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最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか?

アスキー 4/8(土) 12:00配信

超小型ヘッドアンプ「MV50」の出力は最大で50W。実際に音を鳴らすとはたしてどのくらいイケるのかを試してみた。

 VOXは新型真空管「Nutube」を搭載した初の製品として、超小型ギター用ヘッドアンプ「MV50」を3月25日に発売した。
 
 NutubeはVFD(蛍光表示管)で有名なノリタケ伊勢電子とコルグの共同開発によるもので、従来の真空管より低電力で動き、発熱も少なく、小さな筐体に収められる。MV50はそうしたNutubeのメリットをわかりやすく形にした製品だ。
 
 MV50の外形寸法は標準的なストンプボックスサイズのエフェクターと大差なく、重量はわずか540gに過ぎない。ACアダプターと合わせても、ギターのギグバッグに難なく収められる。
 
 にも関わらず、Nutubeを使ったプリ段と、クラスDのパワー段によるハイブリッド構成で、MV50は最大50Wの出力を発揮する。一般的なギター用スピーカーキャビネットと組み合われば、リハーサルスタジオからライブハウスまで対応できるパワーだ。
 
 また、ヘッドホン/ラインアウト端子にはキャビネットシミュレーターも搭載されており、自宅練習やDTMのような用途にも使える。こうした応用範囲の幅広さもMV50のウリのひとつ。
 
 MV50はサウンドキャラクター別に「ROCK」「AC」「CLEAN」の3種が用意され、店頭価格はそれぞれ2万1600円。同時に発売された小型8インチスピーカーキャビネット「BC108」は1万800円。MV50とBC108のセット販売もあり、こちらはROCK、AC、CLEANともに2万8080円。そして4月末には本格的な12インチスピーカーキャビネット「BC112」の発売も控えている。
 
 そのMV50開発陣へのインタビュー3回目は、実際にスピーカーキャビネットに接続して、どれくらいの音量が出るのか。バンドの大音量の中で使いものになるのか。そして小型キャビネットの「BC108」でどこまでイケるのか。以上を確かめてみた。
 
音でかい! バンドで普通に使える!
―― MV50で気になるのは音量です。見た目も小さいし「クラスDの50Wなんて大したことない」という見方もあってですね……。
 
李 じゃ、キャビネットにつないでみましょうか。四本さんはギター弾いてください。
 
―― えっ。
 
江戸 バンドでやってみましょう。
 
―― ええっ。
 
李 やっぱり音量の確認はバンドでやらないと。
 
 というわけで、気がついたら李さんはスティックを握りドラムセットを前にしており、江戸さんはベースを構えてブリブリ弾き始めていた。ここから先は3人で楽器を鳴らしながらの取材となったが、お二方とも楽器はめちゃくちゃお上手なので、下手な私はまさに羞恥プレイのような状態。それでも音量だけはなんとか確認できた。
 
 ここでMV50のパワーをおさらいすると、接続するスピーカーが16Ωなら12.5W、8Ωなら25W、4Ωで最大の50W。今回用意されていたキャビネットは、VOXがMV50用に開発した 8インチユニット1発のBC108と、12インチユニット1発のBC112、そして4発の12インチユニットを搭載するマーシャルの「1960A」である。
 
 実用的観点で言えば、まずマーシャルのキャビネットで使えるかどうか。これは大抵のスタジオやライブハウスに置いてある標準的な機材で、もしこれで使える音量が出れば、MV50をギグバッグに入れて出かけるだけで、日本全国大抵のところでバンド活動ができることになる。
 
 で、結論としてはもう全然問題ない。マーシャルの1960Aは4発のユニットを並列接続する4Ω、そして直列接続する16Ωが選べる。が、16Ωでも余裕。ボリュームノブ半分くらいでドラム・ベースとのバランスはイーブンになり、音量を調整するマージンすらある。これなら普通にバンドで使える。素晴らしい。
 
BC112なら自宅でもバンドでもイケる
 さて、次の問題は、キャビネットの用意がない場所で演奏するとき。学園祭や、ライブハウス未満のカフェ、自宅や友達の家など。そこで気になるのは、VOXがMV50と同時発表したキャビネット、BC108とBC112につないだ際のパフォーマンスだ。
 
 どちらも1台ならインピーダンスは8Ω。2台並列の接続も可能で、その場合は4Ωとなる。もちろん、それぞれ1台単独で使った場合、2台スタックした状態の両方を試してみた。
 
 まずBC112は、当然のように1台でもまったく問題なくイケる。音質の話で言えば、ドンシャリ型のマーシャルに比べればフラットで、相対的にミッドレンジが前に出てくる感じだから、よりVOXらしいとも言える。2発ならさらに音量は大きくなって、ドスの利いた低域もマーシャルに負けていない。
 
 ギターアンプの用意がない会場には、BC112を持っていけばいい。重さは13.6kgなので、運搬はクルマがないと厳しい。が、それでも自宅からの搬入搬出は片手で余裕だ。自宅用としてもコンボアンプのサイズで置き場所に困らない。万能である。
 
 そして、次はVOXのライナップでも最小のキャビネット、注目の8インチユニット1発のBC108。重さは3.8kg。サイズも含めて片手で持って徒歩でも運べる。
 
 ただ8インチユニットと言えば、低域は出ない、高域は耳に刺さるで、あまりいいイメージはない。しかし、MV50にはそうした小型スピーカーのハンデを克服すべく、低域の足りない小型キャビ向けに「DEEP/FLAT」のEQスイッチが付いている。もちろんBC108とペアで使う前提だ。これでどこまでイケるのか
 
BC108は1発なら自宅、バンドなら2発で
―― いやあ、すごいすごい。音量余裕ですねこれ。
 
江戸 余裕です。
 
―― 恐れ入りました。で、次に気になるのは、このちっちゃい8インチのキャビネットが、今までとどれくらい違うのか。
 
江戸 そこはもう圧勝じゃないですか。
 
李 ……うーん、どうかな。
 
―― あれ、意見が割れているようですが。
 
李 いや、どこまでかと言われると表現が難しいです。人によってもとらえ方は変わるでしょうし。
 
江戸 確かにバンドでは1発だと、音量的に厳しいかもしれないですね。
 
―― 1発はどういう用途を想定していますか?
 
江戸 自宅用、もしくはカフェくらいの会場ですね。アコースティック楽器がメインで、パーカッションもカホンしかいないくらいの。でも、並列で2発つながるようになっているんで、そうすると50Wまでは出る。バンドだったら、2発の方がいいと思います。
 
―― わかりました。低域はどんな感じでしょう?
 
江戸 BC108はセミオープンバックになっていて、ハンドルの穴がバスレフの役割をしてくれます。キャビ単体でも低音が出るように考えられているんですが、背面のDEEPスイッチを入れてもらえれば、低音の空気感を足すことができます。
 
李 低域はキャビの置き方によっても違ってきます。たとえば床に2発並べるとか。DEEPスイッチは、大きなキャビでも使えるような設定にしています。歪んだ音なら「ジャーッ」っという上の帯域の成分がちょっと減る。
 
―― なるほど。もともとローが出るキャビだと、相対的にハイが減る感じに。
 
李 重心が下に移る感じですね。音の好みによって、DEEPスイッチはキャビのサイズに関係なく使えると思います。じゃ、つないでみましょうか、小さい方に。
 
使い方次第でおもしろいBC108
 というわけで、BC108を鳴らしてみた。さすがに12インチに比べれば低域は出ないが、クリーンから軽いクランチ程度のゲインなら、DEEPスイッチを入れなくても低域は十分。むしろボリュームを上げた場合は、DEEPを入れないほうがシャキッとした音になって、気持ち良く弾ける場合もある。
 
 ヘッドアンプがROCKで、ゲインを上げて歪ませるならDEEPスイッチはありがたい。低域の量感はクローズドバックの10インチキャビくらいになるので、自宅用にはこれで十分だろうと感じた。
 
 ただ、江戸さんのおっしゃるとおり、1台ではバンドの音量には負け気味で、目一杯ボリュームを上げてもギリギリで余裕がない。もし音量が足りなければ、ラインアウトをPAに送るという手もある。でも、2台ならバンドの中で十分戦える上に、小径ユニット2発という構成ならではの音の抜けのよさがあっておもしろい。個人的にはこのBC108の並列接続が、キャビネットのキャラクターとしても新鮮だった。
 
 BC108は小型で背が低いために、床に置き、離れた位置で立って弾くと、音が聴こえにくいこともある。しかし、2台あれば1台は足元に転がしてモニター代わりにする、フィードパックコントロールに使うという手もある。2台あると、小型キャビの欠点を補いつつ、なにかと応用が効きそうだ。
 
(次回はトーンノブや内蔵キャビネットシミュレーターなど、MV50の隠された音色設定について)
 
 
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
 
 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
 
文● 四本淑三

最終更新:4/22(土) 12:18

アスキー