ここから本文です

東芝経営危機はアメリカでどう報じられたか?

4/6(木) 12:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

ーー 筆者の津山恵子氏はニューヨーク在住のジャーナリスト。ライター、作家、写真家の顔も持つ。アメリカの社会、政治、ビジネスを日本の読者に向けて執筆する。近著は「教育超格差大国アメリカ」(扶桑社)。

【アメリカのハイテク企業の「ターゲット」に】

「ウエスチングハウス、写真で見る130年の歴史」ーー。

東芝傘下の米ウエスチングハウスが米連邦破産法第11条の適用を申請した3月29日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が掲載したスライドショーだ。この特集で、ウエスチングハウスの破綻がいかにアメリカ市民にとってショックだったかがわかる。東芝の経営不振問題はCNNなどの米主要ニュース局が報じることはほとんどなかったが、ウエスチングハウスの破綻は、終日マーケット関連として報じた。

WSJでは、同社の前身ウエスチングハウス・エレクトロニクスを創立した発明家ジョージ・ウエスチングハウスの白黒写真が見られる。彼は1886年、自分の発明をビジネスにするための電力事業会社を立ち上げた。その後、電力送信網、テレビ・ラジオ放送網、家電などに事業を拡大。1969年には、月面探査機アポロが月面着陸した有名な動画を撮影したビデオカメラも供給している。スライドショーで見ると、アポロの宇宙飛行士がカメラを片手で持っており、当時としては驚くほど小型だ。

今回経営破綻したウエスチングハウスは、この伝統的な電機・電力総合事業の原子力部門が切り離されて、東芝が2006年に買収した原子力事業子会社だ。

米連邦破産法第11条の適用申請は、日本の民事更生法に相当し、債務を一掃して破産管財人のもとで再生し、会社自体は消滅しない。2008年のリーマン・ショックの後、自動車米最大手ゼネラル・モーターズ(GM)さえも申請し、現在はよみがえっている。借金をチャラにする限り、経営が破綻しなければ適用申請は不可能だ。

憧れのプレスバックスポンサー

東芝もアメリカ市場での存在感を少しずつ失ってきた。それを顕著に感じるのは、毎年1月、ネバダ州ラスベガスで開かれるハイテク家電市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」だ。私が初めてCESを取材した2004年、報道陣にタダで配られたプレスバッグは、ライトグリーンとクリーム色のエコカラーで、タイヤがついた小型リュックだった。報道陣にしか配られないが、広大なフロアを歩いていると、一般参加者から「それはどこに行ったら買えるのか」とよく聞かれた。

そのプレスバッグのスポンサーが東芝で、「TOSHIBA HD DVD」と大きなロゴが縫取りで書かれていた。当時の次世代DVDの規格で、ソニー/松下電器産業(当時)の「ブルーレイ」と激しい争いを繰り広げていた最中だ。CESに来る数千人にも上る取材陣が、「HD DVD 」のロゴ付きのスタイリッシュなバッグを持って会場を歩くだけで、とてつもないインパクトがあった。

しかし、2008年1月4日、CES開催に先駆けたプレスデーの日、DVD販売トップのワーナー・ブラザーズが、ブルーレイへの一本化を表明。常に午前中に設定され、多くの報道陣が詰めかける東芝のプレスイベントは、まるでお通夜のようだった。会見場で記者らの足元にあったのは、青とシルバーのプレスバッグで、この年も「HD DVD 」の縫取りがあった。直後の2月、東芝はHD DVDからの撤退を発表する。東芝はその後、プレスデーのイベントからも撤退した。

1/2ページ