005年~2016年の各球団ドラフト指名選手一覧

「4点差だったので、なんとしても1点も与えないという気持ちで必死で投げました」

 0-4で迎えた6回。濱矢に代わり、3番手で名前がコールされた。先頭の8番・若月をカウント2-2からスライダーで遊ゴロに斬ると、続く駿太はスライダーで見逃し三振。安達に四球を出したが、西野を直球で遊ゴロに仕留めた。左のサイドからゆったりとした間で繰り出す変則フォームで打者を幻惑。無安打無失点、20球で役割を全うした。

「ああ、ここがプロ野球なんだな」と感慨に浸ったプロ初マウンド。その場所に立てるのは、特別な感謝の想いがあった。

 昨年10月のドラフト会議。楽天から9位指名された。全体で後ろから3人目の85番目。それでも、喜びは格別だった。しかし、寮で記者会見を終えた後、和嶋監督から、こう告げられた。

「もし、来年も残っていたら、お前は野手だった」

バット引き、ビデオ係…引退覚悟した社会人時代、才能を見出した楽天スカウト

「マジかよ」。吉報から、わずか1時間後に明かされた投手としての“クビ”宣告だった。

 もがき抜いた社会人生活だった。早大3年春に東大戦で東京六大学史上3人目の完全試合を達成。しかし、名門・JX-ENEOSでは調子を落とし、レベルの高い社会人野球の壁にぶち当たった。最高峰の都市対抗大会では1年目はバット引き。2年目に至っては予選でベンチ入りすらできず、データ係でネット裏からビデオカメラを回すだけだった。

「このままだったら、もう今年で“上がり”だろうな」。本気で引退を覚悟した。活路を求め、一大決心したのは昨年、夏前のこと。サイドスロー転向だ。「骨を埋めるつもりでやる」。プロでは希少な左の横手なら生きる道もある――。わずかな可能性を信じて腕の位置を下げ、本格的に練習を始めた。

 投手生命の崖っぷちでイチかバチかの挑戦。そんな時、人知れず熱視線を注いでくれた人がいた。楽天・後関スカウトである。

 当時、与えられた実戦の場は、オープン戦や小さな大会がほとんど。敗戦処理だった時もある。それでも、24歳の才能に可能性を見いだし、視察に足を運んでくれた。「プロに行けるなら何位でもいい」。社会人の、それも名門チームでは異例の“順位縛りなし”という心意気を伝えた。その想いは、サイド転向から3か月後、ドラフト9位指名に結実した。

 高梨は当時を振り返り、「命の恩人」となった球団への想いを明かした。

「不確定要素しかない自分を拾ってくれて、社会人でクビになるところだった自分をプロに導いていただいた。もし、このまま社会人に残って引退して、会社員として生きて行っても、40歳、50歳になった時、きっと後悔すると思った。だから、9位であっても、チャンスを頂いた時に『行かない』という理由はなかったし、少しも迷いはなかった。小さい頃から夢だったプロへの道を作っていただいたのは、球団と後関さん。本当に感謝しています」

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最終更新:4/5(水) 12:08

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