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明るさ増す世界経済、政治不安は増すばかり

4/4(火) 11:00配信

ニュースソクラ

世界的な景気回復に確かな感触はあるが・・・

 昨年央の中国景気の下げ止まりを契機に、世界景気はようやく景気回復が確かな局面に来ているように思われる。

 その流れを感じ取ったロンドンの著名エコノミストは「一時30ドルを割り込んだ原油価格が50ドルまで戻している、石炭、鉄鉱石の価格や海運市況も底を脱した」と語る。

 「韓国の輸出も、朴政権の動揺にもかかわらず順調である。1月が11.2%、2月も20%も増えている。とくに半導体(1月)が64億ドル、前年比42%増と過去最大を記録した」と、韓国経済の再生をその証左に挙げていた。

 一昨年、中国経済が景気停滞に陥り、資本流出に見舞われたのが契機となって世界的に株価が下落したほか、原油価格も100ドルから30ドル割れまで落ち込み、それが資源価格全般の軟調に繋がった。新興国の景気が悪化して、とりわけブラジル、ロシアがマイナス成長をきたした。

 中国は人民元の暴落を防ぐため2015年末から数か月で3,000億ドルを超える外貨準備の減少に直面した。さらに国内景気の停滞を打破するため、インフラ投資拡大、自動車取得税減税などの財政刺激策と金融緩和を通じる信用供与拡大に邁進した。これらの策が功を奏して鉄鋼、自動車などの基幹産業が勢いを取り戻した。

 中国の景気回復によって、昨年央から原油、石炭、鉄鉱石などの資源価格が上昇に転じて、それら物資を運搬する際の不定期船市況であるバルチック指数などの海運市況もボトムから3倍ほどの急騰を示した。製造業のPMIをみても昨年央から、米国、欧州、中国、東南アジアと世界のほぼ全地域で上昇が著しい。

 ブラジル、ロシアも中央銀行総裁などが資源輸出の持ち直しに加えて、物価安定に伴う利下げ余地の拡大もあって、マイナス成長からの脱却を見通す強気のコメントが増えてきた。台湾、韓国も半導体需要の拡大から輸出が伸び、インドネシア、インドなどの景気も好調を示している。

 先進国に目を転じると、米国では雇用環境の改善が著しく、非農業部門雇用者数は77か月連続プラスを辿り、2月には235千人と大幅増となり、失業率も4.7%とほぼ完全雇用状態となった。中小企業のアニマル・スピリットも過去にないほど強まっているとの報告もある。

 さらにトランプ政権による今後10年で1兆ドルにのぼるインフラ投資の拡大や法人税の大幅減税が打ち出されて株価、長期金利とも上昇してきた。またEUでも欧州委員会の冬季見通しでは2017、18年の実質成長率はブレクシットにより低成長を予想される英国を加えても1.8%と潜在成長率を上回る見通しとなっている。

 米国のFRBも慎重な利上げスタンスを示してきたが、12月、3月と連続利上げに踏み切った。イエレン議長は3月利上げの際に「景気過熱防止のための利上げであり、利上げを待ち過ぎれば後になって一段と急速な利上げが必要となる」とこれまでにないタカ派的発言を行っている。ECBのドラギ総裁も「デフレリスクはおおむね解消した」との見方を示している。

 イングランド銀行もEU離脱に伴う景気の下振れリスクよりもむしろインフレリスクを懸念しだしている。長年、低金利に慣れてきた先進国で国民が慌てるような長期金利の上昇があってもおかしくはない。日銀もイールドカーブコントロールで長期金利の上昇圧力を抑え続けることができるのかを問われよう。

 しかし、このように明るさを増す世界経済にとって暗雲をもたらしかねないのが世界的な政治の不安定性拡大である。米国のトランプ政権が保護主義的な動きに出れば、他の諸国もそれへの対抗措置を講じよう。欧州も極右勢力が台頭する中でのフランス大統領選やメルケルが首班を取れるか微妙なドイツの総選挙を控えている。

 何といっても中国では上記のように経済成長、雇用増のペースの維持を至上命題に景気対策や資本流出防止策に懸命となってきた。言うまでもなく、習近平総書記としては今秋の党大会で権力基盤強化につながる幹部人事の実施を最大の眼目に置いているため「経済失政」のそしりを受けるのを回避するのが景気刺激策の真の狙いだ。

 しかし、そのために中国は債務の累増と不動産バブル、銀行の不良資産問題の解決を先送りしており、リスクがどこかで表面化する恐れも強い。ただ政治さえ安定的に推移すれば経済の論理から言って今年はリーマンショック以降待ち望まれていた景気の本格的回復につながるであろう。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:4/4(火) 11:00
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