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ホルモン剤を闇市場で購入、ベトナム人トランスジェンダーの苦悩

4/5(水) 14:42配信

AFPBB News

(c)AFPBB News

【4月5日 AFP】ベトナムのフィン・ニャ・アン(Huynh Nha An)さん(21)は毎週、同じジレンマに心を悩ませる。それはつつましい収入の使い道だ。食費にするか、顔にひげが生え戻ってくるのを抑えるホルモン剤を闇市場で買うか?

 物静かなアンさんは、男性として生まれたものの、性別適合を強く希望している。医師に頼らず自分でタイから薬剤を密輸しては、自己注射している──お金があるときは。

 屋台の売り子をしながら、パートタイムで歌手としても働くアンさんは、「ホルモン剤を定期的に打たないと男に戻ってしまい、女の子のようにすべすべではいられなくなる」と説明した。

 ベトナムのトランスジェンダーは、ホルモン療法や性別適合手術を合法的に受けることができず、何千人もがアンさんと同じ問題を抱えている。

 そのため、深刻な健康リスクがあるにもかかわらず、自己処置を余儀なくされている人が少なくない。

 保守的な道徳規範が根強い共産主義国ベトナムのトランスジェンダーは、多くの地域で差別に苦しめられているが、政府は現在、性別適合を公認する法整備を進めている。同国ではまれに見る社会進歩の動きだ。

 ベトナムのトランスジェンダーは約30万人に上るとされ、新法が成立すればより良い医療が期待できるはずだが、施行は早くても2019年になると見込まれている。

 それまでアンさんは専門医による治療を受けずに、ホルモン注射の用量や頻度を友人らに教えてもらいながら乗り切っていかなければならない。

 アンさんの月収は1万1000円程度。その半分近くを薬剤購入に充てたり、友人から借金したりする月もある。家出してからは、家族からの金銭援助も途絶えた。「両親からは今も病人扱いされ、女としては受け入れてもらえない」

■自己判断の危険性

 ベトナムでは、アンさんら女性になりたいトランスジェンダーがエストロゲンやプロゲステロンをひそかに入手しようと思っても難しい。だからこそ、タイから持ち込まれた薬剤を購入している。

 これに対し男性への適合を希望するトランスジェンダーが男性ホルモン剤を求めるのは比較的容易だ。筋肉増強剤や性欲促進剤といった市販品もあり、手に入りやすい。

 医師らは、専門家の指導を受けずにホルモン療法を行うと肝損傷や血栓、高血圧を招きかねないと警鐘を鳴らしており、アンさんはここまで運が良かった。

 だが幸運な人ばかりではない。臀部(でんぶ)へのホルモン注射で膿瘍(のうよう)を起こし、傷が残ってしまったという女性は、ホルモン剤の誤用が原因で病院に駆け込む友人も複数いたと明かした。国内で安全な処置が受けられるようになればと願うばかりだ。

■新法への期待と不安

 ベトナムでこの新たな法律が施行されれば、東南アジア諸国で初めて、トランスジェンダーの性別変更が法的に認められる。

 活動家らは、この法律が可能な限り多岐にわたることを望んでいるが、保健省は、ホルモン療法や性別適合手術を合法化するかどうかは検討中だとしている。

 新法では、性別変更を認める対象も規定されるが、現時点ではホルモン療法や手術を受けていない人は対象外となる見通しだ。

 これは、女性として生まれながら男性と自認するフォン・グエン(Phong Nguyen)さんのような人々にとっては、懸念材料になる。

 非営利のLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)団体に所属する活動家のグエンさんは、ホルモン剤の使用をやめており、今後手術を受ける予定もない。従って、男性として生活しているものの、身分証明書上の性別は女性のままになっている。その結果、就職活動や銀行口座開設といった場面で、手続き上の苦労が絶えない。

 グエンさんは、「新法は、身体の状態がどうであれ、トランスジェンダーを自認する全員に適用されるべきだ」と訴えている。2月20日撮影。(c)AFPBB News

最終更新:4/5(水) 14:42
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