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ロシアのテロ、一言でイスラム過激派といっても・・・

4/6(木) 13:20配信

ニュースソクラ

ウクライナの過激派説、ロシア国内の反体制派説も出回る

 ロシア第2の都市、サンクトペテルブルグで3日起きた地下鉄爆破事件は当局によってテロ事件と断定された。ロシア国内では再三、大規模なテロが繰り返され、2013年12月にボルゴグラードの鉄道駅とバスでほぼ同時に爆弾テロが起き、30人以上が死亡している。しかし、それ以降テロは発生していなかった。今回のテロも従来の事件同様、イスラム過激派の関与が最も疑われる。ただし、現時点(日本時間4月4日夕)では犯行声明もなく、今後の捜査待ちだ。

 サンクトペテルブルグでのテロ事件は知りうる限り初めてのことだ。1991年のソ連崩壊後、首都モスクワは何度もテロに見舞われ、直近では2011年1月にドモジェドボ国際空港で自爆テロが起き、数十人が死亡している。今回はモスクワに次ぐロシアの大都市が標的になった。しかもウラジーミル・プーチン大統領が同市を訪問中のテロであり、当局への衝撃は大きい。

 これまでの経緯から実行犯として最も強く疑われるのはイスラム過激派だ。だが、一口にイスラム過激派と言っても様々な集団がいる。1つはチェチニャ(日本ではチェチェンと誤記されることが多い)やダゲスタンなどロシア南部の地域に巣くうイスラム過激派だ。かれらはチェチニャ独立を目標に掲げて政府軍と戦ったが、2000年代の初めには壊滅状態に追いやられている。その系列に入る過激派が活動を再開したのかもしれない。

 あるいは、シリアやイラクで活動する国際テロ組織「イスラム国(IS)」系列の勢力による犯行かもしれない。プーチン大統領は2015年9月から空軍を投入してISの拠点を空爆、このためISは米国などと並んでロシアを敵視している。2015年10月にはエジプトからサンクトペテルブルグに向かったロシア機が墜落、224人が死亡した。ISはこの墜落について犯行声明を出している。

 プーチン大統領はシリアでの空爆に踏み切った理由の1つとして、ISのロシアへの進出阻止を挙げている。ISにはチェチニャなどのイスラム過激派も参加しており、彼らがロシアに戻って再び活動を開始することを阻止しなければならないという。

 今回のテロがイスラム過激派による犯行だとすれば、ISが背後にいる可能性が考えられる。

 ロシアの通信社の4日の報道によると、キルギスタン当局は同国生まれのロシア国籍を持つ市民が実行犯である可能性があると述べた。キルギスタンはソ連を構成していた中央アジアの共和国で、イスラム教徒が大多数を占める。しかし、チェチニャやダゲスタンと違ってキルギスタンは独立国でロシアがキルギスタンのイスラム教徒を弾圧しているという話は聞かない。

 仮にこの人物がロシアのキルギスタンに対する姿勢を問題視していたとすれば、これまでとは異なるイスラム過激派のテロということになる。だが、このキルギスタン出身者はむしろISに共感するイスラム過激派の1人としてテロを実行したのではないだろうか。いずれにせよ現時点では推測の域を出ない。

 今回のサンクトペテルブルグのテロ実行犯については、イスラム過激派説のほか、ウクライナの過激派説、さらにはロシア国内の反体制派説などあれこれ出回っている。しかし、決め手になるような情報はない。

 プーチン大統領はベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領との会談、そして自ら音頭を取って設立した政治組織、全ロシア人民戦線の会合に出席するためサンクトペテルブルグを訪問していた。ルカシェンコ大統領はロシアによる国境管理などに反発、両国関係がこじれている。だが、ロシアとベラルーシのぎくしゃくはテロには関係がないだろう。

■小田 健(ジャーナリスト、元日経新聞モスクワ支局長)
1973年東京外国語大学ロシア語科卒。日本経済新聞社入社。モスクワ、ロンドン駐在、論説委員などを務め2011年退社。
現在、国際教養大学客員教授。

最終更新:4/6(木) 13:20
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