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サカナクション山口の上京物語 後編「人前に出るのも1人でいるのもつらかった」

4/7(金) 20:02配信

TOKYO FM+

サカナクションの山口一郎が4月6日、TOKYO FMのレギュラー番組に出演。前回の放送では上京当時の思い出を音楽と共に振り返りましたが、今回はその後の東京での生活を語りました。
(TOKYO FM「SCHOOL OF LOCK! サカナLOCKS!」4月6日放送分より)

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先週はサカナクションが上京してきた時のお話をしました。神奈川の登戸っていう所に引っ越してきたときのお話を「ネイティブダンサー」という曲と一緒に紹介したのと、下北沢の王将からの帰り道の景色っていう「モノクロトウキョー」のお話をしました。

東京で音楽をするようになって、8、9年が経ちます。東京はね、東京に行ったことがない人たちが思っているよりもお洒落でもないし、お洒落な人が多いわけでもない。アンダーグラウンドなものや、美しくて難しいものが認められている街でもない。すごくミーハーな街だなと思いました。
僕はもっと憧れがあったんですよ。お洒落な人が集まっていて、自分が北海道で掘って掘って掘りまくっていた……美しくて難しいと思われていた音楽やアートみたいなものが、日常的に広がっているすごい街なんだって思っていたんです。でも地元と全然変わらないし、むしろ地元の方がローカルっていう部分のアンダーグランドさや実直さがあったな……と思いました。

あとひとつ思うのが、東京の人たちと話をすると、なんか意見が偏ってないよね。みんなの意見に対する意見が多いよね。自分の意見っていうよりは、誰かが意見を言ったことに対する意見がすごく多くて、「違うじゃん、こうじゃん」って提言する人は……もちろん東京には多いけど、比率の割にはすごく少ないなって思う。新しいことをする人たちに対して冷たい人が多いっていうのも東京の難しいところだし、何かをしようとするときに、“それ面白いよね”って集まってくる人たちが多いのも東京だと思う。だから、比率的には少ないけど、何か自分がこうだと思っていることを理解してくれる人がいるかもしれないっていう可能性を考えると、東京っていう街は可能性が高いかなと思いますけどね。

そして「モノクロトウキョー」の次に作った東京の曲が、「ユリイカ」かな。
この曲を作った頃はオリコンで1位をとって紅白にも出て……目標を見失ったわけじゃないけど、“次に何をしたらいいんだろう”って不安になっていたんです。“もう休みたいなー。まだ頑張らないといけないの?”って時だったんですよ。タイアップとかで追い込まれていたし、“自分のペースで音楽を作りたいなー。でも出来ないなー”って葛藤しながら。東京っていう街に追われ続けている自分っていうのが……やけになっていた感じ。

そんな時、いつも僕はオカンに“つらいつらい……”って言って電話をしていたんですよ。この歌詞を書いている時、全身にブツブツが出まくったんです。人前に出たくないし、かといって家の中に1人でいるのもつらいし……八方塞がりみたいな感じ。だから、スタッフとかにも冷たく当たったりしたし、本当にきつかったなと思う。これと同じ頃に「グッドバイ」も作っているんだけど、SCHOOL OF LOCK! で「グッドバイ」を初めてオンエアしたときに、泣いちゃったの、僕。そのときの不安定さみたいなものが、この曲には表れていると思う。

正直ね……サカナクションの6枚目のアルバム『sakanaction』で、僕らは1回終わっちゃってるんです。完成しちゃってるんですよ。「グッドバイ / ユリイカ」っていうのは、そこからの……続編っていうか、付録みたいな……そんな感じなのかなって、いま振り返っていますけど。で、そこから「さよならはエモーション」っていう曲ができたんです。東京の寂しさや切なさみたいな、東京の温度感を音楽にしたいと気持ちが向いてきて、「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」だったり、東京ローカルっていうところに目を向け始めて、今、また前に進んでいるかなって気はしています。

今、新しい曲を作っているんですけどものすごい前向きなの。サカナクションにとっての明るいは、世の中にとって明るいって言われるか分かんないんだけど。自分の中ではすごく明るくて、“アッパー”っていうよりかは、“前向き”っていう言葉が最適かなって感じがしていて。それが自分たちのファンにどう思われるかはあまり気にしていなくて、やっぱり自分の今のテンションをちゃんと音楽にするっていうのがサカナクションにとって大切なんじゃないかと思っています。

ただ、それに慣れていないんですよ。なんかね、食べたことのない料理を人に出す時……自分は美味しいって思っている料理を商品として出す時って不安じゃないですか? だからそういう怖さがまだあると思う。

でも今は『NF』っていう活動も含めて視野が広がったし、今まではずっと引きこもって、“音楽、音楽、音楽、音楽”……ってなっていたのが、いろんな人が現れていろんなことを教えてくれて。自分で影響されるものを自分で選んでいたときの自分って、どうしても都合のいい自分だったんですよ。そうじゃなくて、自分が影響を受けることを自分で選ばなくても、人から入ってくることによって、想像しなかった自分になってきている。ちょっと戸惑っているけど、ここから新しい音楽が生まれたり、サカナクションとしての新しいスタイル、未来みたいなものが出来上がっていくような気がするし、それが発明になるといいなって……東京で新しい発明ができたらいいなって思っています。それがサカナクションの現在地っていう感じです。

みんなね、親元を出て一人暮らしをする、新しく一歩踏み出すってことは、人生では必ず経験することです。だから恐れずに自分を信じて突き進んで、新しい仲間を増やし未来溢れる人生を送ってください。僕らはそれを音楽でバックアップしていきたいと思っています。
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最終更新:4/7(金) 20:02
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