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【米雇用統計】低迷する個人消費との違和感を解消できるか?

4/7(金) 17:40配信

ZUU online

3月の米雇用統計は、トランプラリーに陰りがうかがえる中での発表となる。公約の目玉であったオバマケア廃案が頓挫し、トランプ政権の政策実行能力に対する疑念が強まっているが、ウォール街の市場関係者からは「まだトランプ政権への期待値は『高止まり』している」との声も聞かれる。

実体経済に目を向けると、政権に対するする期待とは裏腹に厳しい現実を突きつけられている。雇用統計も同様で、後述するようにここ最近は実体経済からの「かい離」は否めない。間もなく発表される雇用統計では、こうしたギャップが埋まるのかどうかがポイントとなりそうだ。

■景況感は好調だが、実体経済は減速

最初に米景気に対する「期待と現実」が依然として「かい離」している点を確認したい。まず、「期待値」として注目されるのが米消費者信頼感指数とISM製造業景況感指数である。3月の米消費者信頼感指数は2000年12月以来、16年ぶりの高水準にあるほか、3月のISM製造業景況感指数も2月からは若干低下したものの、2年ぶりの高値圏にあり、水準は高い。

このように、「アンケート調査」の結果は絶好調と言えるのだが、その一方で実体経済はさっぱりだ。成長の柱である実質個人消費は2月まで2カ月連続でマイナスとなり、個人消費の先行指標とされている新車販売も3月まで3カ月連続の前年割れとなっている。

また、4月3日現在のGDPナウは1~3月期のGDP成長率を1.2%と予想している。米GDP成長率は昨年7~9月期の3.5%から10~12月期は2.1%へ低下しており、今年1~3月期はさらに低下する見通しとなっている。このことから、米景気は循環的な景気減速局面にあると言えるだろう。

一方、雇用統計を振り返ると、個人消費の不振をあざ笑うかのように、雇用者数は1月が23万8000人増、2月は23万5000人増と予想外の大幅増を記録している。

■パートタイムと高齢者が増加、移民政策の影響も

このように、実体経済と雇用統計の数字にかい離がみられるのはなぜだろうか。理由は様々であるが、雇用統計を形成する要因からもいくつか指摘することができる。

まず、目に留まるのが仕事を掛け持ちする人の増加だ。家計調査によると、仕事を掛け持ちする人の数は2月に26万人も増えている。この数字は事業所調査での雇用者数の増加を上回っている。事業所調査での雇用者数は給与明細書の発行に基づいているので、複数の企業から別々に支払いを受けている場合には、実際には1人であっても統計上の雇用者数は増加することになる。

この動きに呼応するかのように、2月は「経済的理由以外」でのパートタイム数も28万6000人と急増した。「経済的理由」というのはフルタイムでの仕事を探しているが見つからないことを意味しているので、経済的理由「以外」ということは最初からパートを探しているということになる。

仕事を掛け持ちしている人の数は過去1年で52万6000人増加しているが、主にフルタイムで働きながら副業でパートをしている人の数が52万4000人増加しており、そのほとんどを占めている。要するに、パートを掛け持ちしている人が増えているのではなく、正社員として働きながら副業をしている人が増えているわけだ。

また、高齢者の増加も顕著だ。家計調査によると、2月までの過去2カ月で就業者数は41万7000人増加しているが、このうち31万人が55歳以上である。つまり、4人のうち3人が55歳以上の計算だ。ちなみに、25歳から54歳は過去2カ月で12万4000人減少している。

このほか、移民政策の影響を受けている可能性もありそうだ。周知の通り、トランプ政権は不法移民の取り締まりを強化していることから、不法移民が合法移民へと置き換わることは想像に難くないだろう。雇用統計の数字を見ると、2月はラテン系の就業者数が前月比27万4000人増加しており、全体の6割以上を占めた。ラテン系の人口は全体の16%を占めるに過ぎないので、この数字はかなり大きいと言える。

不法移民が強制退去となり、その代わりとして合法な移民が入れ替わっているだけであれば、実質的には雇用が増えているとは考えづらく、個人消費が伸びなくても不思議ではない。

■低迷する個人消費との違和感を解消できるのか?

米国では個人消費が減少しているにもかかわらず、雇用者数が大きく伸びるという珍しい現象が起きている。しかし、内容を吟味してみると、正社員が副業を始めただけであり、そのほとんどが高齢者であることがわかる。また、移民政策の影響があった可能性も排除できない。

こうしてみると、今回の雇用統計は「低迷している個人消費との違和感を解消できるか」がポイントとなりそうだ。リタイアしたくても老後資金がままならない高齢者が、暇な時間でバイトしているだけなのであれば、消費が増加するとは考えづらい。また、正社員でも生活が苦しく、バイトをせざるを得ない状況なのであれば、その分余暇も減って個人消費にはマイナスとなる可能性すらあるだろう。

既に利上げが開始されていることから、「強い数字」はある程度織り込み済みであり、マーケットへの影響も一時的なものとなりそうだ。一方、「弱い数字」が出た場合には実体経済の弱さを露呈したことになり、陰りをみせ始めたトランプ政権への期待がいよいよ大きく崩れるリスクを内容している。

実体経済と雇用統計の動きに「食い違い」がみられることから、単純に数字が大きいとか小さいとかではなく、「停滞している実体経済を改善する方向にあるのかどうか」の見極めが肝要であり、内容をよく吟味する必要がある。トランプラリーを再開するためには、数字のみでなく内容もポジティブであることが求められる。(NY在住ジャーナリスト、スーザン・グリーン)

最終更新:4/7(金) 17:40
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